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*完結* COYOTE   作者: terra.
First Quarter
143/184

16




♪Chapter13 / 【it's hard to explain why i wanna die】

YouTube / tom abisgold にて聴いて頂けます。

「it's hard to explain why i wanna die」


★COYOTE ver. / You’re so beautiful







 空は、星の瞬きが分かるほどには晴れていた。欠けてしまっている月に、満たされていない自分を重ねていると、慰めに吹き付ける風が、木の葉を躍らせた。空気が喉まで乾かそうとしてくるのを、息を呑んで潤わせる。




 ただ見聞きしたものを書き留め、読み返すだけでは足りないと思った。忘れたくないものなど、一生かかっても挙げきれない。

 歴史やストーリーになった溢れんばかりの思い出を、感情を表現できる力が備わっているならば、それを身体に刻む事もまた、必要だった。そしてこの身体を知り、加減をコントロールしてみせる。




 隣の家に近づくにつれ、足が緩やかになる。自宅と同じ様に、玄関の(あかり)が優しく夜を照らしていた。小さな窓から漏れる柔らかい光は、客人を包もうとしている。

 そこに踏み込むつもりはない。あくまで自然に、それこそ今、嗅ぎつけられる仄かな香りの様に、誘い出したかった。もし、誘い出せるならば。




 歩道と敷地を区切る、低いレンガ造りの塀に座ると、退屈そうにしていたギターを抱えた。そしてもう一度、肩越しに彼女の家を振り返る。




 風にのってくる甘い香りに、彼女の存在を鮮明に感じた時――6本の弦をランダムに鳴らした。吹く風を、音で描いていく。その場を転がる楓に音色を託し、夜空に見送った。時に小さく、時に大きく、円を描く木の葉に乗って、音は宙を滑り、舞い上がる。それらの戯れが、哀愁を含んだ和音(コード)に終わり、足元に落ちた時――しんとしたベールをそっと、指で引き寄せた。




ライト(My new)をつけた(life began)だけ(just)なのに(by) 新しい(turning)人生が(on the)始まった(light)

あり(Scent)ふれ(through)た時間(tedious)に香りが(time,)して(and) ダルい(dull)朝を(morning)甘く(goes)する(sweet)

全てが(Everything)(has)わった(changed)

隣に(Since)君が(you)来て(came)から(beside me,) 何も(you)かもが(brought)変わった(all of)んだ(them)

見え方(My way)(of) 感じ方(seeing,)なにも(feeling.)かも(Everything)



 思い出に込める音色が、星明りや照明を呼び寄せようと、薄闇を震わせていく。だが、光はこちらに届きはせず、メロディーは少し元気をなくした。



だけど(But) ずいぶん(it’s been)遠いんだ(so far.)

しばら(It's been)くだよ(a while.) いつ(When)(can)える?(we see?) 話を(Tell me)聞か(your)せてよ(stories.) 寂しいよ(I miss you)



 力無く呟く様な音。その端を、つい、力んだ声で消しかける。と、声を強く張るまいと、慌てて息を吸って抑えた。出したい声を作り、想いを太い糸に変え、丁寧に送り届けていく。



(How)はつまら(boring)ないだろう(I am.)

イケ(Not)てもないが(very nice,) それ(but)がどうした?(who cares?)

気に( I don't)しない(care.) どん(No)なに(matter how)つまら(boring)なくたって(I am,)

君が(I know)最高だって(you are )のは分かる(the best.)

きみは(You’re)とても(so)綺麗だ(beautiful)



 1つ吐き出すと、瞼が開いた。伸びながら消えていく和音(コード)はやがて、次の感情を呼び覚ますと、弦を(はじ)く力に変わる。



たま(It’s)に痛い(painful)んだ(sometimes.) 笑わ(They make)れる(fun of me)

隠す(Because)のが(I'm not)下手くそ(good at)だか(hiding)らっ(my)(feelings)

誰かさん(It’s all)のせ(because)(of)だよ(someone.) 迷子に(I’ll just)なる(get lost)

ほっ(If they)といて(leave me)くれ(be,)さえ(I could)すれば(just) 平然と(pretend)振る舞え(I'm usual)るのに


なぁ(Hey,) ずいぶん(it’s been)遠いよ(so far)

孤独な(Like a)ハー(lonely)ベスト(harvest)ムーン(moon.)みたいだ

元気(Tell me)かを(how)教えてよ(you are.) 寂しいよ(I miss you)


(How)はつまら(boring)ないだろう(I am)

イケ(Not)てもないが(very nice,) それ(but)がどうした?(who cares?)

気に( I don't)しない(care)

だって(cuz) 明日世(the world)界が終(might be)わる(done)かもしれ(tomorrow)ないのに

ただ(Just)知って(want you)おいて欲し(to know,)君は(you are)最高だ(the best)って

君は(You’re)とても(so)綺麗だ(beautiful)



 胸が疼き、顔が歪むのを、強まる演奏で隠した。長い、緩やかな間奏で、込み上げる感情の熱を掻き消していく。自分の姿であり続けるために。自分自身のまま、顔を合わせられるように。

 祈りは楓に乗り、風に絡んでいく。どこまでも長く続くように、メロディーが静かに余韻を残した。



あの場所(I won't )での(forget)時間(the time)(by)忘れな(that spot,)いよ(with you)

また(Tell me)(your)を聞か(stories)せてよ(again,) いつもみた(like usual)いに」



 そして話す様に、最後は囁く様に、擦れた音に消えた。気付けば風は温かく、甘い香りが強さを増している。不思議な感覚に、ふと振り返った時――レイラはそっと瞬きしては、微笑んだ。








※和音=コード。3つの音を同時に奏でた時の音です。



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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
こんにちは♪ いつもお忙しい中、投稿お疲れ様です☆ 来ましたね音楽♪ バラードはやはり心地良いものです。 詩の一つひとつにアクセルがレイラに伝えたい思いが込められている気がしました。 レイラはなんか聴…
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