表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* COYOTE   作者: terra.
First Quarter
131/184

4




「君は誰だ!? あいつは襲撃犯だぞ、何のつもりだ!?」



 警官の発言に耳を痛めながら、アクセルは威嚇で黙らせると、奪い取った銃を投げ捨てた。振り返ろうとする警官にじっと見られる訳にはいかないと、その髪を掴んで首を固定した。



「帰れ!」



 言いながら、更に背中から突き飛ばす。だが警官は、解放されると同時に、無線で応援を呼び始めた。

 それを聞きつけるや否や、アクセルは無線を毟り取ると、地面に叩きつけ、踏み潰した。そして、横転する警官の顔に土を蹴り、視界を奪った。




 その場が静まるのも束の間、銃声がした。連続的な射撃音に、獣の悲鳴が散る様だった。




 アクセルは堪らずステファンを叫び、そこへ駆けつけた時には、彼は既に横たわっていた。レンジャーはアクセルを捉えると、迷わず予備のピストルを向けた。その眼はまるで、害獣駆除を目的とする時と何ら変わらなかった。



「動くな! 大人しく言う事を聞け!」



 レンジャーに向けられる銃口に、アクセルは息を荒げずにはいられなかった。



「てめぇっ……その人はっ……その人は、人だぞっ!」



 アクセルは言いながら、怒りの唸りを絡めた。レンジャーは、彼の鋭い眼光に遮られながらも、引き金を引いた。

 だが、アクセルの灰色の視界には、弾はスローモーションで迫りくる。彼はそのまま、飛ぶ蟲を躱す様に容易に身を傾けると、続けて発砲しようとするレンジャーに追いついた。

 次の発砲までに銃を捥ぎ取ったアクセルは、両手を上げるレンジャーを見て、やっと我に返った。しかし、一切の恐怖はなく、怒りと憎しみがグリップを握る手を強めていく。



「止めろ……君に扱えるものじゃない……」



 レンジャーの静かな声かけなど、アクセルには何も響かなかった。ただ、その言葉が正しい事は、手の震えが物語っていた。



「後ろ向け。早く」



 アクセルはフードを被りながら、唸る様に告げる。レンジャーは大人しく従うと、ゆっくりと森の外れに移動する。その先で、警官が視界を取り戻せないまま、痛みに声を絞り出した。



「確保するっ……その身体っ……一体っ――」



 アクセルは答えず、銀の眼を見開いた。2人は異様な人物に身を縮める。

 森の奥では、茂みが騒ぐ音がした。アクセルは背中越しにコヨーテ達の気配を察し、彼等がステファンを運ぼうとしているのを匂いで認識した。




 レンジャーが警官を支えて立ち上がると、これ以上抵抗はしないと示し、アクセルの答えを待った。レンジャーは、彼の姿を何としてでも焼き付けようとしていた。




 アクセルは何も応えず、ピストルを圧し折ると2人に投げつけた。腕力に負けたそれは、地面に突き刺さったまま微動だにしない。

 そして立ち去ろうとする彼に、レンジャーは青褪める。容疑者の元へ去ろうとする少年だけでも救いたく、声で引き留めようとした。ところがそれは、威嚇の声に搔き消されてしまった。まるで、既に読まれていた様だった。




 肩越しに僅かに振り返る彼の、銀髪の間から覗く眩い眼に、2人は立ち竦んでしまった。









-----------------------------------------


サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こんにちは♪ いつもお忙しい中、投稿お疲れ様です☆ 今までの感じを見ると、銀色の液体は、身体能力を変えるだけでなく、性格まで凶暴化するのかな?とも思いました!(◎_◎;) アクセルは温厚でカッとなると…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ