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「……飛び出して来たら?」
レンジャーの問いかけに、警官は視線を逸らさずに言う。
「迷うな。奴は人を獣みたいに襲う」
聞き苦しい言葉がステファンの脳内で木霊した途端――彼は、レンジャーの正面から飛び出した。
声を上げたレンジャーは、照準を合わせる間もなく、そのまま受け身の姿勢になる。ライフルを掴まれ押し倒されるまでの最中、警官がステファンに銃口を向けた。それを捉えたステファンは眼を光らせ、牙を剥く。警官の発砲は、呆気なく躱された。
警官とレンジャーは目を疑うも、食い下がる。レンジャーは、ステファンの腹を蹴り、屈んだ。しかしステファンは、地面を転がり身を立て直し、低く身構えると、警官に突進した。目で追いつかない移動速度に、レンジャーはバランスを崩す。
警官は、逼迫する中、迫りくるステファンの攻撃を敢えて受ける。両手を取られるも、どうにか銃口を彼の顔に向け、発砲した。
だがステファンは、即座に首を傾け、銃弾を躱して見せた。襲撃に遭う2人は目を疑い、身が竦む。
警官は、ステファンの眼光に目が眩み、そのまま地面に押さえつけられた。腕を叩きつけられ、銃を弾かれると、顔に打撃を受けた。その場に轟く威嚇は、これまで疑い深かった被害者の目撃情報を、事実に染め上げる。
「落ち着け、ラッセル! 話を聞かせろ!」
彼の後ろに飛びついたレンジャーだが、容易く払い除けられ、背中から奥の幹に衝突した。
絶句するレンジャーは、殴られ続ける警官に目がないステファンに、ライフルを向けた次の瞬間――狙いが激しく逸れ、弾は空振りした。
突然舞い込んだ影もまた、眩しかった。瞬間的な銀の光に視界を遮られたレンジャーは、隙間から事態を探ろうとする。その輪郭が露わになるにつれ、瞼を失った。目の前に立つ、ライフルを奪い取った者に、驚愕を抑えられない。
追いついたアクセルは、レンジャーに低く唸ると、込み上げる怒りに任せてライフルを握り潰した。それを更に圧し折ると、森林の外へ投げ捨てた。
事態に気付いたステファンは、アクセルに構わず、レンジャーに翻って地を蹴った。爪と牙を立て、銀の液体を散らせながら、疾風の如くアクセルの脇を奔り抜ける。
その時、アクセルは背後で金属の音を聞きつけると、ステファンとすれ違ったその足で、銃を構える警官に迫った。
アクセルは寸秒で銃を掴んで押し上げると、頭上の枝が弾けた。木々が降り注ぐ中、銃を奪い取ると、警官の腕を捻り、背中に回して軽々立たせると、森林の外へ連れ出していく。
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サスペンスダークファンタジー
COYOTE
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