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「校内のネタなら何でもいいってやつか。おめぇも、おめぇも、そこのおめぇも、撮られる側の事や、その背後にある繋がりの事も、結局何も考えちゃいねぇ……全てはてめぇが満たされ、儲かるためだ……そのためなら、何でも映して世の中に教えて差し上げるのか。そのためなら、従業員や、その家族が弄られようと関係ねぇのか。たった今、やっと知った清掃員が、本当は何を言いたかったのかも解読せずに、てめぇらは明日ものうのうと生きんのか……」
先程の態度から打って変わったレイデンに、周囲は静まっていく。つまらなさそうに引いていく生徒が出始めると、録画の停止音が少しずつ鳴っていく。
記者になり切ろうとする生徒は掴まれたまま、身を強張らせながら、レイデンを首だけで否定した。しかしレイデンは、それに構わず、未だスマートフォンを仕舞おうとしない生徒達を睨みつける。
「カモフラージュをかけりゃいいってんなら、止めとけ。そいつをされる側にもなれねぇてめぇに、何のセンスもねぇ」
レイデンは、掴んでいた生徒を徐々に押していく。
「マジで世に伝えるべきものかどうかで判別せず、面白ぇかどうかでしか図れねぇんなら、とっとと帰れ」
言いながら、その先に立つ他の生徒達も巻き込み、押しやっていく。
「明日、今日よりもマシなてめぇになろうとしねぇんなら、帰れ」
とうとう壁まで押しやられた記者の生徒は、レイデンに怯えながら頷く。レイデンは、一度その生徒を解放するも、透かさず掴み直した。小動物の様な悲鳴が、再び、立ち去りかけた生徒達を振り向かせる。
「最優先の宿題だ、記者さんよ。今の俺の発言を誰も撮影しなかったのは、何でだ。面白味がなかったっつう、愛のねぇ理由はお断りだぜ」
撮れだの撮るなだの、一体どっちなんだと言いながら、周囲は忙しなく引いて行った。
事の発端の大男も、思う様にいかず調子を狂わされ、立ち去っていく。その後、ブルースが駆け寄り、レイデンの頭を引っ叩いた。
「“アホが!” 殴られてたらどうする気だったんだよ!?」
レイデンは口を尖らせ、どこかしらに視線を向ける。
「ありがとう。でも大丈夫? ライブがあるのに、また面倒な事にならなきゃいいけど……」
レイラの焦りに振り向いたレイデンは、ここらでやっとレンズをフリップアップし、ニヤけた。
「いいのかアックス。俺のポイントが上がっちまうぜ? ぐずぐずすんな」
「いや減点だ。お前の服を寄越したとしてもマイナスだ」
全身が水浸しになってしまったのだからと、アクセルは冷めた目でレイデンを見つめる。
「いいぜ、ミスター風邪引き。さっきのマザーに洗濯を頼んどく。その間は、ナースオフィスのソファーでブランケットに包まって、デートの延長戦をヤればいい」
「Wow! 見張りは俺達に任せろ。ギャンギャン鳴らしといてやんよ」
ブルースが言い終える間際――アクセルとレイラは、彼等を大きく張り倒した。
※ナースオフィスは、いわゆる保健室です。看護師さんがおり、ところによっては高度な医療行為ができる方が配属されていたりもするようです。
※どこかで触れたかもしれませんが、基本的に担当の者がいるという文化です。例えば掃除は、日本だと生徒がするという習慣ですが、海外は清掃員が雇われ、生徒が掃除をする事はないです。
テレビなどでスポーツ観戦していた時の裏側では、そういった違いが顕著な気がします。
担任の教師がいるというよりかは、1限目の教師がついでに朝礼の様な場を設けてインフォメーションをするなどといった感じです。生徒はいつも、担当の教師を求めて移動し続けるといった具合です。
問題がある・秘めている可能性がある生徒は、他の生徒に影響が出るため、校長先生が中心になって個別対応するとされています。
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