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*完結* COYOTE   作者: terra.
Waxing Crescent
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2




 リビングにいたキャシーが騒ぎを聞きつけると、弟に駆け寄る。



「もう……あんたしっかり温めないからでしょ。熱あるじゃない」



「ああ止めろ! 平気だ、触るな!」



 アクセルは、つい、姉の手を激しく払い退けてしまい、前の2人は怯んでしまう。

 アクセルは、息が震える中、どうにか自分を繕った。



「ごめん……なぁ、薬あるか……今日は行かない……」



 ソニアは解熱剤を持ってくると言い、慌てて部屋を出て行った。




 アクセルは、姉と2人きりになると、ますます鼓動が高ぶった。噛みつかれるのではないかと俯いては、心で構えてしまう。顔を上げられなかった。もし今、自分の目ではなくなっているとすれば。それを考えるだけで、背中に寒気が走った。



「あんた何か考えてるよね、昨夜から。母さんも気にしてたわよ」



 ところが姉は、叱ることはしなかった。母は昨夜、息子と昔に戻ったと、嬉しそうに話していたと言う。その一方で、最低限の事しか聞かせてもらえなかったとも言い、寂し気だった、とも。



「……言いなさいよ。隠すなんてできっこないんだから、あんたは」



「分かってる、だから困んだよ……」



 アクセルは、それ以上踏み込まないでもらいたかった。この心境で姉を突き放そうものなら、次に何が起こるのか。そんな事は、想像するまでもない。

 アクセルは目を擦り、姉を僅かに見て、乾いた笑みを浮かべた。



「また話す……だから頼むよ……分かってても、今は……」



 今はどうか、自分の中に入って来ないで欲しい。そう言い切るよりも先に顔を覆ってしまい、首を落とした。




 キャシーは、何かに怯える弟に、内心戸惑っていた。それを解消しようと、つい、無理に会話をしようとしてしまった。

 もう一度、その、小さくなる肩に触れる。泣きそうなのを堪えているのか、弟から震えを感じた。




 こんな性格の自分だから、いつからか、弟を困らせたのだろうか。弟の発言はどうしても、無理矢理に絞り出す気遣いに思えてならず、胸を針で刺される思いだった。



「……そう……まぁそうね、私も悪かったわ」



 溜め息混じりに返すと、同じ様に首が折れてしまう。喧嘩ばかりしていた弟との関係は良くなっていると思っていた。しかしそれは、まだ序章に過ぎなかった。互いに変わったとはいえ、まだまだ強い態度で出てしまう。仕事の様に上手く向き合えればよいものを、弟になると、どうしても関わり方が下手になる。そのもどかしさを、膝の手が自ずと、強く握った。









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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
こんにちは♪ いつもお忙しい中、投稿お疲れ様です! ソニアもキャシーも心配してましたが、アクセルが危険に遭わせたくないと言う思いで、つい怒鳴ってしまいましたね(・・;) 見ていて辛かったです( ; …
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