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*完結* COYOTE   作者: terra.
Harvest Moon
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8




 通学路いっぱいに陽が射している。2人は車に乗ると、サングラスをかけた。車内にロックサウンドが鳴り響くのは習慣だが、ブルースはすぐ音量を下げると、何があったのかとアクセルに問う。騒がしく登場したからといって、兄妹が真剣に向き合っていた空気は、しっかりと嗅ぎつけていた。



「朝飯ぃ? んなもん、“白飯、味噌汁、卵焼き、焼き魚”、締めは“緑茶”だ」



「碌でもねぇな」



「おい、日本の食文化と健康志向をナメんな。妹に言っとけ、美容意識を高めたいなら、俺んとこへシゴかれに来いって」



 ブルースの母は、日本の関西地方の生まれだ。彼は、普段の朝食を流暢な日本語で教えてくれるものの、ほぼ理解できない。なので英訳してもらい、アクセルはやっと、その食事の質の良さが分かった。








 15分ほど走ると、車やバス、自転車が学校の敷地内に折れていく。

 2人は車を下りると、校舎へ急いだ。何百人もの生徒の蠢きの一部になり、通路から校内へ流れていく。




 ここでは、軽音楽を含む幅広い音楽を中心に学ぶ事ができる。今日は、新学年になってからの音楽指導を目的に、1曲提出しなければならない大事な日だった。




 廊下にはロッカーの壁が立ち並ぶ。授業の支度で生徒が密集するところ、ブルースは、エレキギターが通路の邪魔になるのも余所に、自分の持ち場に容赦なく突っ込んでいく。そして、視界に飛び込んだ光景に愕然とした。どんなに早く来ても、必ず隣のロッカーの持ち主とそのパートナーが1つになり、沸騰している。



「“本っ間、ええ加減にせぇ!” 人のロッカー、ベッドにすんな!」



 と、吠え飛ばして押し退けたところで、だ。彼等の熱が冷め止まないのもまた、いつもの事だ。




 1限目がボイストレーニングのアクセルは、身軽のままブルースと合流する。2限目に楽曲提出を控えているため、丁度よいタイムスケジュールだった。



「結局ドラムは録音したやつ?」



「なワケあっか! 昨夜に電話で念押した。10時に絶対ぇ来いって。遅くとも俺等のターンまでには来る。頼むぜアックス。また後でな」



 基本的に常に火を棚引かせている様なブルースは、妻と呼んで放さないギターを背に、国語の授業に行ってしまった。




 アクセルは彼を途中まで見送ると、教室に向かう。その時、ふと、ある心配事が過り、辺りを見回した。ごったがえす所でも大抵見つけられるあいつが、どこにもいない。立ち止まって目を凝らすも、5分しかない移動時間のリミットが迫る。遅刻にうるさい教師である事を思い出し、行き交う生徒の合間を縫って走った。









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サスペンスダークファンタジー


COYOTE


2025年8月下旬完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め

気が向きましたら是非





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― 新着の感想 ―
お疲れ様です! ブルースも音楽教室に通ってたんですね! てっきり少し尖った学生さんかな、と思っていました! 偏見はいけませんね(^-^; 一曲提出しなければいけない日と言うことは、試験の一貫かなとも思…
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