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第8話 自作プログラムに挑戦・ショートカット

(……あの。続きを話しても宜しいです?)


(いや、よろしくねーです)


 男同士の必殺技談義が終わらない。

 見かねたヘルプが割り込んだのに、アイディは即却下した。


(アンタには言ってないです。少し黙るですよ)


(だーってさあ。俺様、もー飽きたんだもーん)


 アイディは足をぶらぶらさせ、耳までほじる。

 確かに彼からすれば、今の内容は初歩も初歩なのだろう。


(と、突然何を言うですか、アンタは)


(だってお前の話、なげーしよー。もうさあ、いいんじゃねーの? アレやっても)


「アレ、って?」


(だ、ダメです! アンタはマスターにズルをしろと言うのですか!)


(はー。相変わらず頭がかってーなー。別にそんくらいいいだろー? どーせコーディング自体は自力なんだしよお)


「ズル? こーでぃんぐ?」


 二人だけで通じる話を始めた。

 当然、置いていかれる僕。

 この図式、だんだん恒例になってきたなあ。


(大体、マスター様は時間も金も無いんだろ? あんまりモタモタしてっと飢え死にしちまうかもしんねーぞ。良いのかよ)


(う……。で、でも)


「ちょっと待って、アイディ。時間がないのは確かだよ。でもさ、中途半端な状態で説明を切り上げられても困る」


 今回の仕事は完全出来高制。

 タイル一枚で大銅貨一枚だ。


 タイルは有限だ。

 つまり分け前も有限。


 ここでモタつけば、僕の取り分は減る。

 しかも僕は出遅れている。


 それでも稼ぐには、アイディの力が要る。

 なら仕組みを理解しておきたい。


 そう思った瞬間、僕と目が合ったアイディがイタズラっ子のようにニヤッと笑った。


(――その説明とやらを全部すっ飛ばした上で、完璧に覚えられる方法があったとしたら、お前はどーする?)


 な、なんて胡散臭い話なんだ。

 普段から眉唾まゆつばものの儲け話には事欠かない冒険者としては簡単に乗っかることはできない。

 でも、それでもなおその話は魅力的に聞こえてしまった。


 ヘルプとの会話は嫌いじゃない。むしろ楽しいくらいだ。

 ただ、内容は……なんというか、小難しい。

 彼女なりに頑張って噛み砕こうとしてくれるのは分かるんだけど。

 それでも僕の頭はもう限界に近かった。


「……そんな方法が、あるの?」


(ほれ見ろ。マスター様も食いついたみたいだぜー?)


「い、いや、話だけでも聞けたらと思って……ズルをしようとなんて、まさかそんなこと」


(マスター……)


 ヘルプと目が合った。

 僕は反射で視線を逸らした。


 嘘をついた後ろ暗さが、胸を刺す。


(やっぱり、そうなのですね……。マスターは私の説明なんて聞きたくないですか)


「ご、ごめん。実はもう、一気に色々ありすぎて頭がパンパンで……」


(ううう……でも、アレを使ったら私の存在意義が……なくなっちゃう、です)


 ヘルプは頭を抱えた。

 それだけ嫌なものらしい。


 じゃあ、やめよう。

 そう決めて口を開きかけたときだ。


(――でも、今回は仕方がありません。ヘルプがマスターにひもじい思いをさせるわけには……いかないのですっ)


 折れたのは、僕じゃなくヘルプだった。


 ヘルプはタブレットから飛び出した。

 「よっ」と小さく気合いを入れる。


 そして、すいーっと僕の方へ飛んでくる。

 目の前、頭半分くらい上で止まった。


 顔を赤らめ、指をもじもじさせる。

 そのまま、小声で言った。


(――マスター……その、目をつぶって、口を閉じてください……)


「と、突然どうしたの! アイディ、ヘルプは一体――」

(歯ァ食いしばれよー)

(――行くですっ!)


 ヘルプは気合いを入れ直し――え、何で気合いがいるんだ?


 そう思った次の瞬間。

 ヘルプは背中を反る。


 小さく「せーの」とつぶやき、そして叫んだ。


「えいっ!」


 ごちーん!

 それはそれは見事な頭突きだった。


 衝突音と同時に、視界に星が散る。


「ぐぁっ!」


 衝撃で僕はよろけた。

 頭蓋骨から体の芯までビリッとくる。


 い、一体何が――!?


(マスター。『作動条件』の『動作実行』とはどういったものです?)


「え? そんなの、僕の身体の特定した部位に特定のジェスチャーをすることでプログラムが動く条件設定に決まってるじゃないか。……って、あれ!?」


 口が勝手に回る。

 まだ聞いていない内容を、普通に説明していた。


 いや、違う。

 聞いてないのに知っている。


 新規作成。呼び出し。保存。

 命令の種類。記述の形。対象の扱い。


 スキルレベル。スキルランク。

 それぞれの依存関係まで。


 情報が網目みたいに結びつき、頭の中に収まっている。

 怖いくらいに、整っていた。


(がっはっは! 完璧じゃねえか!)


「こ、これは……。もしかして、今の頭突きで?」


(はい、マスター。乱暴なやり方をして申し訳ございませんです。本来なら一つずつ理解すべきところなのですが……)


(たまーにオーバーフローして頭が爆発しちゃう奴とかもいるしなー)


「えええっ!? そんな危険なやつだったの!?」


(い、今のは例えです! もし失敗しても少しの間、頭がぽやーんとする程度で済むですよ)


「少しの間、ぽやーんと?」


(おう。大体半年ぐれー廃人っぽくなるだけだぜ。でもよ、本来三年はかかるところが一瞬で終わるんだ。悪くねー話だろ)


「いやいやいや! そんなの、やる前に言ってよ!」


(おいおい。そんなこと先に言ったら、お前ビビってやんなかっただろー?)


「う……。ま、まあそうかも知れないけど!」


(けっけっけ。成功したんだからいいじゃねーか。結果オーライってやつだぜ!)


「そ……そうかなあ」


 納得できないところはある。

 というか、かなりある。


 でも今から、誰もやったことのないことをするなら、このくらいの無茶の一つや二つは通せないとダメなのかもしれない。


 ……いや、それでも。

 事前に言ってほしかったけど。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

☆やブクマして頂けますと作者のやる気が100倍になる!…かもしれません。

軌道に乗ればこちらの作品も挿絵を入れていきたいと思います。

どうかよろしくお願いします!!

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