第7話 自作プログラムに挑戦・名前を付けよう
「そう言わずに頼むよ、アイディ。例のクルクルのためにお金を全部使っちゃったんだ。これじゃ今日の夕飯すら食べられないよ」
(ま、マスターが私たちのために自分の食事を……アンタ、今の言葉をちゃんと聞いたですか!?)
(……ちっ。わーったよ。ま、お前がやりたいってんなら、どうせ俺様には止めらんねえし)
「ありがとう、アイディ」
よし。
これで本人の承諾は取れた。
じゃあ早速、戦闘以外のプログラムの作り方を聞いていこう。
(それではまず、左上の方にある『バトル』と書かれたボタンをタップするですよ)
「ボタン……あ、これのことかな」
赤地に白文字の『バトル』。
それを叩くと、青地の『ノーマル』に変わった。
同時に、画面の内容もまっさらになる。
何だか、机の上を片づけたみたいだ。
(これで戦闘以外のプログラムが作れる状態になったです。次に『新規作成』をタップするです)
言われた通りに叩く。
すると中央に小さな四角形が出てきた。
中には説明文と、箇条書き。
目で追うと、こんな内容だった。
『登録可能数 0/5』
『プログラム名:』
『動作条件 :』
『引数 :』
『戻り値 :』
……何となく分かる気がするものもある。
でも、まるで意味が分からないのもある。
独特な単語ばかりだ。
覚えられるか、不安になる。
だけど、触らなきゃ始まらない、と考え直した僕は小さくうなずき、ヘルプへ次を促す。
(では、最初にこのプログラムに名前を付けるです)
「えっ? 名前? アミリーとか、ロイドとか、そういうの?」
(ぷぷぷ。何だそりゃ。そういう意味じゃねーっての。誰だよ、そのアミリーってのは)
「あ、うん。アミリーは綺麗な銀髪をした僕の――え、違うの?」
自分で言ってて、ちょっと恥ずかしくなる。
そんな僕を見ていたヘルプが「こほん」と咳払いをして、引き取ってくれた。
(説明が足りず申し訳ございませんです。ここで言う名前は『一目で用途が分かる名前』のことです。今回なら『タイル塗り』がよいです)
なるほど。
やりたい動作の名前を付けるわけか。
確かに、『プログラム1』『プログラム2』『プログラム3』みたいに適当に決めると後で絶対に迷子になりそうだし。
「そうなんだ。それで、どうやって名前を付けるの?」
(<プログラム名>をタップするです)
叩くと、また小さな四角形。
僕は反射で眉をひそめる。
「また四角形が出てきた。真ん中に変な絵が書いてあるけど……えっ?」
勝手に文章が入った。
僕は目を疑う。
『また四角形が出てきた。真ん中に変な絵が書いてあるけど』でよろしいですか?
……いやいやいや。
それ、僕の口から出たやつだ。
(ちょっとアンタ、何サボってるですか! このくらいサポートするですよ!)
(えー。めんどくせーなー。……ったく。ほれ、これでいいだろ)
アイディが寝転がったまま、雑に指を振る。
すると文章が一瞬で置き換わった。
「『タイル塗り』でよろしいですか? ……だって」
(『はい』をタップするです)
「これかな」
押すと四角形が消えた。
そして表示がこうなる。
『プログラム名:タイル塗り』
「なるほど。文字はこうやって入力するんだね。さっきのは、僕の声がそのまま入ったってことか」
(仰る通りです、マスター。本来ならIDEが直前の会話を拾って候補を出すはずなのです。……まったく、アイツと来たら)
「まあまあ。まずはやってみないと分からないし、失敗も大事だよ」
当たり障りのない言葉。
そう思った僕の言葉に、アイディの反応は違った。
彼は寝転がるのをやめ、胡坐をかいて腕を組むと、うんうんとうなずき始めた。
(ほほー。お前、いいこと言うじゃねえか。思ったより向いてそうだな、プログラミングがよ)
(何でコイツはこんなに態度がでかいですか……)
アイディに何が刺さったのかは分からない。
でも今がチャンスだ。
脱線される前に進めよう。
日が暮れたら、パンが遠のく。
「次は……動作条件、か」
僕は先に<動作条件>を叩いた。
すると小さな四角形が出る。
並んでいたのは短い言葉たち。
<自動実行>
<実行ボタン>
<音声実行>
<動作実行>
<登録済み条件>
<呼び出しでのみ使用>
他にもあった。
でも、今は見なかったことにする。
いきなり全部は無理だ。
僕の脳みそにも容量がある。
「色々出てきたけど、ここから選べばいいんだよね?」
(その通りです、マスター。このプログラムが実行される条件を指定できるですよ)
「なるほど……自動実行と実行ボタンは、防御と攻撃みたいなものだよね。じゃあ他のは何だろう」
(<音声実行>は特定の言葉に反応させられるです。例えば『こんにちは』を登録すると、マスターの『こんにちは』で起動するです)
「へえ。何でもいいの?」
(はい。文字数制限はありますが、普通に付ければ大丈夫ですよ)
「じゃあ、僕のオリジナル技の名前とかでも?」
(問題なしです。ただ、噛んだり間違えたりすれば当然発動しません。複雑すぎるのはお勧めしませんです)
「そうなんだ……ふうん……」
脳裏に浮かぶ。
技名を叫び、派手に決める自分。
物語の英雄は、そうしていた。
叫ぶから強いんじゃない。強いから叫べる。
でも、タブレットなら逆ができるのかもしれない。
叫んだら、強くなる。
(お、分かってるじゃねーか。お前はまだスキルレベルが足りねーから無理だけど、成長すりゃ攻撃プログラムにも条件追加ができるようになるぜ)
「本当!?」
(ああ。ま、俺様のおすすめは、ムチャクチャそれっぽい名前にしておいて出すのは足払いとか、そういう使い方だけどな)
「うわ。ずるいなあ」
(戦いなんて勝ちゃいいんだよ。カッコつけるのは、その後でも間に合う)
さすがにその使い方はどうかと思う。
でも、応用が効くのは分かった。
スキルレベルの仕組みはまだ曖昧だ。
要するに、経験を積めってことだろう。
頑張らないと。
パンのためにも、夢のためにも。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
☆やブクマして頂けますと作者のやる気が100倍になります!(断言)
少しずつこちらの作品にも挿絵を入れていきたいと思います。(過去話にも入れ始めました!)
どうかよろしくお願いします!!




