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第45話 衛星都市エムリアの騒乱(中編)

 西の広場は、ひどい有様ありさまだった。

 噴水の一部が吹き飛び、瓦礫がれきが散乱している。

 逃げ惑う人々。泣き叫ぶ子供。

 その中心に、奇妙な仮面をつけた集団が立っていた。


「見よ! これが『神のしもべ』様の力だ!」

「我らこそが選ばれた民! 愚かな旧人類に鉄槌てっついを!」


 演説をしている男たちの周りで、パチパチと空気が弾けるような音がし、小規模な爆発が次々と起きる。

 魔法による無差別攻撃だ。


(……ああん? なんだあいつら。あの『灰色ヤロー』の知り合いか?)


 懐でアイディが不快そうに声を上げる。


「分からない。でも、違うと思う」


 理屈じゃない。

 多分、アイツは損得とか、不満とか、そういう感情の元に動いていない。

 もっと違う……価値観が違いすぎて理解ができない、そんな底知れない存在。

 少なくとも、不満を声高に叫んでいるあんな連中と一緒の場所ステージにはいない。

 それだけは間違いないと断言できる。


「そこまでになさい!」


 一喝したセルフィナを庇うように前に出る。

 男たちがぎょっとして一斉にこっちを見た。


「なんだ貴様は! 我らの崇高すうこうな儀式の邪魔をするな!」


「あなた方、どこでその名前を知ったのかは存じませんが、命が惜しいのならば神のしもべを名乗るのはおよしなさいな」


「そうだよ。選ぶとかそれ以前に自分以外はゴミで他人を何とも思ってないような奴なんだぞ」


「貴様ら、まさか『神のしもべ』様に拝謁したことがあるというのか?」


「さあ? もしここで投降するなら話して上げてもいいけど」


「投降だと? ふん、やはり貴様らは王国派の旧人類か!」


 リーダーとみられる男が手の平を開いてこちらに向ける。そして――


「11!」


 と親指を折りながら数字を発声すると同時に、この公園のシンボルである鐘撞かねつき堂が大爆発を起こした。


「12!」


 続いて人差し指。

 今度は背後、先ほど僕らが馬車で通った、大通りの辺りで爆音と黒煙が上がった。


「じゅうさ……」


「もうおやめなさい!」


 男の中指は半分まで折り曲げたところで止まった。


「ほう……止めてやってもいいが、ならば我々の条件を呑んでもらおう」


 12、の爆発を見る限り爆発物は町の中にも多数仕掛けられていると考えた方が良いだろう。

 つまり、今やこの町全体が人質にされているような状況。

 正義感だけで軽々に動くのは危険すぎる。

 敵の能力は想像以上に高かった。

 さて、どう動くべきか――


 大仰な話し方で身勝手な要求リストを読み上げはじめる偽・神の僕(テロリスト)

 その隙を見て、僕は小声で相棒アイディとコンタクトを開始した。


「アイディ、どう思う?」


(あー、ありゃー厄介だな。遠隔操作で爆発ってのはよくある話だけどよ)


 『爆発』に関する神具アイテムは割と幅広い。

 ミネルバの『爆勇大斧ブレイバー・ブローヴァ』のように戦闘向きのものもあれば、鉱山なんかで発破目的で使われるものもある。


指折り(ワンアクション)一言(ワンセンテンス)。発動のトリガーがシンプルすぎて止めようがねえ)


 その爆発系の能力でも、アレはAランクに指定されていてもおかしくないほどの性能をもっていた。


「攻撃プログラムでも間に合わないかな」


(相当洗練されたコードじゃねーと無理だな。ハードウェア制御かライブラリがあれば別だが、ランクが足りねー)


「固着カメラは?」


(ダメだな、距離がありすぎる)


 指を折り、数字を口にするだけの簡単な動作。

 だが、それだけでこの広い都市のどこかが吹き飛ぶ。


 距離、約20メートル。

 僕が走り出して剣を振るうには遠すぎる。

 相手の指が折られる速度は、およそ0.2秒。

 それよりも速く、正確に、あの指を止める手段なんて――


「……いや、ある」


 僕は腰のケースにセットしていたタブレットを密かに操作しながら、ヘルプに小声で囁く。


「ヘルプ。<フラッシュライト>と<マイク>をスタンバイ。出力最大で」


(承知しましたです。指向性もオンにしますですね)


「ありがとう。それでいいよ」


(ほー。ま、アイデアは褒めてやるがよ)


 やはりアイディもこれからやろうとしていることを理解しているらしい。


(今のランクじゃバックグラウンド実行は使えねえ。アプリ起動中は防御プログラムも使えねえんだぞ?)


「分かってる。だから、一発勝負だ」


 僕は息を吸い込む。


「おい、そこの偽物ども!」


 そして、できる限りの大声で連中を呼びつけた。


「なんだ? 貴様は」


「何が『神のしもべ』様、だよ! あんなのを信じてるなんて、お前らの方が腐ってるぞ!」


「き、貴様ぁ……!」


「自分が上手くいかないのを人のせいにするなよ! いい大人が! 情けなくならないのかよ!」


「黙れェッ! 死ね! まずは貴様から消し炭にしてやる!」


 男が激昂し、僕に向けて右手を突き出した。

 だが、さっきまでの指折りではない。あれは――


「『自分本位な爆弾(マイン・マイン)』、『沈黙の破裂(シャラップ・クラップ)!』


 掌に集束した白い光……神具アイテムによる、魔法爆弾だ――!


 放たれる光の球。

 目で追えるくらいのスピード。

 だけど、あれは僕の近くまできたら爆発するタイプなのだろう。

 至近距離でまともに食らえばタダで済むはずがない。


「ロイドッ!」


 セルフィナの目が言っている。

 『自分は何をすればいいのか』、と。


「セルフィナ! 目を閉じて耳を塞いで!」


 さすがはセルフィナ。

 僕が勝算も無しにあんなことを言い出すはずが無いと分かっていたのだろう。

 僕が言い終わらないうちに彼女は耳を塞ぎ、目を固く閉じていた。


 僕は全力で地面を蹴り、横へと身を投げだし、地面へ伏せる。

 タブレットを、奴らに向けた姿勢で――


 魔法弾が僕のいた場所に着弾する。

 爆音と閃光が発生した――その瞬間。


「今だッ! やれ、ヘルプ!」


(了承ですっ!)


 <マイク・集音最大> ON。

 <スピーカー・出力最大> ON。

 <フラッシュライト・高速点滅> ON。


 タブレットから放たれる、目がくらむほどの光。

 それに加えて何十倍にも増幅して吐き出された爆発の轟音。

 指向性を持った『音と光の暴力』が、真正面からテロリストたちを襲いかかる――!


「ガァアアアアアッ!?」

「目が、目がぁぁぁッ!」


 脳を直接揺らすほどの音圧と、瞳を焼くような閃光。

 男たちは立つこともできなくなり、その場に崩れ落ちた。


(ヒュウ! こりゃあ想像以上だったな! こんなもんの組み合わせでスタングレネードとはな!)


 作戦成功。

 僕は受け身を取った体勢から起き上がろうとする。

 だが――


「お、の、れぇぇぇ……!」


 リーダーの男だけは、まだ意識を保っていた。

 膝を折りながらも未だ屈せず。

 だが、血の涙を流す顔は見当違いの方向を向いていた。


「殺す……殺してやるぅッ!」


 目の見えない男の手から、デタラメに魔法爆弾が放たれる。

 その軌道の先には――


「しまっ……セルフィナ!?」


 音響攻撃の余波でうずくまっているセルフィナがいた。

 彼女は耳を押さえたまま動けない。

 爆弾が、彼女の目の前へと迫る。


 間に合わない。

 僕が飛び出しても、届かない。


 思わず、目を閉じてしまった――


「――ヘイ。お困りかい? ヒーロー君」


 そんなときだった。煙の中から、場違いに軽い男の声がしたのは。


 風が煙を晴らす。

 そこには、無傷のセルフィナと――その前に立つ、一人の青年の姿があった。


「な……?」


 深い緑色の軍服に身を包んだ、茶髪の男だ。

 特徴的な割れ顎と長いもみあげ。垂れた目元には、人を食ったような笑みが浮かんでいる。

 そして、彼の左腕には巨大なガントレットが装着されていた。


「あ、あれは……神具アイテム?」


 男はガントレットを軽く振る。

 すると、先端の排気口のような場所から、プシュッと白い煙が吐き出された。

 男は唖然とする僕にウィンクを投げると、へたり込んでいるテロリストのリーダーを見下ろした。


「か、確保ーっ!」


 状況を立て直した衛兵たちが殺到し、抵抗する力のないテロリストたちを取り押さえていく。


「くっそおおお!」


 地面にねじ伏せられたリーダーが、悔しげに叫ぶ。

 だが次の瞬間、彼は狂ったように笑い出した。


「あひゃひゃひゃ! ……なーんちゃってー!」


「な、何がおかしい!」


「仕掛けた爆弾がこれで終わりだと思う? ざーんねん! 実は町中にいーっぱい仕掛けたのでしたー!」


「なっ……!?」


 男の言葉に、広場が凍り付く。


「しかも、時間が来れば自動で爆発するようになってるんだよねー! 俺が指を折らなくても、ドカン! だ!」


「貴様! 場所を言え! どこだ!」


 衛兵が締め上げるが、男は狂ったように笑うだけで答えようとしない。


(……チッ。この手の魔力連動型爆弾は、解除しようすればドカン、ってのが相場だぜ)


 アイディの嫌そうな声。

 でも、何とかしないと。このままじゃエムリアが火の海になる。


「何でもナビ、検索!」


 僕はタブレットを操作する。

 検索対象、『自分本位な爆弾(マイン・マイン)』の魔力反応。


「……くそっ! ダメだ!」


 画面には、大まかな方向を示す矢印が出るだけだ。

 この町に来たばかりで滞在時間が短く、地形データが不足している。


「これじゃ、正確な位置までは……」


 いや、それ以前に場所が分かったところで、僕には解除の方法がない。

 どうすればいいんだ。


「いやはや。困ったもんだねえ、ヒーロー君」


 その時、僕のタブレットを覗き込む影があった。

 さっきの、緑の軍服の男だ。


「あ、あなたはさっきの……」


「……その板、面白いねえ。爆弾の方向が分かるのかい?」


「ええ、大体の方角なら。でも、場所が分かってもどうしようもなくて……」


「オーケーオーケー。それだえ分かれば、問題ない」


 男はニッと笑い、左手のガントレットを叩いた。


「俺の『暴食の顎(ギア・キーファー)』が、全部美味しく頂いてやるよ」


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました!

本作を少しでも面白い・続きが読みたいと思って頂けましたら、下の☆☆☆☆☆をタップ、ブックマークへの追加をして頂けますとモチベーションが10倍になります!

あと、作者にもこの作品の何が良くて何がダメなのかよく分かってません!できれば感想を頂けますと本当に助かります。

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