第23話 オーギル防衛戦・5
※注意!そろそろ書きためていたストックの底が見え始めています!
あと2万字ほどはハイペースで投稿できると思いますが、その後は1日複数投稿は難しくなります……。
出来れば、今のうちにブクマ登録をして頂けると……見失わずに済むと思いますのでぜひ、お願いします。
画面には、この場所を真上から見たような精緻な地図が表示されていた。
予想以上の性能に、思わず声が出る。
地図の中心には黄色い点。
その少し右上に、数十個の青い点。
さらに上方には、堤のように並ぶ青い点の列。
そして、その向こう側には、夥しい数の赤い点が密集している。
「この表示って……」
自然と口に出ていた。
「もしかして、この辺りの状況を映してる?」
(はい)
ヘルプは即答する。
(黄色い点はマスター、青い点は味方勢力、赤い点は敵勢力です)
一瞬だけ間を置いてから、もっとも重要な情報を付け加える。
(そして、旗の形をしているのが――)
「ヘクター、ってことか」
(その通りですです)
確かに、点の配置は自分の見ている状況とほぼ一致している。
だが、ヘクターを示す旗だけが不自然だった。
その位置は、『左翼のどこか』ではない。
ここからかなり北西に離れた、赤点もまばらな場所を示している。
「……本当に、ここに居るの?」
(あの野郎、あのときサンダーリザードにビビっておめーを置いて逃げたんだろ?)
アイディは「へっ」と鼻で笑い、言葉をつなげる。
(なら、今回も持ち場を放り出してトンズラこいたんじゃねえのか)
確かに、その可能性はあるかもしれない。
でも、冒険者は自由の象徴であると同時にその町を守る防壁でもある。
町の危機に逃げるような真似をすれば……
アイツはもう、冒険者《この業界》では生きていけなくなる。
いや、そもそも――
「この旗、全然動かないみたいだけど」
嫌な予感が胸をよぎる。
もし逃げたなら高速でこの場から離れていかなければおかしい。
「アイツ、ここでやられちゃった……とか?」
最悪の予感に一瞬、言葉が詰まる。
「まさか、死……」
(いえ)
僕の言葉にヘルプが割り込み、きっぱり否定した。
(旗アイコンで表示されている限り、生存は間違いありませんです)
落ち着いた声で続ける。
(……その、もし、死亡していれば――探索物消失と表示されますです)
敵陣で動かなくなった旗の印。
生きてはいるようだけど、全くの無傷とも思えない。
「……そっか。じゃあ、やっぱりあそこまで行かないと」
*
その後、僕は後方部隊の全員にタブレットの画面を見せて回った。
指で示しながら、「この辺には攻撃しないで」と伝えていく。
みんなイマイチ要領を得ない様子だったけど、ひとまずは了承してくれたようだった。
「問題は、どうやってあそこまで行くか、だよね……」
地図を睨みながら、呟く。
「……やっぱり、ここかな」
堤の左翼側、とある一点だけ、赤い点がほとんど無いポイントがあった。
おそらく、ミネルバが救援に入ったと思われる場所だ。
その穴を通って北進、ヘクターの場所まで突っ切り、アイツを回収。
その後、同じルートでここへ戻る――
というのが良さそうだ。
距離は少し遠回りになるが、敵のど真ん中を突っ切るよりは遙かにマシだろう。
とまあ、そんな感じで進行ルートを考えていた僕に、
「――ロイド、これ使って!」
と、背後から聞き覚えのある女性の声が掛けられた。
振り向くと、そこにいたのは――。
「あ、雷の」
「ひっどい覚え方ねえ」
呆れたように肩をすくめる。
「まあいいわ。はい」
確か、名前は聞いた気がする。
でも、あの時は充電のことで頭がいっぱいだった。
少し申し訳なく思いながら雷魔法の女性冒険者から、赤い液体の入った小瓶を受け取った。
「良いんですか?」
「あれだけ動けば、アンタも疲れてるでしょ」
「それは、まあ」
「良いから、飲んでおきなさいって。ヒーロー君」
多分僕よりちょっと年上の魔法使いは、ぱちんとウインクして僕を煽てた。
からかうような口調でも、英雄だなんて言われると、照れてしまう。
「ひ、ヒーローって」
「なーに照れてんのよ」
雷さんはクスッと笑うと、「ほら」と更にもう一本を押しつけてきた。
「ほんとは一人1本なんだけど、ロイドは特別ね」
「い、良いんですか? たしかこれ1本で銀貨2枚とかだったような」
つまり、僕の家賃1ヶ月分。
一気に飲み干すにはかなりの勇気が必要な飲み物である。
「どうせギルド持ちなんだから、そんなこと気にしないの」
「……はい、ありがとうございます」
僕は返事をしながら栓を抜き、一気に中身を飲み干す。
下半身と右腕にまとわりついていた重さが、すうっと引いていく。
ふくらはぎの小さな痙攣も、瞬く間に収まった。
味については感想を避けるけど、効果はしっかりと、そしてすぐに現れた。
「凄いな……」
思わず声が漏れる。
「これが、ヒールポーションなんだ」
(マスター、運動能力が八割程度まで回復しましたです)
「うん、かなり楽になったよ」
正直な感想を口にする。
「実は、足がつりそうだったんだ」
『対集団用プログラム』は確かに強力だった。
狙い通りに動いてくれたのも事実だ。
ただし、いくらコストパフォーマンスが良いとはいえ、あれだけ走れば負担も相応に大きい。
敵が多く、密集している初期の頃はあまり問題にならなかった。
だが、敵の数が減り、散らばると<もっとも近い>条件が裏目に出る。
完璧に見えたプログラムでも、あの速度であちこちを走り回ることになったのは小さな誤算だった。
(マスター、無理はしないでくださいですよ)
「分かってるって!」
深く屈伸をして、呼吸を整える。
残ったヒールポーションを上着の内ポケットにしまい、見据えるは進むべき進路。
そして、僕の両足は再び戦場へと足を踏み入れていく。
激しい土煙で前線は相変わらず視界は最悪だ。
ヘクターの姿なんて見えるはずもない。
それでも、新機能の『何でもナビ』があれば何も迷うことはない。
もし誰かがこのタブレットを引き継ぐなら、僕はきっと、アイディと同じことを言うだろう。
――ランク1になると世界が変わるよ、って。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
☆やブクマして頂けますと作者のやる気が100倍になります!(断言)
軌道に乗ればこちらの作品も挿絵を入れていきたいと思います。(過去話にも入れ始めました!)
どうかよろしくお願いします!!




