第19話 オーギル防衛戦・1
なんと!本日ついに初☆を頂きました!
あまりのうれしさに飛び上がって成層圏くらいまで行っちゃいました!
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祝賀パーティーは滞りなく進んでいた。
――主役の一人であるライゼルの大遅刻を除けば、であるが。
近郊貴族や王都から招かれた上級補佐官の祝辞。
両家当主と、婚約する二人のスピーチ。
それらが終わり、今は歓談の時間となっている。
音楽に合わせて踊る者。
豪勢な料理と酒を楽しむ者。
忙しなく挨拶回りをする者。
誰もが、思い思いの時間を過ごしていた。
セルフィナとライゼルの二人は並んで笑顔を貼り付け、両家の親類たちは澄ました顔で語り合う。
互いの「こっちの方が上だ」という声が聞こえてきそうな、そんな空間だった。
「お客様、どうかされましたか?」
気付けばとても小柄なメイドさんが俯いていた僕の顔を下からのぞき込んでいた。
……って、このメイドさんは見覚えがあるぞ。
もちろん、おととい屋敷に入り込んだときに、だ。
「いえ、大丈夫です」
「そうですか……? あれ? うーん? お客様以前どこかで……」
「の、ののの、喉が渇いたかも! そうだ、飲み物! 飲み物を取ってきてくれませんか!」
「……? はい、承知しました。少々お待ちくださいませ」
小柄なメイドさんは小首をかしげつつも僕の傍から離れて行ってくれた。
「はあ……」
思わず、ため息が出る。
――彼女の覚悟を見届ける。
そんな僕の覚悟は早くも揺らぎつつあった。
あんなセルフィナは痛々しくて、見ていられない。
ホールの壁に掛けられた時計を見る。
……さっき見たときから5分しか進んでいなかった。
時間が進む感覚が鈍い。
こんな居心地の悪いイベントは早く終わってほしいのに。
元パーティーからのイビりとどっちがマシか、というレベルだと思う。
ああ、どうしてセルフィナは僕を招いたんだろう。
そんなことを考えながらぼんやりしていると、今度は見知った顔のメイドが近づいてきた。
僕の髪をきっちりオールバックにしてくれた、『櫛』の神具の持ち主だ。
「ロイド様?」
「ああ、えーと……」
しまった、名前をど忘れしてしまった。
既に何度も会っているというのに。
「カーラ、ですわ」
「こんにちは、カーラさん。慣れない場所でちょっと疲れたみたいですね。はは」
無理に笑顔を浮かべ、心配無用をアピールする。
「お疲れでしたら、お屋敷の中に休憩所もございますので」
「あー……大丈夫です」
けっこう魅力的な提案ではあったけど、それじゃ余計にセルフィナに心配を掛けてしまうかもしれない。
「そうですか……他に私に出来ることはございませんか?」
カーラは心配そうな目で見つめてくる。
だけど、彼女に頼みたいことなんて……。
――いや、ある。一つだけ。
「カーラさん。少し頼みたいことがあるんですが」
「はい、何なりと」
「受付に預けた僕の剣を取ってきてくれないかな」
「……何をされるおつもりでしょうか」
カーラの表情にほんの少し怪訝さが混じる。
まさか、僕が突然暴れ出すとでも思っているのだろうか。
SS持ちが二人もいるというこの空間で。
「あ、変なことをするつもりじゃなくてさ」
僕は言い淀み、入口の方へ目を向ける。
そこだけは案の定、閑散としていた。
出て行こうとすればさぞ目立つことだろう。
「……ちょっと、外の空気を吸いたくて」
こんなの、『もう戻ってきません』と言っているようなもの。
それなら剣など必要ないではないか、丸腰で好きなだけ吸いに行けば良い。と言われたら何も言い返せないのだから。
それが分かっているカーラの顔には明らかな落胆が見てとれた。
勝手な理屈だとは分かっている。
でもこれ以上、笑いながら傷ついていく友人の姿を見続けるのは無理だった。
後で聞かれたら漆黒の板の調子が悪くなったとか、理由を付ければ良いさ。
「それは……お気持ちは分かりますが……」
「頼むよ。もう、セルフィナ様を見るのが辛いんだ」
きっとこの子も、セルフィナのことをとても慕っているのだろう。
僕を女に変えているときの彼女たちは本当に楽しそうだったから。
「……承知いたしました。少々お待ちくださいませ」
カーラは了承の定型句の後に「残念です」とだけ小さく付け足し、受付へ向かった。
係の人と言葉を交わし、例の剣を受け取る。
そして、彼女がこちらへ歩き出そうとした――その時だった。
「――失礼いたします!」
ホール中に響く声と同時に、ダンスホールの扉が勢いよく開いた。
あの人は……王国兵?
確か、あのタイル塗りの夜に門を見張っていたような記憶がある。
男は、ざわめく来賓を横目に小走りで真っ直ぐ進んでいく。
向かった先は――確かあの人は王都から招かれた補佐官……だったような。
「何事かね。騒々しい」
「報告いたします! この町、オーギルの北側より、魔物の大群が押し寄せております!」
「大群……?」
「ゴブリン、オーク、オーガなどの亜人族で構成され、数は1000を優に超えるものと見られます!」
兵士は息を整える暇もなく、続けた。
「また未確認ですが、新種の亜人族もいるとの情報があります!」
「新種だと……まさか……」
「閣下、ここは危険です。すぐに退避の準備を!」
兵士の報告は、想像を遥かに超えていた。
確かに、魔物同士が寄り集まって徒党を組むことが無いわけではない。
だけど、異種同士で1000超えなんて……。
「ま、待ってくれ、立会人を欠いてこの婚約式はどうしろというのだ!」
エドール卿が声を張り上げた。
確かに、最も重要な『婚約の儀』はプログラムの最後の方に予定されていた。
式が完了しなければエドール家の目論見も水の泡、ということか。
「そんなもの、知ったことか!」
「そんなものとはどういうことですか! 我々がどれだけ王国に尽くしているか!」
よほどこの日を待ち望んでいたのだろう。
両家と王国の役人、それの取り巻きたちが加わり、大騒ぎになってきていた。
カーラも僕の剣を胸に抱いたまま突っ立っている。
「そ、そうだ!」
そんな中、エドール卿が何かを思いついたように声を上げた。
「ライゼル殿!」
「……はい、なんでしょう」
「我が娘、セルフィナに同行し、魔物どもを退治しては頂けないでしょうか!」
危機的状況のエドール卿が縋ったのは、SS神具を持つ二人の若者だった。
確かに、二人の神具は規格外。
性能という面ではこれ以上の人材は用意できないはずだ。
「お、お父様っ。突然何を」
驚きを隠せないセルフィナ。
「私がお前のじゃじゃ馬ぶりを知らぬとでも思っていたか?」
「い、一体何を」
「私を甘く見るなよ。数日前の森の件、他にも数々の問題行動を存ぜぬと思ったか」
「うっ……」
セルフィナは絶句してしまった。
秘密の討伐作戦はもちろん、ダンスホールの妨害、そして僕を屋敷に連れ込んだことも。
きっと、すべて侯爵には筒抜けだったのだろう。
「ライゼル殿、お見苦しいところをお見せした。娘はこの通り、出陣させますので――」
「――待ちたまえ。何を勝手に決めている?」
「ほ、補佐官殿?」
「SSランカーが公衆の面前で力を行使して良いのは王の命令があったときのみ。勝手に行使することは罷りならんぞ」
「し、しかし、この非常時で……」
「元々は貴殿の領地管理体制の甘さが原因であろう。1000もの魔物を見逃すとは」
「我が家で雇っている斥候からはそのような報告は何もっ……」
「言い訳は結構。私兵でも冒険者ギルドでも使って何とかすればよろしかろう」
王国補佐官の言っていることは確かに正論だ。
だけど、要するに国はこの町を見捨てる、という宣言でもある。
僕は、いつまでも終わらないこの最低な空気に耐えきれなくなってしまった。
剣を胸に抱いたまま固まっているカーラの元へ大股の早歩きで向かって行く。
「報告ーっ!」
そのとき、大声とともに入り口のドアが再び開け放たれた。
「先ほどより、北より進軍中の魔物の群れに冒険者たちが応戦を開始しました!」
そうか、じゃあ僕も早く合流しないと――!
早歩きから小走りに速度を上げたところで伝令の王国兵は「しかし」と言葉をつなげる。
「既にギルドの大半の戦力を注ぎ込んでおりますが、戦況は極めて劣勢とのこと!」
胸がザワつく。
ギルドの戦闘員はせいぜい100人といったところ。
ゴブリンだけならともかく、オークやトロルといったC級以上のモンスターも混じっているなら――
恐らくひとたまりも無いだろう。
報告を聞いた管理官は一つ大きなため息をついた後、
「今すぐにこの地に常駐している王国兵を集合させ、帰路の護衛任務に就かせよ」
と、命令したのだった――
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
☆やブクマして頂けますと作者のやる気が100倍になります!(断言)
軌道に乗ればこちらの作品も挿絵を入れていきたいと思います。(過去話にも入れ始めました!)
どうかよろしくお願いします!!




