ペンギンなう!2 第十話 海賊島 その1
「さて船長、色々話してくれるかな」
船の上で、リオネルによって船長に対し簡単な尋問が行われた。
なぜかオレもリオネルに抱えられて話を聞いている。なぜに?
船長はリオネルに対して、なんだか心酔しているようで素直に海賊行為について自白した。懐いたものだ。
船長の話は、おおむね屋台のオヤジの推測を裏付けるものだったが、海賊とセブロンの町の代官とトクアク商会の三悪の関係が詳しく分かった。
トクアク商会は元々、セブロンの街では新興の商会で売り上げなども微々たる物だった。そしてある日、海賊に捕まったが、トクアクはしたたかだった。
海賊が奪った積荷の換金、またライバル商会の航行スケジュールの情報提供をすると持ちかけたのだ。
海賊としてもずっと海上で得物が来るのを待ってるわけにも行かず、荷物があってもそれだけでは意味が無い。海賊は話に乗り、ウインウインの関係が成り立った。
だが領軍の取り締まりまでは対処が難しかった。それに捕まれば海賊どころかトクアク商会も同罪である。
そこで目をつけたのが、強欲な代官だった。そいつを抱き込んだ。
「だが代官とは言え貴族だぞ、そう簡単に話に乗るか? 」
「まあ、代官にしてみればはめられたんだけどな」
首をかしげるリオネルに、船長は平然と継げる。
「要は美人局さ。港にパラダイスヘブンって店あるだろ、あの店で代官を接待した時に、代官が女に手を出したのさ。まぁ、出させるようにトクアクが上手いこと仕向けたんだが。まんまと引っかかって、乳繰り合ってる時に乗り込んだのがウチの海賊の首領さ。『オレの女の手を出しやがって』ってな」
「それで弱みを握られたと」
「まあそんなところさ」
そして――、
トクアクが海賊との仲を執り成し、代わりに様々な商売の利権を優遇してもらう。
海賊も取締りについて手を抜く、もしくは情報提供をしてもらう。
代官にもメリットはある。トクアク商会からは、儲けの一部がキックバックされるし、海賊からも、襲った船に女がいれば一部を代官に差し出しされたり、異国の珍しい商品は現物を渡されたりした。
「代官も最初は拒んだようだが、中央での出世の道がなくなって正妻とも折り合いが悪くなって開き直ったんだな。セブロンで酒池肉林の豪遊を楽しんでいるようだぜ」
そして、トクアク商会だけが海賊に襲われないのは怪しまれるので、多少は襲われた風に見せかけて赤字を出して、代官に根回しして税金逃れをしているという。もちろん奪われた積荷や金はこっそり回収している。
「そうか、大体の構造は分かったが、証拠が欲しいな」
ランディは腕組みをしてリオネルを見る。リオネルもまた、そうだなぁ――と、難しい顔をして頷いた。
「だったら、今日これから海賊島に乗り込めばいい」
海賊船長、とんでもないこと言い出したな。
船長曰く――、
海賊達は一週間前にトクアク商会の船を襲ったという。
だがこれはいつもの事で、要はヤラセだ。
拿捕されたと見せかけて一緒に海賊島まで行って積荷を島で下ろし、船員は命からがら逃げ出したと芝居をする。トクアク商会はそれを受けて被害の積荷のリストを代官に提出し税金の軽減措置を申請する。
一方で積荷は、別の港から出た船で、今日海賊島から回収する予定だという。
そして、一週間前に島に下ろした積荷と、回収する積荷が同じかリストを使ってチェックをする。
その現場を目撃し、さらにそのリストを押さえ、ついでに取引現場にいた海賊とトクアク商会の人間を捕まえれば、証拠も証人も押さえられるだろう、というのだ。
海賊退治を決行したその日に、トクアクが飼い俗事まで取引をする。タイミングがいいというか、都合が良すぎる気もするが……。
「よし、それで行こう」
リオネルは上機嫌に言ったが、シルベスタ達三兄弟はも額に手を当てて天を仰いだ。
……考えすぎか。
「悪い病気が始まった」
「なあ、護衛するこっちの身にもなってくれよ」
「昔っから、腕はからっきしなのに、面倒ごとに首を突っ込むのが好きなんだから」
冒険者時代にリオネルを護衛したって言ってたっけ。多分その頃も同じようなことがあったんだろうな。
「なあに、オレには最強の護衛がついているんだから問題ないって」
リオネルは再びオレを担ぎ上げる。ランディも、それならいいか――と納得顔だ。
オイコラ、ランディ簡単に納得するな。
別に、リオネルの専属護衛になったつもりは無いぞ。このまま振り切って海に逃げてやろうか。オレ一人? 一匹? 一羽? だったら普通に泳いで帰れる。
『ダメよ、ペンペン。ここで友達見捨てたらペナルティよ』
『護衛が嫌なら説得するのじゃ。出来なかったら諦めて護衛するのじゃ』
駄女神ズがオレの逃げ道を塞ぐ。
説得って……。
『グエ…略…(あのさリオネル、護衛の件なんだけど、どうしてもやらなきゃダメ? )』
「ほらペンペンもやる気出してるぞ」
言ってねえよ。
どうやら説得は難しそうだ。
そんな事を思っていたら、小太りのレイルのおっさんがやってきた。
「実は、ペンギンさんに何か御礼をしないといけないと思ってまして、でも正直何が良いかわからなくって」
「ああ、そうだな、オレも礼がしてえが、こんな縄付きの身だとな」
「何か好物とかあります? 魚とかかな」
レイルのオッサンと船長がそう言うので遠慮なく。
「グア…略…(じゃあステーキくれ)」
「魚で良いのかな? 」
「……ちょっと違うような」
正直に言ったが通じなかった。
すると横にいたアーノルドが言った。
「多分だがよ。友達になってやるのが一番だと思うぜ」
おお、言葉は通じていなかったが、脳筋アーノルドにしては珍しく良いことを言った。
友達の証として、指切りしようと思って腕を出したら、船長とレイルからは普通に握手された。
テレテレテッテッ、テッテッティエ~~~ン♪
どこかで何か効果音が聞こえたような気がした。
ふむ、友達になったようだ。これで……レベルいくつになったんだ? ちょっとわかんなくなっちゃった。あとで真実の鏡で確認しよう。




