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ペンギンなう!2  第一話 ペンギン海に行く

皆様お久しぶりです。

以前、1年以上前に投稿して一旦投げ出して終了してしまった作品ですが、いろいろ考えた末にまた細々と連載することにいたしました。

どれだけ続けられるかわかりませんが頑張ってみたいと思います。

生暖かい目で見ていただけると幸いです。

ペンギンなう!2  第一話 ペンギン海に行く

 


 ザッパ~ンと岸壁の岩場に激しい波が打ち付けられ、白波が立っている。

 そんな海岸沿いの岩場の上にオレは立ち、獲物を狙っている。

 オレは、はぐれのペンギン、ペンペン。


 人類最強を目指し、レベル100の壁を越えるべく修行の日々を送っていたが、夢やぶれ、オレはレベル99で死んでしまう。そして女神の呪いを……、いや祝福を受けて生き返ったのだ。ペンギンとして。

 なぜかペンギン。しかも最強へ至る方法、というかレベルアップの方法が友達を作る事という謎ルール。

 なぜか友達が増えるとレベルが上がる。友達がいないとレベルは永遠に0という、恩恵? 呪い? を女神から与えられている。友達が多いほど、オレの力が増すらしい。

 というわけで、最強を目指して友達を増やす日々を送っていたのだが、そんな中、オレがいた村はトライヘッドという頭が三つもある魔獣クマに襲われてしまう。。

 襲い来るトライヘッドベアを辛くも倒したオレだったが、実力不足を痛感、さら力をつけるべく、友達を増やすことを心に誓った。


 だが、なぜか海にいる。なぜこうなった?

 事の発端は、居候している家(ペットじゃないから飼われてないよ、友達だから居候だよ)の娘デミの一言から始まった。


「はあ~あぁ、久しぶりね~。なんの屈託もなくこうやってのんびり出来るのは」

 家のソファに深く腰掛け、この家の長女十三歳のデミが心底ホッとした表情でオレを膝の上に乗せ、オレの頭の上にアゴを乗せてつぶやいた。

「ホントね。トライヘッドベアが森にいたときは、毎日ビクビクしてたからね」

 デミのとなりでソファにうつ伏せに寝転がりながらオレの腹をなでるのは、デミの叔父アーノルドの嫁、二十一歳のジェシカだ。 

 オレは犬じゃないから腹をなでても喜ばないぞ――。と、オレはジェシカの手をペシッと叩く。

「それはそうとして……、最近お肉食べてないね」

 デミがしょんぼりと呟いた。育ち盛りの13歳、野菜や木の実だけでは物足りないのだろう。

「仕方ないわよね、魔獣が散々食べ荒らした後だから」

 ジェシカの反対側でやはり寝転がってオレの腹をさするのは、デミの母の妹つまり叔母のメグだ。オレはやはりその手をペシリと叩く。こいつは歳は内緒とかで誰にも言ってないらしいが、デミよりも10歳ほどは上に見える。

 山と森に囲まれた田舎のこの村は、つい先日、なぜかトライヘッドベアに襲われ、オレはデミの親父たち元冒険者と一緒に魔獣を迎え撃ったのだ。なんとかトライヘッドベアは退けたものの、トライヘッドベアが数日居座った森にはウサギ一匹見つけることは出来なかった。

 どうやらトライヘッドベアがかなり食い荒らしたらしい。

「でも、お魚も食べてないね……」

 ギクッ。デミの声にオレは一瞬動きが固くなる。ジェシカたちを叩く手が止まる。

 そういえば森の獲物がいなくなって、腹がへったオレは川で魚の踊り食いをして過ごした。ペンギンであるオレにとって、魚を取るのは簡単なことだったのだが……まさか。

「お魚もあの魔獣が食べちゃったのかな」

 そ、そうだよ。魚も多分あの魔獣が食べちゃったんだよ……。

「クマの魔獣って魚食べるのかな? 」

「クマって雑食だから魚も食べるんじゃない? 」

 そ、そうだよ。いくらオレが魚をたくさん食べたからって言っても、まさかペンギン一匹が、村人がまったく食べられないくらい魚を食べつくすなんて事は……。

「そういえば、村の人が川で魚を取る黒い獣が出たって……」

 デミたちの視線がオレに向かう。あれ?

「普通の魚よりも大きくて、それで魚よりもとっても早く泳いで、鳥みたいな口ばしがあって……」

 なんだか、まずい雰囲気になってきた。オレは視線をさまよわせる。

「「「ペンペ~ン!? 」」」

 うん……、川の魚をオレが食いつくしいたとは思わないが、原因の一端はあるかもね。

 オレはぴょんとデミの膝から飛び降りるとそそくさと、部屋を出て行く。

「あ、逃げた」「待ちなさい! 」「コラ~あんたが犯人なの? 」

 デミたちの言葉は聞こえないふりをするして、オレは尋問部屋に変わったリビングを脱出するのだった。


     ※


 川魚は暫くすれば戻るだろう、……戻ると思いたい。

 後で、他の川から魚の稚魚とか卵もちのメスをオスとセットで連れて来て卵産ませるとかさせたほうがいいかな。ま、後で考えよう。

 まあ、そういうわけで、しかたなく海まで来たのだ。

 ここの魚をお土産にすれば許してもらえるかなと、魚介類を採ることにしたのだ。

 みんなもそうだが、オレもここ最近肉を食ってない。と、思ったらなんでもいいからたんぱく質を食べたくなった。

 ということで、バシャンと海に飛び込んでひと泳ぎ。

 海には、川の魚とはまた違う美味しい食い物が多く、気が付いたらオレは、色々食べて回っていた。(グルメな食べ歩きじゃないよ)

 シラス、ホタルイカ、アジ、ハマグリ、イカ、アナゴ、エビ、ホタテ、カツオ、マグロ、シャチ、クジラ、……は、さすがにいないが、なかなか美味い物が多く、オレの舌を唸らせる。

「おお、このイカはネットリとした身にイカスミの濃厚な味わいがたまらない。ん! このエビは身が詰まっていてプリップリだ。さらにエビミソの美味い事、酒が欲しくなる」

 生前は酒も美食もやらなかったオレだが、生まれ変わってなんだか食い意地が張ったような気がする。

 獣なだけに、本能に忠実になったようだ。

 ハァ~食った食った。さて帰えろ……じゃねえよ。

 満腹になったところで、ハタと気が付いた。このまま帰ったら、自分だけ腹いっぱい食べて、とデミたちがオーガになって怒るだろう。

 ようやくオレは本来の目的を思い出し、改めて魚介類を捕まえることに。

 タツノオトシゴ、イソギンチャク、ヒトデ、シーサペント、クラーケン、リヴァイアサン……あれ? ロクなのがいないな。

 まずい、またオレが魚介を死滅に追い込んだか、と思っていたら、

 お、あそこにイカがいる。

 そのイカ自体がなんかの魚に食らいついているようだが、まとめて採ってやろう。

 と、魚に食らいつくイカにオレが食らいついた。その時、

「グウオオオオーーーッ! (イテテテテテテッテテッ! )」

 イカが絡み付いていたのは魚に見立てた疑似餌で、そこには釣り針がついていたのだ。

 つまりオレは、釣られた。

「なんだこれ? 」

 ザッパ~ン、と一本釣りで吊り上げられたオレは浜に投げ出される。

 吊り上げたのは、小柄な女性、というか少女だった。デミの弟のジョアンと同じくらいの年齢、十歳くらいか。

「おっきな変な魚、食べられるのかな」

 少女の手は早くもナイフとフォークを握ってオレをギラついた目で見つめる。

 早ッ! いつの間に!

 ってか、かわいいオレ様を見て食べるとか言うな。あとヨダレをたらすな。

「ウ~ン、鱗はなさそうだけど、腸かっさばいて羽根をむしればあとは焼けば食べられるかな? 刺身は無理か? 直火であぶるか、あら塩包みの蒸し焼きでも良いかな」

 オイ、妙に具体的だな。

 意外と美味そうな気がしてオレもヨダレが出そうになった。……ってバカ、オレを食う話してんだぞこいつ。

「グギャーグギャー(バカヤロ、おまえのような低レベルの奴に食われてたまるか、それにオレなんか食っても美味しくないぞ)」

 オレはギャーギャーと文句を言うが、コイツには通じないだろうな。

 なら実力行使で、口ばしで突いて逃げ出すか――、と思ったその時。

「そんなこと無いよ、脂がのってて美味しそうだよ。このお腹の辺りとか」

 そういって、少女はオレの少し出た腹をプニプニと人差し指で突いてくる。

「魚卵入ってるかな」

 入ってねーよ。魚じゃねーし。

 これは、さっき腹いっぱい食ったのでお腹が出てるだけだ。

「グギャ~グギャ~(脂乗ってねーよ、オレは最近まで木の実しか食ってなかったんだぞ)」

「そうなんだ、意外と貧しい食生活だったんだね」

「ガ~ガ~――ッン!? (そうなんだよ――ッン!? )」

「ん?」

 なんかコイツ、オレと普通に会話してないか?

「グワーグワー? (お前、オレの言葉わかるのか? )」

「お前言わないで、アンナよ」

「アンナグアーグワーペンペン(アンナいい名前だな、オレはペンペンだ)」

「ペンペンね。でもなんで言葉がわかるのかな、ねえなんで? 」

 なんで、って小首傾げられても。それはオレが聞きたいわ。

「グッグゴーゴー(とにかくオレ食うの禁止!)

「残念。でも、わかった」

 アンナは小さく頷くと、トボトボと歩き出す。

「グオグワー(何処行くんだ)」

「イカが一杯だけでも釣れたし、釣り針がダメになったから帰る」

 見ると疑似餌が壊れていた。仕方なく帰るという。

 オレはそれについて行く。

 トボトボ、ペトペト、トボトボ、ペトペト。

「何でついてくるの」

「グワグワ~(ペンギンの習性? なんだか無性に人の真似をしたくなる)」

「ついてくると、食べたくなる。ジュル」

 アンナはよだれを拭きながら言う。

「グワッ!? グワー…略…(食うの禁止! 腹が減ってんなら、オレが魚介類を捕って来てやるからそれで我慢しろ)」

 オレがそう言ってやると、アンナは素直に頷いた。

 腹が満ちて元気なオレは、すぐに海に飛び込むと、アンナ用に魚介類を捕って、それを空間拡張巾着袋に詰め込んでいく。

 イワシ、ウナギ、シャケ、サバ、サザエ、カニ、カジキ、イルカ、人魚……は、さすがに食えないが、なかなか美味しそうな物が採れた。

 これだけあれば良いか、とオレは意気揚々と浜に戻ってきた。

 するとアンナが浜で倒れている。

「グワッ!? グワー…略…(アンナどうしたッ!? 大丈夫か、魔物か魔獣にやられたのかッ!? チックショ気が付かなかった! )」

 オレがあわててアンナを助け起こすと、アンナは「……お腹すいた」と力なく呟いた。

 腹へって倒れてたのかよ、紛らわしいんだよ! 

 オレは動けないアンナを背負って(なぜオレが? )、彼女の家に向かう。

 彼女の家は、真っ白な浜辺の前にあった。船もなく船を止めておく桟橋も何もなく、漁師をしてるようでもなさそうだ。親は何をしてるんだろう。

「ただいま~」

 さっきまで元気は無かったが、家に入ったとたんアンナは大きな声を出した。

 だが、アンナの声に家族が返事をする事は無かった。

「グオ~? (留守なのか?)」

「ちょっと母ちゃんに挨拶してくるね、一緒に来る? 」

 何の気配も無い家だったが、アンナは母親に帰宅の挨拶をするという。

 病気か何かで寝てるのかな? と考えていると、アンナはオレの手を引いて奥の部屋に向かう。

 えっ、やっ、ちょっ、いきなり女性の両親に挨拶って、人見知りでコミュ症のオレにはメッチャハードル高いんですけど。

 手土産は、さっきその辺の海で取った魚介類?

 何しに来たんだって言われたら、お嬢さんを下さいって言わないといけない流れか? 

 それで一発殴らせろって言われるのか?

 ドギマギしながらも彼女に手を引かれてオレが入った部屋は、仏間だった。

 

 チーーーーーン。


 彼女は小さなテーブルに置かれた似顔絵に手を合わせて、

「母ちゃん、今日も元気に遊んで、元気に釣りして新しい友達も出来たよ。私は元気にやってるから安心してね」

 と話しかけていた。

 重って~ッ! 重たすぎる。

「ペンペンも挨拶する? 」

 そう言われて突然、似顔絵の前を空けられた。

 え~っと、出来れば断りたいです。だけど遺影の前で「イヤです」なんて言えないよな。

 仕方なく、

「グ~エ~…略…(え~っと、ペンペンといいます。流れのペンギンやってます。えっとアンナの友達です〔あれ、いつの間に? 〕)」


 テレテレッテッテ~~~♪

 どこかで何か効果音が聞こえたような気がした。

 おお、不幸中の幸いか、棚からボタモチか、友達が出来てレベルアップしたらしいぞ。

 イエ~イ。

 ってか、アンナもよくペンギンなんか友達にしようって思ったよな。

 デミたち姉弟といい、アンナといい、軽いなあ。

 おっと、イエ~イとか言って喜んでる場合じゃない。まだ遺影の前だ。

 あと何言えば良いかな?

「グ~エ~…略…(え~っと、アンナの事はオレが面倒看るので安心して成仏してください〔あれ、まるでプロポーズ? 〕)」

 なんか脇の下に嫌な汗をかきながら、挨拶を済ませ。オレたちはキッチンに向かった。

「グ~エ~…略…(なあ、おまえの母ちゃんいつ……)」

 いつ亡くなったんだ、と聞こうとしたが、あまり踏み込んで聞くのも悪いかと口をつぐむ。

 だが、そんなオレの気持ちには気づかず、アンナは普通に答える。

「えっと母ちゃんは塩の販売で出かけてる。いつ帰るかはよくわかんないけど、多分あと二週間くらい? 」

 生きてんのかよ! 

「グ~エ~…略…(なんで似顔絵飾ってるんだよ! 遺影かと思ったじゃん)」

「父ちゃんが浮気しないように? 母ちゃん怒ると恐いから」

 紛らわしいんだよ! 

 まあでも生きてるんなら良かったよ。

 アンナに続いてキッチンに入る。それなりに料理の道具は揃っていたが、肝心の食材や調味料がほとんど無かった。

 食材はまあオレが取ってきた魚介類が有るが、調味料は塩だけしかない。

 何を作るかな。

「グア~…略…(調味料がねえな、何を作ろうか。アンナ何が食べた――エッ!? )」

 アンナがキッチンの入り口で倒れていた。

「……お腹すいた」

 またかよ。さっき、家に帰ったときは元気に「ただいま」って言ってたじゃねえか、あの元気はどうしたんだよ。

「……母ちゃんに心配かけさせたくなくって」

 ……そっか。

 うん、その気持ちわかるぞ。うんエエ娘やな。……って、なんか母ちゃん死んだ人みたいだからその習慣やめたほうがいいと思う。

 それはさて置き、まあお前はそこで倒れてろ。オレが腕によりをかけて、メッチャ美味い料理を作ってやる。調味料は塩しかないけど。

 どうしたもんかな……ポクポクチーン、閃いた。

 と、いうわけで、

「グエー…略…(古今東西ありとあらゆる家事の達人、シルキーよ。我声が聞こえたならば、その姿を現し我の願いを聞き入れたまえ)」

 料理を作る前に、オレは妖精のシルキーを呼び出した。

 シルキーのオードリーさんは、絹の白いワンピースを着た髪の長いメッチャ美人な妖精だ。透明感の有る……というか本当に少し透き通った妖精だ。

 妖精のシルキーは家事が大好きで、掃除に洗濯、料理、何でもやってくれるが、逆に部屋が綺麗になっていて、自分のやることが無いと怒って部屋を散らかすという天邪鬼な性格の妖精だ。

 この性格がなければ、美人で傍においておきたい都合のいい女の妖精……

『なんかジト目で見られている気がするのは気のせいでしょうか? 』

 おっと、この人? もペンギンの心を読むようだ。危ない危ない。

 オレは話題を変える。

『今日も、お願いがあって呼んだんですけど――』

『う~ん、今の気分は……そうですね。お掃除がしたいですね』

 オードリーさんは最近あまり掃除をしていなかったので、今度呼び出されたら思いっきり掃除とかしてみたかったという。

 前回お呼んだときは、雨続きで皆家にいたのでデミたちが掃除はし尽くしていた。なので洗濯を頼んだんだよな。

 でも今日もお掃除の仕事じゃない。

『掃除も良いけど、その前に料理を作って欲しいんだよね』

 そうオレはオードリーさんに料理を作ってもらうために、彼女を呼び出したのだ。





久々の投稿をご覧いただいてありがとうございます。ご意見ありましたらお寄せください。

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