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第四十話 ペンギン 聖剣を失くす

 しかたない、聖剣用意しとくかな……。

 オレは気が進まないながらも、駄女神の言いつけにしたがって聖剣を使うべく手入れをする事にした。

 オレの目標は、オレ自身が強くなること、そしてレベル100を越すことにある。

 自分自身が強くなって敵を倒せるようになるのが面白いのであって、強い剣で的を倒すのはあまり趣味ではなかった。もちろん剣で敵を倒すこともあったが、、それはあくまでも剣の技を磨く一環だったし、剣の技を磨くことで己を強くする事が目的だったからだ。

 だから、敵を倒すためだけに強い剣を使うというのは、ちょっと違うような気がしていた。

 だが、そうも言ってられないか。

 今回デミやその家族は皆生きて戻れた。だがそれも紙一重の奇跡に近い状況だ。殆ど死んでもおかしくなかったのだ。

 デミや村の皆の命には変えられない。不本意でも奴を倒せるなら聖剣でも何でも使おう。

 食事を終えたオレは庭に出ると、夢のお告げに従うべく巾着袋の中身をあらためた。

 たしか駄女神が、魔獣には聖剣が有効だから、聖剣を使えと言っていた気がする。

 そしてそのために巾着袋を拾わせたとか言っていた。

 あれ、変だな。そうすると、駄女神’sは最初に会った時から魔獣と戦うことを知っていた……? 

 いやいや、そんなはずは無いな。駄女神のくせに未来を予知するような事は出来るはずないし、偶然か。

 オレは気を取り直して、巾着袋に溜め込んだ様々な武器を取り出す。

 刃渡り二マイトルはあるグレートソード。

 長さ三マイトルのハルベルト、この二つは取り出すだけで大変だった。

 ペンギンとして生まれて、初めて戦ったときに使った片手剣。木でも岩でも溶けかけたバターのようにスッと切れる事から銘はバターナイフと呼ばれた一品だ。

 他に長短色々あるが片手剣が五本、両手剣二本も出てきた。

 投擲武器はトマホーク、円月輪、ブーメラン、ザイールナイフ、手裏剣が三十個。

 打撃武器ではトンファー、三節根、ヌンチャク、モーニングスター、メイス、ウォーハンマー、グレートアックス。

 変わった物ではカイザーナックル、ライガークロウにカタール。他にエルフィンボウ。

 あと武器じゃないけど世界樹の枝で作った杖、守りの指輪が数個、シャハルの魔法の盾、伸縮自在の鎧etc。

 人間の若い頃は強くなるため色々な武器や防具を試したものだ。後半生はひたすら己の身体一つで強くなるように鍛えていたが……。

 と、ここで気が付いた。

 おや? 肝心の聖剣が無いぞ。

 どこぞの遺跡で見つけたアーティファクトだが、ないな。

 剣の鞘はあった。金細工の見事な彫刻が施されていた。豪華な物だったが中身は無い。

 どっか引っかかってんのかな――、とオレは巾着袋をひっくり返す。

 昔の着替えや生前ためていた金貨、それにこの間しとめたウサギ肉と、ダシ取り用のウサギの骨ガラ、シカの毛皮が二枚、ウサギの毛皮が三枚、デミにあげようと取っておいた薬草、など色々な物が出てきたがやはり聖剣はなかった。

 でも最近なんか使ったような気がするんだけど、どこでどうしたかな。と、生き返ってからの事を思い出して、ハタと気が付いた。

 生まれ変わって初めてウサギと戦った時に、巾着袋の中から取り出したのだが、握力がなくて、振りかぶったらそのまま背後の林の中に飛んでいってしまったのだ。

 あれ、聖剣だった!

 アッチャ~やってしまった。

 あれは場所は何処だったかな。

 そんなことを考えていると。シルベスタ達が俺を取り囲んでいるのに気が付いた。

「ペンペン、お前この武器は何だ」

「グエー(昔使ってたやつだ、でも今は使えない。いらないものばかりだ)」

 シルベスタは相変わらずオレの言葉が通じないようで、首をかしげていた。

「おおすげえ、兄貴見ろよこのウォーハンマーにグレートアックス、アダマンタイト製だ。重さもハンパねえぜ。こいつがあったらこの間のクマ公にも勝てるかも知れねえ」

「グワー(欲しかったらやるよ)」

「え、なんて言ったんだ、もしかしてくれるって言った? 」

 言葉が通じないわりに、この筋肉男は勘が鋭い。

「あ、あ、憧れのエルフィンボウ! 魔道士じゃなくっても魔法の矢が打てるのよ。それにホーミングアローのセット? 」

「何これ、世界樹の枝で作られた杖よ。宮廷魔道士でも持ってないウルトラDXスーパー超激レアアイテムよ!? 」

「グワー(二人も欲しいのか、だったらやるよ)」

「もしかして私達ももらえるの」「でも悪いわ」

 悪いと言いつつメグもジェシカも獲物をしっかり握って離さない。

「あ、あのペンペン、悪いな」

 決まりが悪そうに謝るシルベスタだが、その手にはしっかりグレートソードが握られている。

「グワー(別に喜んでもらえればそれでいいさ)」

 そして、庭に広げたものは欲しいものは適当に取ってってくれと言っておいた。通じたかは判らんけどね。

 オレはペン小屋に戻ると子狼に声をかけた。

『あ、ペンペン起きた。久しぶり。怪我大丈夫? だったら遊ぼ』

『久しぶりってさっき会ったばっかだけど? ……ってか、お前もしかして弟? 』

 姿がそっくりで判らなかったが、今いるのは双子のもう一頭(推定弟)のようだ。

『違うよ、あたしがお姉ちゃんで、さっきまでここにいたのがオトート。アイツは父ちゃんの所に行った。ペンペン起きたってホーコクってのをしに行った』

 は? お互い自分が上だって思っているのか? ってかメス? 姉(自称)だったのか。そっくりなんで見分けがつかない。まあ、どっちが兄でも姉でもいいけど、今後は間違えないように名前とかつけたほうがいいかな。

『そっか。報告に行ったのね。まあいいや。それじゃ、ちょっと森まで行きたいんだけど、乗っけてってくんない』

『森に? いいよッ! 』

 森に遊びに行くと思ったみたいで、子狼は喜んでオレを背中に乗せてくれた。

 都合のいい足ゲットだぜ。早いとこ、聖剣を見つけないとまずいみたいだからな。



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