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第3話 ペンギン、過去の自分と向き合う(心の中じゃなく物理的に)

 倒木を超えて切り立った崖の上に出た。崖下は大きな川だ。

 川幅は二、三十マイトルはあるだろう。水の勢いは意外と激しく、人間だったら泳ぐのも大変だろう。だが・・・・・・。

 オレはおもむろに川に飛び込んでみた。

 ふむ、さすがペンギン。急流にも流されずに泳げている。泳ぎは体が知っていた。

 人間のころもちゃんと泳げたが、その何倍も速く泳げるし、疲れない。

 短い足だと歩くのが大変だから、これはありがたいな。

 オレは下流の泳ぎながら周囲を見回す。なんだか知らないが、オレにとって大切な物とやらを探しながら。

 暫く泳いでみると、前方に何か気になるゴミのような薄茶色い布の塊を発見した。

 川ぞいの木が強風か何かで倒れて、枝を半分、水面に突っ込んでいる。ゴミはそこに引っかかっていたのだ。

 関係ないかと、泳いで通り過ぎようとするも、何かが気にかかる。あれ、この布何か見覚えが・・・・・・。と思っているとその布に何か字が書かれていたのを見つけた。

 あれ、オレの名前?

 近寄って触ってみてみると、布の間から白い棒が飛び出していた。

『グエ!? ギャッググエーガーッ! (骨!? 白骨死体かよッ! )』

 ボロ布と思っていたそれは、オレが死ぬ直前に着ていた稽古着で、白い棒は骨で、白骨死体は前世のオレの身体だった。

 稽古着にオレの名前が書かれていた。オレには自分の持ち物や服に名前を書く習慣があったから見分けがついたのだ。

 死んでから大分たったのだろうか、身体に肉はついてなく大分綺麗に白骨化していた。

獣に食われたら、食いちぎられて骨もバラバラになるところだが、腐乱したあと川魚にでも食われたのだろうか。

 学校の標本にあるような、もしくはダンジョンに出てくるスケルトンのような見事なガイコツになっていた。

 まあ、前世では大切なものだったよな。自分の体を見てしみじみと思う。 

 そのとき、オレの白骨死体にヒモが襷がけに掛けられていたのを見つけた。よく見るとそれは小さな巾着袋がくくりつけられている。

 これはオレが持っていた全財産だ。

 少なッ! とか言うなよ。これはすごいものなんだ。

 これはオレの魔力にしか反応しない、空間魔法を施した拡張袋だ。人の拳ほどの大きさの袋だが、かなり大きな物でも仕舞える便利な袋だ。

 身体を鍛えながらダンジョンに潜っていた時に見つけたアーティファクトだ。

 長い間水に浸かっていたが、中身には何の影響もなかったようで、生前にためた金貨や服、武器その他もろもろが以前のまま仕舞われていた。

 取り出すと服は濡れもせずに洗いたてのままだった。生前のオレは綺麗好きだったのだ。

 今のオレに服は必要ないけどね

 オレの魔力にしか反応しない袋だが、ペンギンになったオレにも開けられた。転生した者は種族が変わっても魔力は一緒なのかな?

 まあ、深くは考えないでおこう。もしかしたら駄女神’sが何かしたのかもしれないし。

『駄女神言うな~ッ! 』

『複数形で一緒にしないで~ッ! 』

 どこかでそんな声が聞こえたような気がするが気にしない。

 その他には、様々な武器や防具お金もそのまま入っている。

 おっ、真実の手鏡だ。これも無事に残っていた。

 これは自分のレベル、ステータスが今幾つなのか、客観的に数字で見ることが出来る鏡の簡易版だ。

 神殿に行けば全てを見る事ができる等身大のものがあるが、オレは自分のレベルだけが気になったので小さい手鏡を持ち歩いていた。

 鏡を覗き込む。

 うん、そこにいるのは、やはりどこをどう見てもペンギンだな。

 しかも微妙に目が三角で目つきが悪い気がする。

 ……いや気のせいだ。うん。

 そして魔力を流し込み、気になるステータスを確認。

 

 名前  ――――(名なし) 

 種族  ペンギン?(獣人?)


 ペンギン? ってなんだよ! 

 ペンギンか獣人かもわかんねえのかよ……、駄女神’s手を抜きすぎだ。

 そして最も気になるのが、レベルだ。


 レベル  0(友達0人)


 レベル0?、ゼロ!? 零! 

 駄女神’sに言われて分かってはいたが、実際に見るとやはりヘコムなあ。

 しかもワザワザ友達0人と書いてあるところがむかつく。

 ……。

 いつまでもこうしていても仕方ない。

 その他にスキルレベルも確認する。

 体格からか格闘術もレベル0.

 剣術は、レベル1だ。剣は使えるのか?

 魔法は、レベル10(MAX)と凄かったが、なぜかグレイアウトしている。

 活性化させるには何かきっかけが必要なのかな。

 あとは、この手鏡では確認できない。

 もういいや、さっさと友達つくりに人里へ出よう。


 オレは四苦八苦して、口ばしと指の無い手のヒレ(後で知ったがフリッパーというらしい)を使って、紐の長さをなんとか調整して巾着袋を襷がけにした。

 そして現世ではもう関係ないが、なんとなくそのままにも出来ず、オレはオレ自身の骨を抱えて岸に上がった。

 川から少し離れた地面に穴を掘り、自分の白骨死体を埋葬してやる。

 穴を埋めて、その辺りにころがっていた木の棒を突き立てて墓にした。

 名前も没年も何も無いが、人見知りのコミュ症で、社会になじめずたった一人山の中で朽ち果てたダメ人間に似合いの墓標のような気がした。

「グアーゴーガー(成仏しろよ)」

 オレの魂は輪廻転生してるので必要ないかもしれないが、なんとなく死体を埋めるときは合掌して念仏を唱えておいた。

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