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第十九話     ペンギン、久しぶりに肉を食う

 家族総出の快気祝いのパーティは和やかに進んでいた。

 うん。みんな仲がいいな。

 でもオレだけ家族じゃない。ちょっと寂しい。

 そうだな。家族とか友達がいないから、寂しいから、コミュ症だ人間嫌いだといってかえって自分から人と交わらないようにしてたんだよな。自業自得だな。

「ペンペン」

 そんなヒガミ混じりの考えをこじらせていると、オレを呼ぶ声が聞こえた。

 声に振り向くとアン婆ちゃんがオレを呼んでいた。

「じゃあ、コレ私からのプレゼント」

 そう言って、オレを膝に抱えたデミがオレを婆ちゃんに差し出す。

 オレはプレゼントか? それとも人身御供か?

「今日はありがとね」

 婆ちゃんに抱えられたオレは、婆ちゃんに突然お礼を言われた。何のことかと思っていると、

「今日、エマとアニーとエニーと、一緒に白い花採ってきてくれたんでしょ」

 と突然指摘された。

「なんでお婆ちゃん知ってるの? 」

 三人娘を振り返ると、三人もびっくりしたようで本気で驚いていた。こいつらが話したんじゃないのか。

「このフラウのお花が教えてくれましたよ」

「「「エ~、お婆ちゃんお花とお話できるの!? 」」」

 フフフ、とアンは嬉しそうに笑った。

 でもそうかもしれない、ペンギンだってコロポックルやユニコーンと話ができるんだ、アンもフラウの花に宿っている妖精と話ができるのかもしれない。

「どうしてペンペンと一緒に行ったの」

 アンが楽しそうにエマに聞いてくる。

「えっと、お花探しに行ったら、アニーちゃんとエニーちゃんが転んで泣いちゃって」

「え~泣いてないよ」

「えっとエニーも泣いてないよ。ちょっと痛かっただけだもん」

 いやしっかり泣いてただろお前ら。

 何言ってるかさっぱり分からんだろうが、アン婆ちゃんはニコニコ聞いている。

「そしたらペンペンがお馬さんに乗って来て」

「「「「「馬!? 乗ってきた? ペンペンが? 」」」」」

 話を聞いていた家族全員が驚きの声を上げる。

 イヤ、乗ってないし。呼び出しただけだし、あと引きずられただけだ。

「うん白いお馬さんが来て」

「うん、泣いてたアニーを慰めたの」

「泣いてたのエニーじゃない」

「ペンペンは白馬の王子様だったの」

「「ウン」」

「「「「白馬に乗って来て、慰めたッ! 」」」」「白馬の王子様かよ、く~っ」「許さん」

 みな白馬に幻想を抱いているようだが、ホントはただの変態馬だぞ。

 そしてごく一部の娘は、うらやましそうにハンカチを噛み、ごく一部の筋肉オヤジは怖い目つきでオレを見る。・・・・・・こいつらアホか。

 しばらくフラウの花を取ったときの話で盛り上がった。勘違いも多いけどね。

 あきれてオレは、一人? 一匹? 一羽? 木の実を食べていたが、そんなオレにアンが声をかけてきた。

「ペンペン、今日はありがとう。お礼って言えるほどのものじゃないけど、このお肉、私はいっぱい食べたから、残すともったいないし食べてくれる」

 婆ちゃんが自分の皿にあったローストホニャララをオレの皿に分けてくれた。

 おお、婆ちゃんいい人だ。ってかこの人もペンギンの心が読めるのか、さすが花と話しができる人だ。

 オレは急ぐ必要もないのに肉にかぶりつく。

 うっ、う、う、う、うっっま~~~~い。

 半生で柔らかく、それでいて中の旨みがキチンと火を通したように活性化してジューシーだ。

 オレのペン生? いや前生の人生を通しても一番うまい肉だ。

 うまそうに食べるオレを、楽しそうにアンや三人娘、ジョシュアやジョアンら家族全員が見ていたが、そんな事は気にしない。オレはさらに夢中になって肉をがっついた。

 一気に食べ終えると、今度はリースがオレにフォークで差し出した肉を食べさせてくれる。

 なんか赤ん坊扱いされてるような気がするが、まあいいか。

「ペンペンありがと、私のお肉も食べて」「アニーのお肉も食べて」「えっと、エニーのお肉もありがとう」「おっ、いい食いっぷりだな」「どんだけ食えるかな」

 そして、それを食べると三人娘が次々に肉を皿に乗せてきて、さらに今度は男連中まで乗せていく。

 ゲプッ。

 オレは久しぶりの獣肉を嫌っというほど堪能した。ホント最後はちょっと嫌になった。

 ようやく一息ついたとき、オレはふと思いついてアン婆ちゃんに聞いてみたくなった。

 願い事、って何をするのかを。

 以前からフラウの花を好きなようだし、妖精フラウとも話ができるのなら、願い事がかなうということも知ってるんじゃないかな。

 三人娘は、お婆ちゃんがいつまでも健康でいられるように、ってお願いするって言っていた。だったらアンはなんてお願いするのか。

 聞こうと思ってアンを見あげてみて、聞かなくてもいいかと思いなおした。

 三人娘を含め、家族をやさしげな目で見守る祖母の願いなど、一つしかないような気がしたから。

「いつまでも、子供と孫達のいい友達でいてね」 

 オレの視線に気がついたアンがオレににっこり笑う。

 もしかしてこの婆ちゃん、オレの目的というか、気持ちを知ってるのだろうか。

 でもまあ願ってもない話だ。

「グエッ」 

 オレは、大きく返事をした。


 テケテケテッテテッテッテ~~ン♪

 おっと、どこかで効果音らしきものが聞こえてきた。

 三人娘たちが友達認定されてレベルが上がったのかな。

 これは明日また、レベルアップを森で試すのが楽しみだ。と思っていると、突然メグがとんでもないことを言い出した。

「話は変わるけど、アニーとエニーとエマ。あんた達は明日っからしばらく外出禁止だからね」

「「「え~~ッ」」」

「あったり前でしょ、人の言うこと聞かないで服を汚してきたんだから。明日は私の手伝いで洗濯するのよ」

「え~、私お婆ちゃんのプレゼントを――」

「それとこれとは話が別だからね」

 三人娘が文句を言うも、オーガなメグの笑顔の前では無力に等しい。

「お婆ちゃ~ん」

 アニーが助けを求めると、あっ、婆ちゃん目を背けた。

 アン婆ちゃんもしばらく寝込んでいてメグたちの世話になったから強く言えないのかもな。

 まあ三人娘は自業自得だな、しばらくメグの言うことをおとなしく聞くんだな。

 ――と他人事だと思っていたら、

「あ~らペンペン、あんたも他人事じゃないからね」

「ゲッ? グッググエ~ゴ(は? オレの毛皮は自前でお前に洗濯なんて頼んでないぞ)」

「あんたが一番泥だらけで帰ってきて、お風呂のお湯よごしたんだから同罪だよ」

「・・・・・・グエッグエゴ~ゴ? (・・・・・・で、オレになにをしろと? )」

 オレは手足の短いペンギンだ。当然洗濯なんてできない。

「あんたは私の傍にいて私をずっと癒すのよ~」

「ずるいあたしも~」

「あ、あたしも~」

 ふざけんな、オレは頬ずりしてくるをメグやデミ押し返すが、

「ああ、この冷たい感じがたまらない」

 とデミは変態的なことを言っている。こいつには逆らえない。

 はあ、レベルアップの検証はしばらく先だな。



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