第十五話 Said エマ
「もうやだ~」
森からさらに奥に入って、山の途中に出たと思ったら動けなくなっちゃった。
なんでこんなことになっちゃったんだろ。
最初は森の入り口で花を探していたんだけど、なかなか見つからなくってどんどん森の奥に入っちゃって、気が付いたら坂道を登ってたの。
そしたら道がすごいズルズルすべって、気をつけなきゃって思ってたら、足を滑らせていて・・・・・・。
すっごい高い崖から転げ落ちたから、アニーちゃんとエニーちゃんが怪我したみたい。大っきな声で泣いている。
私も手足をうったらしくった体中痛い・・・・・・。
それに、見ると服も顔も手足も泥だらけ。これじゃまたママに叱られる。
今度は裸の刑だって言ってた。恐い。
っていうか、こんなダンガイゼッぺキ登れない。
もうここで死んじゃうのかもしれない。
なんでこんなことになっちゃったんだろ。
確かに、初めは私が考えた事だったんだけど。
うちは、この間までアンお婆ちゃんと、リースお姉ちゃん(ホントはママのお姉さんでオバさんなんだけど、オバサンって呼んじゃいけないんだって、なんでかな? )がお病気で寝てたの。
長い間熱が下がらなかったんだけど、デミ姉ちゃん達が森でなんか草を取ってたらそれがよくって、お病気が治ったんだって。
だから今度、ヤミバライだかトコバライだかのお祝いをすることになったの。
うれしい。
それでデミ姉ちゃんは、草を売るとお金になるから、それでプレゼントを買うって言ってた。でも、私そんなお金ないよ。
どうしようかと困ってたんだけど、思い出したの。小従兄ちゃん(ちいにいちゃん)と本を見てたときに教えてくれた事を。お婆ちゃんが好きなお花の事を。
白いきれいなお花。森にあるらしいって教えてくれたの。
リースお姉ちゃんも好きなんだって。
お花の形は大っきな本で見て覚えたからダイジョーブ。絶対見つけてプレゼントするんだから。
・・・・・・って思ってたんだけど。
なかなか見つからないなぁ。
白い花なんて目立つから、すぐ見つかると思ってたんだけど。
一日目は見つからないで帰ったら、ママに怒られた。
服がいつの間にか泥だらけになってて。・・・・・・恐かった。
小従兄ちゃんのパパさんもおじいちゃんも、みんな時々怒られてる。
その時のママはオーガ? みたいな顔してたってよく言ってる。それで余計に怒られてた。
オーガって何? でも恐いものだよね、たぶん。
私を怒ったあの顔がオーガなんだね。
今日は昨日とは違う、川沿いから森へ。
今日は怒られないようにお洋服汚さないようにしないと思ってシンチョーに森へ。
だって、出かけるときにママに見つかって、
「もし服を汚したらあんた裸でいてもらうからね」って言われちゃった。
裸の刑はよく分からないけど多分、とっても恐ろしい刑だと思う。
気をつけなくっちゃ。
と思ってたら、森に来た所でアニーちゃんとエニーちゃんに見つかっちゃった。
「なんで二人は付いて来るの? 」
「だってメグお姉ちゃんに見張っててって言われたもん」
「エニーも言われた、あたし達にはエマちゃんを見張るギム? があるんだよ」
聞いたらママに見張りを頼まれたんだって。
ママ酷い。私にジユウやジンケンはないのか、って言いたい。ジンケンってなんだかわかんないけど。
もうこうなったら、二人を味方に引き込むしかない。決意した私は二人に秘密を打ち明ける。
「う~ん・・・・・・じゃあ、内緒だよ」
「え、う、うん」
秘密のプレゼント大作戦(作戦名は今考えたよ)を二人に打ち明ける。
「うん、アニーもやる。プレゼントダイサクセン」
「えっとエニーもやるよ、そのダイサクセン」
二人は意外とノリノリで私を手伝ってくれることになった。
二人もお婆ちゃんが好きみたい。
三人で探せばすぐ見つかるはず・・・・・・って思ってたけど。やっぱりお花は見つからない。
二人も私を疑わしそうな目で見てくる。
探しているうちに、どんどん森の奥に入っちゃうし、エニーちゃんは枝にぶつかるし、いいことが無い。
ときどき、アニーちゃんやエニーちゃんが「足が痛い」とか、「お腹すいた、帰りたい」とか行ってくる。
だったらついて来なければいいのに。
私だって早く帰りたい。でも花が見つからないとプレゼントも出来ない。
そのたびに「もうちょっとだから」とか「この先にあるよ」といってなんとか
宥める。
でもホントに見つかるのかな。だんだんと不安になる。
そしてなんだか細い坂道に差し掛かったら、今度はアニーちゃんが足を滑らせて・・・・・・。
見上げると三人が転げ落ちてきた崖が目の前にある。とっても高いところから落ちたみたい。しかもこんな断崖絶壁、上れそうも無い。
大怪我したのかな、アニーちゃんもエニーちゃんも泣き出しちゃった。
もう、泣きたいのはこっちだよ。
服は汚すし、お花は見つからないし、空は暗くなってくるし、帰り道もわからなくなっちゃった。
体のあちこち痛いし、私たちはここで誰にも知られすに寂しく死んじゃうんだ。
そう思うとホントに悲しくなる。
ママ、お婆ちゃん、ごめんね、サキダツフコウをお許しください。サキダツフコウってよくわかんないけど、なんかこういう時に言うらしい。
眼に涙が浮かんできて回りがにじんだとき、天使が舞い降りてきた。
シロクロのパンダみたいな天使だった。
「ペンペン・・・・・・?」




