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異世界ニルヴァーナの物語

異世界風にリメイクした猿蟹合戦は不思議に満ちた物語だった件

作者: HOT-T

久々に書きました。

夫が妻達に物語を聞かせる→妻達がうろ覚えのまま、もしくは無理にリメイクして子ども達に話す→子ども達のツッコミから変な方向へ、のパターンです。

 ある日のお昼ご飯後。

 あたし、レム・アンジェリーナは3歳になる可愛い我が子達にお話を聞かせてあげることにした。

 

 長女のケイト。

 次女のリリィ。

 三女のアリス。


 あたしが産んだのは長女のみだが他の2人だって可愛いレムの子達だ。


「それじゃあ今日は『猿蟹合戦』よ」


 我が家では異世界人である夫から聞き取りした童話などを子どもに聞かせてあげるという習慣がある。

 この猿蟹合戦はいつか聞かせてあげようと思っていた。

 レム家の家長として、ばっちり決めてあげましょう。


「むかしカニがパンを持って歩いていると……」


 本来聞いた話ではライスボールを持っていたけどやはりここはこの国の文化に合わせたアレンジが必要だと思ってパンにしてみたわ。


「ちょっと待って!カニがパンを食べるの!?それってモンス……」


「あのねケイト。モンスターじゃありません!何でもモンスターのせいにしない!!」


 長女は不思議な事があるととりあえずモンスターの仕業にしてしまう癖がある。

 まあ、確かにパンを食べるカニってどうかと思うけど


「ケイト、そういうものだって割り切るのよ」


「う、うん……」


 次女に諭され少しむくれる。

 やだこの子ったらかわいい。


「ねぇねぇ、どんなパンかな。美味しいのかな?リリィ姉どう思う?」


 三女のアリスはのほほんとしておりパンの種類を気にしている。


「そうね。私が思うにスコーンじゃないかしら。干しブドウ入りの」


「ぶどうだぁ~」


 何この微笑ましい光景。


「パンを持って歩いているとずる賢いサルがやってきて拾った果物の種と交換しようと言ってきました。カニは最初は嫌がったが、『パンは食べてしまえばそれっきりだが、果物の種を植えれば成長して果物がたくさんなりずっと得する』と猿が言ったので、カニはパンと果物の種を交換しました」


「ちょ、ちょっと待って。蟹は頭が悪いの!?」


 次女が眉をひそめながら聞いてきた。

 うん。あたしも最初い聞いた時思った。

 ただ、カニが賢過ぎてもお話は進まない。


「リリィ、そういうものだって割り切れってあんたさっき自分で言ってたじゃない」


「でもケイト……果物が出来るまでどれくらいかかると思ってるの?」


「それはそうだけど……」


「くだものだぁ!」


 何かアリスひとり精神年齢が低めなに見えるのが気になる。

 この子達は同じ日に生まれており実質三つ子の様なものなんだけど……

 いや、上の2人がちょっとおませちゃんなだけなのかもしれない。

 

 そして話は進んでいき中々大きくならないのでカニが脅しをかけるシーンに突入する。


「早く出ないとこのハサミでちょん切るぞ!芽はあっという間に大きな木に成長しました」


「モンスターだわ!!トレントよ!!!」


 ケイトが叫ぶ。


「待って。このカニにも注目しましょう!カニが『成長魔法』をかけたかもしれない」


「それじゃあやっぱりカニはモンスターじゃないの!!」


 本当におとぎ話って不思議なことだらけだと思う。

 ただ、この歳からそれを気にしてたら親としては先が思いやられるのだけど……


「わーい、木がおっきくなったぁ」


 手を叩いて喜ぶアリスを見ていると何だかホッとする。

 更に話は進み、物語はひとつの山場を迎える。

 ずるがしこしサルがカニに果物を投げつけるシーンだ。

 しかし、ここである重大な欠点に気づく。

 

 夫から聞いた話では『カキ』という異世界産の果物なのだがこの世界にそれはない。

 そこで敢えて果物としておりあまり深く考えず『ブドウ』に設定していた。


 だけどよくよく考えればブドウを投げつけられても大怪我は負わない。

 どうしよう。すでに『ブドウ』と言ってしまった。

 サルには『へっへっへ、柔らかくて美味しいぜ』とか言わせてしまった。


 こ、こうなったら……


「腹を立てたサルは火炎弾を投げつけました!」


 サルに魔法を使わせてみた。


「ちょっと待って!やっぱりモンスターよ!?ねぇ、リリィ!」


「ええケイト。間違いないわ。攻撃魔法が使えるだなんてただものじゃない!!」


「かにさんかわいそう……」


 泣きそうになっている三女を長女が励ます。


「大丈夫よアリス。恐らく猿がこれだけ強いなら蟹も泡障壁とか使えるはずよ」


「問題は猿の魔力がどれだけ高いかね。水系の障壁だから炎属性には有効だけど」


 なるほど。確かにいち魔法使いとしてその辺は考察の予知があるわね。

 何せ種から急成長させて気にしてしまう様なカニだ。

 やはりある程度の実力者である事は想像に難くない。


「よし!みんな。カニさんを応援しましょう。サルの魔法になんか負けないわよ!!」


「「「おーっ!!」」」


 この後、あたしは娘達とサルとカニがどの様なバトルを展開するか話し合った。

 結果としては激闘の末、カニが片腕をもがれながらもサルに接近戦を挑み強力な一撃を叩き込んで勝利。


「「「やったー!!!」」」


 喜ぶ子ども達。

 その様子を見ていた夫がぼそり。


「俺が教えた猿蟹合戦と違い過ぎる!!」

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