三 謀計
王様はそんなカラボスを知る、数少ない古き友人でした。
そのためお祝いには当然のようにカラボスを呼ぶこととしました。
侍従から「また仙女様の不興を買うだけでは」といさめられようと、頭を肯ずることなく、むしろ自ら筆をとり、カラボスに当てた招待状を認めました。
従者はそれを受け取ると、馬にまたがりいさんででむかいました。
従者が森の奥深く、カラボスの現れる茂みに近付くと、一人の醜い老婆とすれ違いました。
「もし、そこを急ぐ旦那様」
「お前はいつぞやの占い師」
「もしや、カラボス様へのおつかいでは」しわがれ声は不思議なことに、一言ごとに美しくなってゆきました。
「いかにも」
「カラボス様はお難しいお方。
わたくしが取り計らって差し上げましょう」
「ならぬ。
私はこれでも王の名の下にカラボス様にお目通り願う者」
「ええ、ええ、そうであればこそ。
カラボス様は見知らぬお顔をお嫌います。
王の名に曇りを作らぬためにはどうぞこの婆に」
「しからば、間違いなきよう」
「ごもっともで」
従者は老婆の声がついには澄んで、あるいは子供のように甲高くなって響いていることに気が付きませんでした。
従者の二つの目は次第にまどわされ、両の目がそれぞれの外向きに景色を眺めても、不思議と老婆の姿だけは、真っ直ぐに像を結ぶのでした。
従者の馬は自ずから城へと歩みだしました。
従者は王様に、カラボスが参列するという返答を、ほがらかを持って伝えました。
一人老婆は森の中、王様の書状を一握の灰に変えていました。
聞く人皆が耳をふさぐような、げっげ、げっげという笑声を上げながら。