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  作者: 888-878
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一 祈り

 「どうしていつもわたしなの」

 「どうしていつもわたしばっかりなの」

 「どうして」

 「どうして」

 「どうして」


 むかしむかし、丸い山脈に囲まれた、緑ゆたかな森の奥に、大きくきらびやかなお城がありました。

 お城に住まう王様とお妃様は、髭の立派な大臣や、たくましい騎士団、優しく洗練された侍女達、そして時には森から訪れる仙女達に囲まれて、なに一つ不自由のない暮らしを送っていました。

 そんな王様とお妃様にもただ一つ叶わないことがありました。お二人はいつまで経っても子宝に恵まれませんでした。

 

 ある時、旅の占い師がお城を訪ねました。

 黒い老女の卜占(ぼくせん)があまりに騎士や侍女の素性を言い当てるのを聞きつけ、王様はたわむれに占い師に尋ねてみました。

 「子宝がさずかる日が来るのだろうか」

 しわがれた声はゆっくり、こう答えました。

 「次の新月の夜、お妃様ただお一人で、森の果て、西の湖のほとりをお訪ねなさるが宜しいでしょう」

 「無体をいう。おばあさんは、たわむれ(ごと)にも長けているようだ」

 「たわむれではございませぬ」

 占い師はそう笑うと、お城を後にしました。

 

 王様からその話を聞いたとき、お妃様は笑い出しました。つられて、王様も笑いました。

 しかしお二人の笑い声は、新月が近付くに連れ、次第に力のないものになりました。

 新月の夜、王様は果実酒をたくさん飲み干すと、さっさと御寝所に向かいました。

 お妃様は侍女に身をやつし、そっと城門に近付きました。

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