閑話 振った彼女の事情
今回は、1話の冒頭にて有希を振った彼女の本当の事情のお話
※これは、物語最初の告白シーンよりもさらに少し前からのお話……
私、卯月 遥 は悩んでいた。何にって?彼(?)こと天使有希くんの事。彼は、いつだって私に優しくしてくれる。その優しさがすごく心地良いし嬉しいと思ってる。そして、有希くんが私に対して好意を持ってるんだなっていうのもひしひしと伝わってくる。そして、それは私にとってもすごく嬉しいこと。だって私も有希くんの事が好きだから。けれど、この思いが叶うことはない。私と彼じゃ釣り合わないんだ。それはもちろん、私のほうが下という意味で。
「おい、遥。明後日はいよいよ結納相手とのお見合いの日だぞ」
「……はい」
なんで私はこんな家に生まれてしまったんだろう。もし、生まれ変われるのなら普通の家に生まれて、今度こそ有希くんの愛情を素直に受け入れられるようになりたいよ……
そしてそんな悩みを隠して登校した次の日だった。
「遥さん今日の放課後、屋上に来てもらえませんか?」
「……わかった」
私は、有希くんに声をかけられ、つまりながらもなんとか返事をした。これが何を意味するか私はわかってるし私の返事も決まってる。でも本当にどうして、このタイミングなんだろう。泣きたい気持ちをこらえながら放課後まで過ごした私は緊張感で押しつぶされそうになりながら屋上に向かった。そこには、既に有希くんが待っていた。
「卯月 遥さん、僕はあなたのことが好きです。こんな僕だけど付き合ってください!」
私はそう言って手を差し出してくれた有希くんに、
「ごめん、有希とは付き合えない」
「有希のこと、男として見れないんだ」
っていう絶対に有希くんがコンプレックスとして持ってるであろうことを理由にあげて振った。そして悲しそうに「そっか」って言って、それでも笑顔で私を見て屋上からいなくなった有希くんが学校から出るのを見てから、私はひと目をはばかることもできずに泣き崩れた。
「有希くん……ごめんね……本当にごめんね………大好きだよ……」
彼に届くことのない私の本心の気持ちを吐き出しながら私はその場から動くことができなかった。そうすると、私の親友である榎本 美夏が心配して屋上に来てくれた。
「遥ー……遥!?どうしたの?なんで泣いてるの!?有希になんかひどいことされたの?」
「ううん、ひどいことをしたのは私の方だよ……」
「それって?」
「私が……有希くんのことを振ったの」
「………え?なんで?遥だって有希のこと好きって言ってたじゃん!?」
「うん……だけどさ、美夏は私の家の事情知ってるでしょ?」
「え……もしかして、もう来たの…?」
「うん、明日には会うことになってる」
「そんな……それじゃ遥が浮かばれないじゃん!!」
「でもこれが卯月家に生まれた私の宿命だから」
「遥……」
こうして私の初恋は実ることなく終わりを告げた。
有希がこの事実を知るのはまだまだ、先の話…………
話が脱線してしまいましたが、今作はバッドエンド無しの作品になる予定ではあるので今後にご期待くださいませ!
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作者がとても喜びます!!