失恋、それは新たな出会いの始まり
「ごめん、有希とは付き合えない」
「ど、どうして……?」
「私は、有希の事男として見れないんだ」
「そ、そんな……」
「ごめんね……」
そう言って立ち去る初恋の相手を僕はただ、呆然と見送ることしかできなかった。
僕は昔から、男女に関わらず男として見られないことが多かった。ただでさえ中性的、むしろ女の子よりの顔にボブよりも少し長めの髪、それだけでも女の子に間違われるのに極めつけは身長である。僕は高校2年生になった今でも152cmしかない。それに華奢な体型、そんな僕の事を男だと思う人は、特に初見の人ではいなかった。まあ、ここには名前も大きく関わってくるんだけど……
そんな僕の初恋は、男として見れないという痛いほどに自覚していることを理由に始まることなく終わりを告げた。そして僕は、失意のまま家に帰る。
「有希、おかえりなさい。今日はどうだっ……だめだったのね?」
「うん、男として見れないって言われちゃった」
「そう……ごめんね、私の家系の遺伝が濃くなったばっかりに」
「こればっかりは仕方ないよ、まあ仕方ないで片付けたくはないけど」
僕はお母さんに告白の結果を報告した。お母さんは謝っていたけれど、こればっかりはお母さんのせいでは全くないと自信を持って言える。
僕のお母さん、天使 有夏の家系、つまり天使家は女系の家系で先祖代々ずっと女の子しか生まれてこなかった。また、その姓に違わず天使家の人間はみんな美形で産まれる。なのに、なんの因果か僕は天使家の血を受け継ぎつつ天使家初の男として産まれたのだった。まあ、それを理由にするのは言い訳にしかならないので今日も僕は自分磨きに勤しむ。
「母さん!今日も行ってくるね!」
「今日は何をしに行くの?」
「今日はバスケをしに行ってくる!」
「気をつけてね?」
「うん!」
こうして僕は傷心を隠しながら社会人バスケチームである西京エンジェルズの試合会場に向かった。
「はぁ……どこかに有望な子、いないかなぁ」
私、Vtuber事務所『Colorful Palettes』のマネージャー、愛川 瑠衣は第1期生の『白金 恋』以来なかなか所属Vtuberの芽が出ないことに頭を抱えていた。でも、悩んでも仕方ないので私は趣味であるバスケ観戦にアリーナに向かっていた。
「今日の試合はー、天皇杯の2回戦っと。んーと『西京エンジェルズVS桜世ジョーカーズ』ねぇ。まあこのカードなら桜世ね」
西京はパッとしないけれど、桜世は日本1部リーグで3位につける強豪なので順当に桜世が勝つんだろうな、なんて思いながら会場に着くと大きなざわめきが聞こえてきた。その声に驚きながらも会場に入るとスコアボードに記載されていたのは……
「西京48-23桜世」
という文字だった。全く理解できなかった私は先に会場に来ていた友達のもとへ急いだ。
「瑠衣!遅いよ」
「ごめんね、お待たせ!……ところでこの点差はどうしたの?あの桜世がこんなえげつない点差付けられるなんて初めて見たんだけど……」
「私もびっくりしてるんだけどね?西京のベンチの5番の子、見える?」
そう言われ、指を差されたほうを見ると明らかに場違い、いや性別違いな子がユニフォームを着てベンチにいた。
「あの子がどうしたの?」
「あの子、天使有希くんっていうらしいんだけどあの子がここまでで既に32得点をあげてるの!」
「え!?」
「私も最初びっくりしたんだけどね?まあ見た目にが1番なんだけど」
「そうだ……ね!?」
「ん?どうしたの瑠衣?」
「み、見つけた!才能の原石!」
「え?どゆこと?」
「今日は来て正解だったよ!!」
「まあ瑠衣が喜んでるならそれでいいんだけどね?」
私は、彼(?)を絶対に自分の事務所に引き入れるべく行動を開始するのでした。
これは、そんな私と……こんな僕の物語