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シスターに料理を頼まれる

「そういえば、リオ君は料理はできますか?」


「はい。シスターほど美味しくは作れないかもしれないですけど、簡単なものならよく自分で調理していました」


 以前シスターの手でふるわれたウサギ肉のシチューの味を思い出し、僕は謙遜まじりにそう答えた。その答えにシスターは少し顔を赤らめながら頬に手を当ててにこりと微笑む。


「ふふ、リオ君はお上手ですね。では今晩の料理はリオ君にお任せしてもいいですか? 食材はあるものを好きに使ってくれて構いませんから」


「ほ、本当に簡単なものしか作れませんよ?」


 まさかシスターから夕食の料理すべてを任されるとは思っていなかった僕は、慌てて確認の言葉を口に出していた。


 てっきり、ちょっとした手伝いをさせられるくらいだと思っていたのだけど。


 でもそんな僕の動揺を特に気にする様子もなく、シスターは変わらぬ笑顔で言った。


「構いませんよ。私たちは王侯貴族ではないのですから。簡単な料理でも美味しく食べられたら、それだけでじゅうぶん幸せでしょう?」


 なるほど、確かに……。


 シスターがそういった考えなら、もちろん僕に異論なんてあるわけがない。


「分かりました。では食材をいくつか使わせてもらいます」


 承諾した僕を満足げに見つめた後、それではお願いします、と言ってシスターは去っていった。


 といっても本当に簡単な料理しか作れないんだけどね……でもシスターに任せてもらえたんだし、手がかかってなくともせめて美味しく仕上げたい。


 となると得意の野菜炒めかな……失敗することはまずないし。


 幸い、味付け用の調味料は最低限そろっていた。


 夕方になってから僕は調理に取り掛かる。


 台所にはすでにフライパンが置かれてあった。シスターが用意してくれたのかな? ちょうどいい、これを使わせてもらおう。


 僕はまず包丁で野菜を一定のサイズに切り、油をひいたフライパンに放り込んでまとめて焼いた。


 冒険者の頃は焚き火に直でフライパンを乗せたりしていたけど、ここは調理用の設備が整っているからありがたい。


 鼻歌まじりに野菜を熱で炒める。久しぶりの調理だけどフライパンの手さばきは衰えていない。僕がフライパンを傾けるたび、黒い鉄板の上で野菜たちが軽やかに踊る。ぱっぱっと調味料をかけてすこし混ぜれば完成だ。


 あとはお皿に綺麗に盛り付けてできあがり、と。ちょっとだけ味見したけど、味付けも特に問題なかった。


 僕とシスターはいつものテーブルについて食事前の口上を述べた。僕は簡易的なあいさつの言葉を、シスターは神への祈りを、それぞれ口にする。


 さっそく自作の野菜炒めをひと口食べてみる。うん、火もちゃんと通っているしうまく作れたと言ってよいだろう。シスターも美味しいと言ってくれた。


 これからは、僕ももっと料理を手伝わせてもらおうかな。それともう少し作れるものの種類を増やしたい。こうしてシスターに食べてもらえるのは嬉しいし。


 冒険者をやっていたころ、仲間のために料理を作ったことはもちろんあったけど、こんな気持ちにはなれなかったな……。

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