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夢のような一夜が明けて

 僕は気だるいまどろみの中からぼんやりと覚醒した。


 次第に意識が鮮明になってくる。


 そしてようやく僕は思い出した。昨夜この部屋で、このベッドの上で、何があったかを。自分の頬がどんどん熱くなっていくのを感じる。


 だって、あのシスターと……カミラさんと……。


 僕は体の向きを変えて周囲を見渡す。今、このベッド、というかこの部屋にいるのは僕一人だけだった。


 なんというか、昨夜のことは夢だったのではないかと思えてしまう。だけど自分の中にある鮮明な記憶がそれを否定している。


 ともかく、僕も起きようとベッドから立ち上がった。


 でもカミラさんと会った時、どんな表情をすればいいんだろう。


 なにぶん初めてのことなので、こういう時にどうふるまえばいいのか分からない。


 しかしいつまでもこの部屋から出ないわけにもいかない。そろそろカミラさんが朝ごはんを作っている時間のはずだ。


    ◇◆◇◆◇


「おはようございます、リオ君」


「お、おはようございます……シ……カミラさん」


 以前までと同じようにシスターと口にしてしまいそうになったけど、あわてて名前で目の前の女性を呼んだ。


 カミラさんはそんな僕をいつもの柔らかい笑みで見つめている。


「リオ君はお皿の準備をしていただけますか?」


「はっ、はい! ただいま!」


 なんというか、カミラさんの態度は今までと同じで僕は拍子抜けしてしまう。


 やっぱり、昨日のことは夢だったのではないだろうか。僕がカミラさんのことを、シスターではなくカミラさんと名前で呼ぶことを除いたら、ここにあるのはいつもの光景と何も変わらなかった。


 カミラさんは昨日のことが幻のように、入浴を済ませたのか身なりを清潔に整え、いつものシスター服をまとっている。もちろん聖印らしきものも首にかけられていた。


 そういえば、僕も朝食を終えたらお風呂に入ったほうがいいかもしれない。昨日、いろいろなことがあったわけで……。


 また昨夜のことを考えてしまいそうになり、頭に血がのぼるのを自覚する。


 いけないいけない、朝からいったい何を考えているんだ僕は。


 言葉すくなに朝食をとる僕。カミラさんも特に何かを言うこともなく、朝ごはんの時間は静かに進んだ。僕はやがて最後のパンを食べ終わる。


「ごちそうさまでした、カミラさん」


「はい、リオ君。では今日も一日、よろしくお願いしますね」


「はい。お任せください」


 今日もカミラさんのためにいろいろなことを頑張ろう。まずは今使った食器の片付けからだ。


 本当に昨日の出来事は夢か幻だったのかな、と思い始めた僕の側にカミラさんが近づいてくる。そして僕の耳に口を近づけてそっとささやいた。


「今夜も、いっぱい気持ちいいことをしてあげますからね」


「……!」


 僕の側から離れたカミラさんは一瞬だけ妖艶な笑みを浮かべていたけど、すぐにいつもの慈愛あふれる顔に戻っていた。カミラさんは呆然とする僕を残して去っていく。


 ……やっぱり夢じゃなかったんだ。僕は顔が真っ赤になっていることを自覚しながら、しばらくその場に立ち尽くしていた。

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