ぷろろーぐ
青い空に白い雲。吹き抜ける風が心地よい爽やかな朝だった。
厩舎で熱心に愛馬の世話をしている夫、オルランドにルチアは勇気を出して声をかけた。
「オ、オルランド様! 一緒に遠駆けに行きませんか?」
オルランドはルチアを一瞥すると、吐き捨てるように答える。
「興味ない」
「遠駆け、お嫌いですか? 馬を大切にしてらっしゃるし、これだ! と思ったんだけどなぁ」
ルチアがしゅんとしても、オルランドは容赦なくおいうちをかける。
「遠駆けにじゃなく、お前に興味がない」
ルチアは黙りこみ、自身の胸元に視線を落とした。そこにある犬の肉球のような形をした痣……はまったく痛まない。
(あれ? 肉球痛くならないけど、シンちゃん寝てるの〜? 寝てても嘘には反応するって話だったじゃないの!)
フィオレント王国ズィーカ領を治めるオルランド・ズィーカ公爵の妻であるルチアには不思議な力があった。
神獣より授かった《嘘がわかる》という特殊能力だ。
誰かに嘘をつかれると、胸の痣が焼くけつくように痛み、天からその相手の心の声が降ってくるのだ。
が、いくら待っても天からの声はない。
(ということは、これは嘘偽りのないオルランド様の本音……)
「はぁ、前途多難ね」
ルチアはぼやいたが、オルランドはもう彼女を見向きもしていなかった。彼の笑顔を見ることができる女は、彼の愛馬であるミレーユだけだ。
気のせいだろうか。ミレーユがふふんと自慢げな笑みを向けたような気がした。
ヒーローのオルランドは昔の少女漫画風ツンデレキャラです。
オルランドは国境付近に広大な領地をもつという設定なので、辺境伯とするのが正しいのかも知れませんが……呼びにくいので公爵にさせてください!
時代設定は中世、封建社会なイメージ。まぁ、ゆるゆるですがお許しください。