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=一夜の演奏~湿り気の風と真新しい風が交差する温度~=

-2-

「おう~、いらっしゃい~。」

「あっくん久しぶり♪」


君がいなくなってから2週間が過ぎ去った…。

「相変わらず、暇そうね~」

「おいおい。閉店間際に来てそんなこと言うのか?」

「ユキはとりあえず、カシグレかな?」

「うん。お願いします~。」

…そう言えばこの二人この前の飲み会で話してなかった

             ……君の話には参加してなかったね……

「好きなとこ座っていい?」

「どうぞ。どうぞ。暇なお店なのでご自由な場所にお座り下さい。」

「じゃ~いつものカウンターにする~」

ユキはいつもの金魚が水槽が目の前に見えるカウンター座ってた。

…ユキもアークも皆で集まる飲み会では口数が少ない。

 君が独り語りだすと極端に口数が減るね‥…

「どうぞ。」

「ありがとう~でもあれだね。」

届けられたカシオレを一口したユキが続ける。

「相変わらず、話が急にだよね」

「まぁな~いつも通りと言えばそれまでなんだけどな…」

「うん。この前なんか久しぶりのメールが『起業します。あなた達を雇いたいと考えてます』だしね~」

「あ~…そうだね~」

「お給料未定ですし、ユキは漫画とか興味ないし…誘われる方が意味不明なんだけど~。」

「それはいつも事だな。あいつもう所沢行ったのか?」

「ん~そうみたい。見送るほどことでもないしね。」

…私はお見送り行ったよ…

「確かに店閉めていくほどでもないしね。」

「ゼッタイ奥さんにも話してないよね……あれ。」

「通常運転だな。あいつは、説明が下手なんだよな。」

「下手というか…中身がないんだよね。」

「それはそうとお客様、今宵のお品は『豚時雨丼の千切り柚子皮と白髪ネギのせ』でよろしいですか?」

「おぉ~美味しそう~お願いします。」



~間奏~

私たちと君は、

時間を同じく過ごしていたはずなのに

いなくなっていたね。君はいつの間にか。



=一夜の演奏~湿り気の風と真新しい風が交差する温度~=


「ごちそうさま。今度はラーメンたべたないなぁ」

「うちは豚丼専門店だぞ。気を付けて帰れよ~。」

「あっくん、ありがとね~」

アークは背中を見せて店の中に、ユキは私とは逆方向に背中を向けた。

ちょうど、このお店がユキと私の家の中間地点になっている。

なので、今夜はお開きとなり、それぞれは背中を向けたのであった。


独りで帰る道は、薄暗く不安がいっぱいであった。

私は、ただの友人であるけど、君のことがとっても心配である。

高校で同じ時間を過ごすときにはそんなことは感じなかった。

面白おかしく3年間を過ごしていたつもりであった。

君が美術部をやめて、弓道部に来てくれた時私はうれしかった。

弓道は、基本男女混合のチームでのエントリーができないけど

高校で初めての5人一組の大会に出られるのでうれしかった。

これまでに紹介したメンバーはみんな、高校にあったメンバーである。

アークは、弓道部ではなかったが、たまにおしゃべりとかしたし。


私の記憶の中で、楽しかった時間が蘇ってくるようだった。

君たちは、せっかく5人そろったのにまともに練習をせずによく遊んでいたね。

それでも、今ここで会えないメンバーを含めて私はいい出会いだっと思っている。

普段の君は大人しかったように見えたよ。

弓道の練習では、「落ち前」「落」と呼ばれるチーム内で4、5番目に引く順番でも

静かに引いていたね。でも、今思うとそれ何かが違ったのかもしれない。

君は、きっと1番目に引ける「大前」がよかったのかもしれないね。


今夜は色々な事を思い出す。

私が何か思い出すときにはいつも雨が降り始める事が多い。

夜空を見上げると、さっきまで星が少し見えていていたのに

今は雲に隠されてている。


そうだね。君との再開もこんな雨が振りそうな夜空ったね。

私は、高校卒業後はなんとなく進学をして、就職をして

あっと言う間に月日が過ぎていた気がする。

そして、偶然駅で君と再開したね。

私は君をびっくりさせようと『私、結婚するんだよ。』と言ったのが

ちょうど2か月前。君が東京から一時帰郷したときだったね。

でもびっくりしたのは私だった。

だって『俺、子供が生まれるんだ。』って言ってきたんだもん。

『結婚してたんだ。おめでとう』『いや。まだ席はいれてないんだ。』

『えっ?どう言うこと?』

その時は、しとしと雨が降り始めて…。


今も同じように雨が降り始めて…。


傘を持ってない私は、降ってきた雨に。

『そう言うことなんだよ』君は恥ずかしそうに下を向きちゃんとした返事を返してこなかった。

『ええと…おめでとう?でいいんだよね。』私は、…できちゃった?…なんて言えずに当たりさわりのない言葉を投げかけた。

『ありがとう。あとこれで体拭きなよ。風邪ひいちゃうよ。』

『あっくんが店を開くみたいだから、今度そこでゆっくりはなそうよ。』

君はそう言うなり、私にハンカチを渡すと迎えに来た家族の車の元に走り去っていった。


私は今もそのハンカチを大切に持っている。

しみったれた気持ちになって、今晩みたいに雨が降ってきた時に

わざと少し濡れた髪をハンカチで拭こうと…。

…でも、今日の私は雨に打たれているはずなのに…



=間奏=

君たちと私は

同じ時間を過ごしていたのに、

いつの間にかいなくなっていたね。君たちは。


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