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血の契約  作者: 吉村巡
78/148

77:不可抗力の出来事(前)

「レイっ!!ファラルっ!!」

 アルの絶叫のような声が聞こえる。

 その中には戸惑いや疑問、苛立のようなものも含まれているのを感じ取れた。

 だがレイは立ち止まる事無くファラルと共にゆっくりと、だが迷い無い足取りで混沌の中を進んで行く。

 その光景を見ていた殆どの者が恐怖と畏怖に支配され、正気を保っていられる者は必死で被害の拡大を抑えつつ周りの者達を守っていた。


***************



 窓から差し込む夕日が眩しい程に部屋の中を照らしている。書類や資料だらけの机にペーパーナイフと空になった封筒があった。そして、椅子には背筋を伸ばして手紙を読んでいるアルの姿があった。

「馬鹿なのか?アイツは。いや、これは不敬に当たるな。だが、もう少し考えて行動しないのか?」

 手紙を読み終えて机の上に無造作とも言える動作で手紙を置くと、片手で頭を抱えた。ぶつぶつと呟く声は呆れを含んでいた。

 レイの頼みで学園に兵を置いているが、その内増員の必要があるかもしれない。

「シオンの我がまま、か」

 恨めしそうに手紙を一瞥すると溜息を一つ吐いた。アルの悩み事は尽きる事が無かった。



「・・・・・・」

 レイが不意に移動教室の途中で立ち止まった。マリアがレイの異変に気付き、心配そうな顔で立ち止まる。レイの様子は明らかにおかしかった。

 目を大きく見開き、片手が壁を掴んで体を支え、もう一方の手は頭を抑えていた。俯き、顔を歪ませ、息をすることすら忘れているように見えた。

 マリアがレイに触れようとした瞬間、マリアの手は頭を抑えていたレイの手に弾かれた。

 軽く肩で息をしながら、マリアを見つめるレイは怒っているようにも見えた。額には軽く汗が滲んでいる。

「レ、レイ?大丈夫?」

 恐る恐る声をかけると、コクリと頷き床に落とした教科書類を拾い始めた。そして、拾い終えた頃にはいつも通りのレイに戻っていた。

「本当に、大丈夫?保健室に行った方が・・・」

「平気。ちょっと面倒な事が起きるだけだから」

「起きる?」

 起きた、では無いのか?と思いはしたがレイの態度からそれ以上言葉をかけるのは躊躇われた。

「覚悟しておいて」

「え?」

 唐突なレイの言葉には何時も戸惑ってしまう。そして、今回も何が言いたいのかマリアには分からなかった。

「覚悟、しなくちゃいけない。遅かれ早かれ、これは来るべき事だった。だから、私もファラルも気にする事は無い。けど、マリア達にもアル達にもこれからの事を覚悟してもらわないと・・・」

「レイ?」

 話しだしたレイは何時もと何処か違うように見えた。

「マリアにだけ言っておく。1ヶ月以内に私の言う事が分かると思う。だから、覚悟しておいて」

 意味深なレイの言葉にマリアは何も言えなかった。言葉が見つからなかった。

 何を覚悟すれば良いのか。

 それがどれほどの事なのかは分からないし、来るのかどうかも分からない。

 結局、マリアはそれ以上その事について聞く事が出来ず、レイもその事について語る事はなかった。


 

 レイが不可解な事を言って2週間が経った。マリアは何も起こらない日常にレイの言葉を深く考えなくなっていた。

「はい、注目」

 ヘルマン先生が手を叩いて、注目が先生に集まる。

「今週、というか明日からなんだけど、校内に人が来ます。今週最後までの4日間、学園の調査をするみたいだから、困っているようであれば協力しましょう。礼儀も忘れないように」

 先生の報告は簡単なもので生徒の大半は古くなった所の工事か、勉強の様子を見られるだけだろう、と思っていた。だが、レイだけは何故そんな事が行われるのか見当がついていた。

 そして、それによって起こる事がレイにどんな事をもたらすのかも、理解していた。

(明日ではない。まだ、そんな予感はしない)

 レイは自分の勘を信じていた。外れた事も無いのでこれからも信じ続けるだろう。

 マリアに「覚悟しておいて」と言ったあの日に、今日、こうなる事は分かっていた。神がある会議の様子をレイの頭に大音量で流したせいだ。

 無理矢理つながれたせいで制御が一瞬緩くなった。マリアに触れられる前に片手だけに意識を集中させたのは我ながらよく咄嗟に判断出来た、と思う。

 もしも制御が緩いままでマリアがあの時レイに触れれば暫く魂が抜けたかのようになっていただろう。今現在、レイの隣で話を聞いている、とは断言出来ない状況に陥っていただろう。

 流石に、それは母の言葉を守っているとは言えない。

「今週、か」

 レイの呟きはとても小さく、その言葉を聞く者は誰もいなかった。



「何で学園に人が来るんだろう?」

 セイジの言葉に全員の意識がそっちに向いた。

「私達の方も、先生がそう言ってた」

「普通科も?魔術科もそう言われたわ」

 マリアとサラが互いに報告し合う。

「でも、何の為に来るのか全く分からない」

「そういえば、言われなかったわね」

 深く考えていなかったのか、セイジの言葉に全員が考え始める。

「改修工事とか、学力調査とかなら先生がそう言う筈だし」

 マリが呟いた一言に、疑問は深まった。

「調査は調査でしょう?相応しいかどうかの」

 興味無さげに呟いたレイの言葉に全員が、その続きを聞いて来る。

「ただの推測だけど、第二皇子が学園に来たいとでも言ったんじゃない?前に、学園生活が楽しそうとか言ってたし。あの第二皇子殿下ならやりかねない」

 レイの冗談とも本気とも取れる口調はこんな時に困る。どう反応していいのか分からなくなるのだ。

「でも、寄越すならマシな人間を寄越せ、とは思う」

 苛立を含めた声でそう呟くとレイは読み終えたらしい本を閉じて立ち上がった。

「何処か行くの?」

「うん。野暮用。終わったらそのまま帰る」

 鞄を持って部室を出る間際にそう言い残してそのまま部室を出て行った。

 部室を出たレイは、近くの窓を開け、そのまま飛び降りた。人が居ない事は既に確認済みだ。体重を感じさせない着地をし、鞄から小型の折りたたみ式ナイフを取り出す。

 ナイフの刃を出すと、右手でナイフを持ち左手を刃先に近付ける。少しだけ勢いをつけて左手に刃を深く突き立て、引き抜く。鮮血が溢れ出し、地面に染み込む。

 暫くしてレイが刃を突き立てた所を舐めると、血は止まったが、傷口は開いたままだ。

 ナイフをたたみ、また鞄に入れたレイは校内を歩き回り、人気の少ない所で傷口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返す。

 それは普通科の校舎、武術科の校舎でも行い、魔術かの校舎では特に念入りに行われた。

 最初に血を落とした所に戻った。学園を一周したのだ。少しずつ流した血は流した回数が多く、普通は立って歩く事さえ出来ない程の貧血状態だ。それでもレイは平然と立って歩いていた。

 また左手の傷を舐めると、今度は傷が消えた。目を閉じて、血を流した所を確認するが不備は見当たらなかった。

 淡々とその事を確認すると今度は館に帰る為に歩き出した。



「ファラル、今週から忙しくなるよ。ファラルのお兄様にもこっちからそっちに送り返す、って伝えておいて」

「町に現れる歪みを学園に移動させる、と・・・」

「私が速く動ける方が良いだろう、という措置かな?」

「なんにせよ、面倒な事に代わりは無いだろう」

 レイはファラルの部屋で椅子に座って目を閉じていた。既にファラルはレイの血を飲んでいた。

 ゆっくりとレイが目を開くと、目の前には血のように赤い瞳をが見えた。

 制御を緩めたり、強めたり、でレイは自分でも気付かないうちに体力や気力を消耗していたらしい。立ち上がる気力が湧いて来ない。

 その事に気付いたのかファラルがレイを抱き上げて、ベッドに運ぶ。

「早く、終われば良いのにね」

 淡々としたレイの言葉には色々な意味が含まれているだろう。その意味の1つに気付き、ファラルは一瞬だけ怒りに体を強張らせた。

「終わる事は許さない。この、私がな」

 優しく、妖艶に、だがどこか威圧的な言葉を紡ぎながらファラルの片手がレイの顔を包み込む。その言葉にレイは小さく苦笑した。望んでいるかのように、諦めているかのように。

 相反する感情にレイ自身が戸惑うが、実際はどちらでも良いのだろう。どうなろうと、目的を達成した後ならばどうでもいい。

「終わるのよ。それは必ず、何時か、必ず来る終わり」

「・・・・・・」

 ファラルはそれ以上レイに何も言わなかった。




 学園を調査する人が来る、と言われて、人は実際に来た。学園は広い。それでも部外者らしき人間を1日に何度も見かけていた。

 魔術科と武術科も同じような状況らしく調査に来た人達の数にただならぬ雰囲気を感じていた。

 レイは何故か調査する人が学園に来てから表面上は変わらないように見えるが、ある種の緊張感のようなものを纏っていた。

 そして、調査が始まって3日目それは起こった。

 授業の途中、レイが不意に立ち上がった。先生や生徒の視線を一身に浴びているが、その視線には一切レイの意識に入っていない様子だった。窓からどこか遠くを見つめ、直ぐにレイは顔を顰めた。

「教室から一歩も出ないように!先生は他のクラスに警戒を呼びかけて下さい。歪みが、学園に出来ました」

 言いながら窓に近付いたレイは、そのまま窓の鍵を開けて「後で、ここの鍵閉めておいて」と言うとそのまま身を乗り出し、飛び降りた。

「ファラル!!」

 着地の為に体勢を整えるでも無く、そう叫んだレイは、地面に叩き付けられるまで後少し、と言う所で誰かに抱きかかえられた。レイはニッコリと笑ってその人物の名を呼んだ。

「ファラル」

 一方、教室内は騒然としていた。レイが飛び降りた後、教室内は一瞬静まり返り、次の瞬間にはこれでもかという程の騒ぎになっていた。

「レイ!」

 マリがレイの飛び降りた窓から身を乗り出して下を見ると、レイは誰かに抱きかかえられているのが見えた。

「建物の中から出ないようにね〜」

 余裕の笑みを浮かべながら言うレイにマリはホッとしていた。その時漸くレイを抱えている人物の顔を見た。

「ファラル、さん?」

 見間違える筈が無い、この世に2つとないと断言出来る美貌。一度見たら忘れる事は出来ないその顔の持ち主は、ファラルだった。

 だが、居る筈が無い。魔法小隊の人間が学園に来る事は、特別な用事がない限り無いし、他の場所からあの一瞬で転移するのは難しい。学園には転移防止に結界も張ってある。許可が無い限り部外者が転移して来る事は出来ないのだ。

 警鐘が鳴った。学園中に響く程の警鐘。先生がマリに急いで窓を閉めるように指示した。

「歪みが学園に発生しました!教室から出ないように!」

 先生がレイの言った事を繰り返す。先生は警鐘で確信を持ったのだ。レイはどうやって歪みを察知したのか、マリには分からなかった。

「レイの言っていた覚悟、ってこれの事」

「どういう事?」

 マリアの呟きが耳に入り、聞き返す。

「あ、レイが2週間くらい前に『覚悟しておいて』って言ってたの。時期的に合うし、この事かな?って」

「2週間前に?」

 その時から今日、現在の出来事を予想していたとすればそれは神懸かり的な事だ。だが、その兆候はあった。最近の緊張感を纏ったレイ。

 この日の事を予測していたのならあの緊張感は理解出来る。

「レイ、大丈夫かな?」

 マリアが心配そうに呟く。

「予測してるってことは、対策位たててると思う。レイだから、時間を無駄に過ごすような事はしないと思う。無事に帰って来るよ、きっと」

「・・・うん」

 マリアの顔は沈んだままだが、希望に縋るような声で返事を返した。



「あ、もう人集り」

 レイが暢気な声で呟いたが状況はそれどころではなかった。魔術が放たれ、校舎からは生徒が飛び出して来る。

「やっぱり、魔術科で起こるよね。変な所触って術が発動、か・・・」

 ジッと人集りを見ていると、魔術を放っている者の中には教師に混じって生徒も居た。緊急事態に備えて学園を守る生徒が居るらしい。

「カナタだ」

 レイが見ている先には術を放っているカナタが見えた。

「生徒が全員校内から避難してからだね、動くのは」

「・・・・・・」

 ファラルの返事は無いが、レイはファラルの表情から了解を読み取った。

「後5分位かな。でも、術を触った人間は気を失って倒れてるだろうね」

 クスクスと笑いが込み上げて来る。同情しか出来ない。全ては神によって仕組まれた事で、巻き込まれた方は哀れとしか言いようが無い。だが、迷惑な事に変わりない。

「後1分」

 生徒は完全に出て来た。

 魔術を使っている生徒や教師の魔力が上がる。歪みが抑えきれなくなっている。既に校内には魔獣が闊歩しているだろう。

 後少しでレイとファラルの出番だ。あと数分もすればアル達もやって来るだろう。

「3、2、1」

 カウントと共に、レイは髪をほどき始めた。

「ゼロ」

 その言葉と同時に長く艶やかな髪が風に煽られる。その瞬間、校舎から巨大な黒い塊が目にもとまらぬ速さで飛び出した。だが、校舎から2m付近で透明な何かに阻まれるように黒い塊が校舎へと跳ね返った。

 今まで必死で校舎全体に結界を張ろうとしていた者たちは校舎から何かが飛び出して来た時に戦慄し、時が止まったようになった。そして、魔獣が襲いかかって来なかった事に一瞬呆気にとられ、興奮した様子の黒い塊こと魔獣が咆哮を上げた。学園中に響きそうな程の咆哮を聞いて、恐怖に気を失う生徒や腰を抜かす生徒が出た。

 何故助かったのかが、誰にも分からなかった。直ぐ近くには興奮状態の魔獣がいきり立っている。襲いかかって来てもおかしく無い距離だ。確かに魔獣は襲いかかろうとしているが直ぐに何か結界のようなものが魔獣を阻んでいるのだと気付いた。

 魔法隊が来たのか、と思ったが軍人である事を示す制服は見えない。

「気を失ってる人や、使い物にならない人は今直ぐ退避。もしくはその辺に固めてその周りを何人かで結界を張る。無理に手を出さないように。強いの寄越してきてるから」

「だ、誰だ!」

「学園の飛び級生の制服?」

「レイ!」

 髪を下ろした姿のレイに慣れていなくて、反応が遅れたカナタは気付いた瞬間直ぐにレイに駆け寄った。

「ここは危険だ。早く逃げて」

「平気平気〜。ファラルが居るし、君らよりこんな事態に慣れてるしね」

 余裕の微笑みを浮かべていたレイは直ぐに魔獣を冷ややかな目で見ると「うるさい」と呟いて、何かを投げた。何時かまえたのか、いつの間に持っていたのか全く分からなかった。

「魔獣にもちゃんと急所があってね。あのタイプは目を狙えば脳に達して死ぬ」

 血が噴き出した。魔獣の前に居たレイもファラルもカナタも、大量に血を浴びる。周りにもかかった者が居たようだ。また気を失う者が出た。

「制服ドロドロ・・・ファラルは良いねぇ、直前に防いで」

「望むなら防ぐが?」

「別に良い。面倒だし」

 ファラルだけはあれだけの血を浴びていながらも、赤い染みが1つもなかった。レイはのんびりと羨ましそうにファラルの服を見ながら言ったが、まわり空気を全く気にせずにファラルと一緒に独自の空気を作っているといっても良かった。

「それに、気付かないの?」

「何に?」

 唐突にカナタに問いかけたレイは、カナタの答えを聞いて呆れたような表情を見せた。

「これ(結界)私が作ったんだよ」

 その言葉にはカナタだけでなく、周りに居た人間全員が驚きを隠せなかった。

「でも、レイに魔力はっ」

「髪くくってる時は無いと思う。時期が来たからもうどうでも良いからばらすんだけど、髪くくってれば魔力が現れないようにしたの。何時も抑えてるのは面倒だから」

 唖然としているカナタを見て苦笑を浮かべたレイはややあってそこに居た全員に聞こえる声で、

「後2分後に魔法隊の人間が来ます。そしてあと1分位でこの結界を解くので、今直ぐに結界を張るように」

 その宣言に、慌てて何人かが固まって結界を張る。

「カナタも早く結界はって。あ、これお守り」

 軽いノリで渡された物は血に塗れヌルヌルとしていた。「さっき魔獣に投げだナイフ」レイの簡単な説明に一瞬だけカナタは固まった。

「レイ、キャラが変わってない?」

「そうかな?確かに、何時もとは少し違うかもね。イライラしてるし、楽しみにもしてるから」

 ニコニコと笑いながら言ったレイは直ぐに「残り30秒!」と叫んだ。

 カナタはレイの指示に素直にしたがって、その場から離れると、結界を張っている人数が少ない所へ入った。

「結界、解除します」

 宣言すると共に、魔獣が一気に飛び出して来た。先ず一番にレイとファラルに襲いかかって来るが、何時の間に握っていたのか分からない剣を構えて、一瞬で斬った。巨体がレイとファラルの周りに積み上げられる。

 それは、剣舞のようだった。まるで2人で舞っているようだった。剣を一閃するだけで魔獣が倒れ、体を動かすたびに山が大きくなる。

 誰もが一瞬、状況を忘れて魅入ってしまった。だが数が増え、自分たちの方にも魔獣が来ると、悲鳴が上がる。

 その時、

「無事ですか!?」

 転移の魔法で現れたのは魔法小隊の制服に身を包んだアルだった。ヘルスやロリエ、ベクターなど続々と人が現れる。レイの知らない魔法使いも居た。

「レイ!」

「こっちは平気です。あと、ファラルを勝手に連れ出してごめんなさい」

 謝りながらも可笑しそうに笑っている。

「レイが学園を警備するように言ったのはこの事を知っていたからか?」

「ハッキリとは言われなかったんですけど、推測に推測を重ねてこの結論に至りました。断言は出来なかったので言わなかったんです。それでは、あとをよろしくお願いします」

 それだけ言うとレイはファラルと共に校舎の中へ入ろうと歩いて行く。


 ふざけるな、と思っていた。説明が足りない。校舎を包む結界はなんなのか、何故レイが行くのか。戸惑いと疑問がアルを苛立たせた。

「レイっ!!ファラルっ!!」

 2人に向かって叫んだが、2人は立ち止まり、振り返る素振りさえ無かった。

「隊長!結界の強化!」

 ヘルスの怒声がアルの思考を現実に引き戻した。

『光よ 魔の手から 人々を守れ』

 短い言葉だったが効果は絶大だった。全ての結界が強化され、校舎を包む結界も強固な物に変わった。

「突入班、準備は良いか?」

 隊長としての役割を思い出したアルは直ぐさま指示を出した。

「行くぞ」

 アルの琥珀色だった目は黒に変わっていた。幾人かの隊員と魔法使いを連れて校内に入って行く。レイとファラルが校内に入って十数分の時が経っていた。

 

 次は後編です。レイの隠していたが、別にバレても良いか、と思っている秘密がばれて行きます。

 それがどんな波紋を呼ぶのでしょうか?

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