76:初めての試験とカンニング疑惑
「レイ!ここの解き方教えて」
「ここは、これとこれを_____してみて」
試験の前日、部室で机に齧りついて問題を解いている。レイだけが余裕の態度で本を読みながら質問して来る5人に解き方を説明している。
どんな質問、魔術の問題だろうが剣術の問題だろうが即座に答えを出すレイは5人から重宝された。
「・・・本当に、何でも出来るんだね。オールマイティーって言えばいいんだっけ?」
驚き半分、呆れ半分の5人に曖昧な笑みを浮かべたレイの底は知れなかった。
「レイは勉強しなくていいの?」
「うん。だって学校のテストなんて習った事で回答欄埋めるだけでいいんだから」
その言葉に全員が羨ましいと思ったのは言うまでもない。そして、そこまでの余裕があれば、とも思った。
学園の試験は3日間行われる。その間は授業が午前で終わり、午後は下校、もしくは学校に残って勉強する生徒が殆どだ。熱心なクラブだと午後から練習があり、その後皆で勉強会をしたりするらしい。
男3人は練習に参加し、勉強会を抜けて図書室クラブで勉強をしている。一応マリアも武闘クラブに所属しているがそこまで熱心な方ではなく部室で勉強していた。
先生が教室に来る数分前。
「今回はレイに教えてもらって頑張ったから自信あるかも。むしろ、いい点とらないとレイに申し訳ない。折角教えて貰ったんだしね!」
気合い十分のマリアの言葉にマリも同意する。
「確かに。僕もレイに教えて貰って苦手だった教科が克服出来た気がする」
2人の言葉にレイは穏やかな笑みを浮かべて、
「ただ解き方なんかを教えただけで、そう言って貰えて何よりです。」
と言った。
「カナタ!どう?緊張してる?」
サラはわざわざカナタの席まで来ていた。そこまで遠いわけではないが、隣や前ほど近くは無い距離だ。
「いや、そこまでしてない。でも、試験前にここまで落ち着いてるのは初めてかもしれない」
「私も。レイの御陰だね」
感謝の笑みを浮かべているサラの顔を見て、
「そう、だね」
と一瞬歯切れ悪く言ったが、無邪気な笑みを浮かべている彼女はカナタの心内など全く分かってないだろう。はっきり言って、そう言う事には鈍いのだ。
(俺も、レイみたいにサラにちゃんと勉強を教えられれば良かったのに・・・)
そうしたら、サラの向ける笑顔をカナタのものにする事が出来たかもしれない。
レイに対して感謝と嫉妬を抱きながらも、サラが嬉しそうに笑っているので良いか、と思うと、
「そろそろ先生来るだろうから、早く席に戻っておいた方が良いよ」
と引き止めていたい気持ちを押し隠してサラを促した。
「今回はイケるかも」
テスト10分前。レイに頼んで作ってもらったヤマの問題に取り組んでいたセイジはマル付けをして間違いが1ヶ所しかなかった事で密かに自信を持った。
レイに作ってもらった問題は全教科分あった。クラスメイトが時々問題を覗き込んで来たり、質問して来るのに適当に言葉を返し、黙々とレイを信じて勉強していた。
「試験開始」
担当の先生の声を合図に裏返しにしていた問題をひっくり返す音がする。
レイは最初の十数分で回答欄を全て埋めると問題を全て裏返して机に突っ伏した。軽く目を閉じて時間が過ぎるのを待つ。レイにだけ聞こえる声で何度か先生に名前を呼ばれ注意され、その度に起きている事を示した。終了する2分前にようやく顔を上げる。
「手を止めなさい。試験は終了です」
先生の指示で答案を集めている生徒に解答用紙を渡す。
「レイ、寝てたの?」
見たのではなく先生の声が聞こえて判断したのだろう。マリアとマリがレイを見て呆れた様に聞いて来るが、レイは首を横に振って、
「ちゃんと起きてたよ」
と言って、穏やかに笑った。
「成績は良いんだが、授業態度が本当に真面目とは言えない。今回のテストは全教科満点、しかし殆どの時間を使って寝ている。注意をすれば返事をする事から本当に寝ている訳ではないだろうがな」
職員室ではそんな会話がなされていた。答案用紙は完璧で、全てにマルがついている答案用紙を見ると何故か虚しくなってしまう。
「注意すれば直るでしょうし、寝るなと言えば寝ないでしょうね」
1人の先生が呟いた。注意する時、どの先生も厳しくは注意していない。どちらかと言えば「寝ていて大丈夫なんですか?」や「起きていますか?」という言葉くらいしかかけていない。「そんな格好をするな」等の厳しい注意をしていないのだ。
「それでも、彼女の内面は変わらないでしょう」
答案用紙に書かれた名前は“レイ”飛び級で学園に入学して来た生徒だ。
職員室の数カ所で溜息が漏れた。
「そうですね。ある意味ではとても優秀な生徒ですが、協調性が無いというか、マイペースというかそう言う意味では問題児ですね」
教室内で話しをする生徒は両サイドに座っているマリウス・クルシューズ、マリアンヌ・クルシューズだけ。他の生徒とは必要事項の他には話さない。
選択教科で2人と離れれば完全に孤立している。むしろ、誰も近寄らせないような雰囲気を持っている。
「質問にはキチンと答えるし、誰も分からないような答えを答えるし、深い議論が出来る。授業態度もいいんですが、一生懸命さがないというか」
「テストの結果は学年トップ。成績表は今の所オール5にしか出来ない。だけど、物凄く不本意なんですよね」
悩んでいるというか、納得がいかないという感情を滲ませている先生の言葉に何人もの先生が頷く。
「そう、嫌みで教えてないような難しい問題を出して解答をあっさり出されるのに似てますね。はっきり言って私達よりも知識が深く学校で学ぶ事など何も無い、という生徒は苦手なんですよね」
その言葉にも殆どの先生が賛同する。
「そういえば、魔術科や武術科の先生から彼女とよく一緒にいる生徒の成績が上がっているみたいです。それも総合的に」
「何かあるんでしょうか?彼女に影響されたとか・・・」
「なんにしても、扱いづらい生徒に変わりないですよ」
生徒達の入れない現在の職員室の中で行われたレイについての議論は消化不良という状態のまま終わりを告げた。
「レイ!テスト結果が出たみたいだよ。見に行こう」
「点数はどうせ先生に返されるんだから別に・・・」
「いいから、いいから。マリも行こうよ!」
マリアはレイとマリの手を掴んで試験の簡単な結果と順位が貼り出されている掲示板へ連れて行った。
生徒達が集まっている人ごみをかきわけ、押しのけて掲示板の前に立つ。
「普通科の12学年総合順位で1位はレイ!!マリも4位だよ!」
3人の中で一番嬉しそうにしているのはマリアだった。
「そうだね。一応これでアル達に結果は返せた、かな」
冷静に、嬉しがる様子も無くただ当たり前の様に義務の様に小さく呟いた言葉は2人の耳に届かなかった。
「あ、マリアは22位だよ。数学はレイと並んでトップだね。レイは全教科トップだけど」
「むしろ、この学園で全教科トップって全教科満点。ってことに近いよね?」
「うん、満点みたいだね」
レイは何も言わないがマリアとマリが話し続けている。当人のレイよりも喜んでいるようだ。
「・・・クソッ」
不意に聞こえた忌々しげな言葉にレイはその声が聞こえた方を振り向く。相手もレイが自分を見ている事に気付いたのか忌々しげな暗い目でレイを睨んだ後、何処かへ消えた。
(ケイン・クレバート。順位表では2位。感じたのは、私という存在の否定?ああ、2位である事が嫌なのか)
くだらない、と思ったが特に不快ではなかった。どうでも良かったのかもしれない。
だが、その後に起こった彼の起こした騒動には平然とした表情の下で一瞬だけ彼の顔を恐怖に歪ませたいと感じた。
「さて、今回のテストの結果が発表されました。このクラスで学年トップの生徒が出ました。レイに拍手」
パチパチと拍手が起こるが、生徒の何人かは拍手どころかレイの顔を見て顔を歪めていた。
そしてレイからテストの結果を返された。
「うわ〜。凄い!本当に全教科満点だ」
小声でレイの結果を見て感嘆するマリアに何が?という顔で見つめ返すと軽く全ての答えと結果を見るとぞんざいに机の中に結果を放り込む。
「今までで一番良い成績かもしれない」
淡々とした口調の中にも喜びを滲ませながら結果をとりに行ったいたマリが帰って来た。
次にマリアが呼ばれて行く。
「レイは、あんまり喜んでないよね」
「特に喜ぶ事でもないしね。でも、結果を出さないと申し訳ないと思うし」
「ああ、そう言う理由なんだ」
会話がそこで途切れた瞬間、レイはマリアに抱きつかれた。
「勉強教えてくれてありがとう!!過去最高の結果よ」
嬉しそうに言うマリアに抱きつかれる寸前、レイは一瞬だけ体を強張らせていた。だが抱きつかれた時にはその強張りも解れていた。
「異論があります」
不意に手を挙げてそんな事を言った生徒がいた。言ったのはケインではないがケインがレイの方を見ながら口元に小さな笑みを浮かべていたことから彼が何らかの裏工作をした事が分かる。
「彼女が学年1位という結果ですが納得出来ません」
何人かの生徒も頷いている。教室中の視線がレイに向けられたがレイは平然としている。慌てた様子も無ければ、困惑した様子もない。反論する様子も無く、だだずっと先生の方を見ている。周りの視線など全く気にしていないようだ。
「その理由は?彼女が学年1位という結果に納得出来ないと言う理由を述べて下さい」
「彼女は絶対にカンニングを行っています」
「その理由は?」
「彼女自身がそう言っているのを聞きました」
その言葉に何人かの生徒が自分も聞いた、と主張するがケインは何の反応も示さない。よくよく見ていると生徒の視線が一瞬だけケインに注がれた瞬間があった。だが、先生は気付かなかった。
「何か反論はありますか?」
レイに聞いて来た先生の目には少し困ったような表情が見え隠れしている。
「カンニングのハッキリとした証拠が無いなら他人にどういわれようとどうでも良いです」
異論を唱えた生徒の顔に一瞬だけ焦りが浮かぶが、色々なパターンを考えていたのか、
「僕が言っているのは彼女が他人の答案を見たのではなく、彼女が自分の答案用紙を他人に見せた、という事です」
(ああ、そのカンニングか)
暢気にそう思っていたが、その対象がレイの両隣に座るマリとマリアになった。
マリは泰然としているがマリアは困惑した顔をしていた。気が強いくせにこういう場面になると弱気になるらしい。逆に、サラは普段は弱気だが、ここぞという時に強気になる。
では、レイは?
「私は誰に、どのように答えを教えたんでしょう?証拠を提示して下さい。そうでなければ相手にする気が湧きません」
どこまでもマイペースだった。
「両脇の2人と一緒に居ました。証拠は、何人も君の言葉を聞いた人間がいます」
「そう。それで、どれだけの人が聞いたんですか?」
口元には微笑みを浮かべて楽しそうにレイが聞く。実はレイはこの状況を楽しんでいた。お腹を抱えて笑いたい衝動を必死で抑えているのだ。
「お、おい!君達も一緒に聞いたよな?」
生徒が周りに向かって声をかけると、4人の生徒が立ち上がった。男子生徒3人に女生徒2人だった。その中には、予想通りケインは居なかった。
「へぇ、それで、私なんて言ってたの?」
「『答え見せたんだから、約束のもの払って』と」
「ふ〜ん。何を払って欲しかったんでしょうね」
レイは傍観者の態度を取っている。そんなレイの態度にマリアは少し落ち着きを取り戻したらしかった。
「君は当事者だろう。その態度は無いんじゃないかな?」
漸くケインが会話に加わった。
「ですが、あくまでもカンニングの疑いです。カンニングを行った証拠があるのならともかく、無いのに面倒な事をしたく無いだけです。むしろ、当事者だと思っているのは彼らだけなのでは?」
にこにこと笑いながら言っているレイに何故かマリアとマリは背筋がゾクリとする感覚があった。何気なく顔を覗き込むとレイは相変わらず笑っていた。
「レ、レイ?」
恐る恐ると言う風にマリアが小声で名前を呼ぶ。レイは「なに?」と言ってマリアの方を見る。笑みは消え、普段通りの顔になったが何故か違和感を覚える。
「授業が進まないね」
「う、うん」
普通の会話をするレイにマリアの方が戸惑う。
「進まないのは、君が不正行為を認めないからだろう?」
「何故、認めなければならないのか理解が出来ないんです。理解が出来れば認めてもいいんですけどね」
平然とした態度で喋る事も億劫だ、と言う口調のレイにマリは苦笑を浮かべた。
(本当にマイペースだ。周りに感化される事がない、というか)
「彼女が不正行為を行っているというこちらの証拠は複数の人間の証言だけだ。だが、彼女が不正行為を行っていないという証拠も無い」
レイは穏やかに、どこか面白そうに笑って、
「私は別に不審な行動をとったつもりは無かったんですが・・・どうでしたか?先生」
「問題はありましたが、不審な所は特に。開始十数分で寝る生徒は久々です。ですが、カンニング出来るような状況ではなかったですね。答案は裏返してその上に覆いかぶさる様に寝てましたね。何も喋ってませんし。簡単に言えば、不正行為は無理な状況です」
始めからそう言っておけ、とマリとマリアは思った。テスト中に周りを見る事はカンニングをしていると思われるので学園の生徒は徹底して問題に集中している。寧ろ、そこまで集中していないと全ての問題に辿り着けなくなる事があるのでレイの様子を見る生徒は居なかったのだ。
「私には、テストを見ていた先生の証言があります。全てのテストで同じ事をしていたので全ての先生が同じ事を言うと思いますよ。まだ、反論があるのなら放課後にどうぞ」
カンニングの疑いをかけた生徒達と、ケインの顔に少しだけ赤みがさす。感情には筋違いの怒りを抱いている事が分かった。
「不確かな証言であらぬ疑いをかけられるのは心外ですね。それが、私だけならともかく、努力して結果を出したマリとマリアにカンニングの疑いをかけた事は許せませんね。証拠も無いのに疑った事を2人に謝って下さい。今すぐに」
笑みを深めて本当に楽しそうに告げた言葉に生徒が固まった。だがレイはただジッと2人に謝るのを待っている。
「彼の証言に賛同した方は、私達3人が結託してカンニングを行ったと思ったんですか?でしたら、不確かな証拠しか無いのに疑ってすみませんでした、と謝るのが筋ですよね?」
既にレイは面白がっている様子を隠そうともしていなかった。そんな相手に謝るのは屈辱だろう。
「ふ、不確かな証拠のみで不正行為を疑った事を謝罪する」
「誰に対して?」
「さっ、3人に対して。本当に、すみませんでした」
その言葉を皮切りに他の生徒も謝りだした。ただし、ケインは上手く立ち回っているので謝る事はなかった。
程なくして授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
「次、移動教室だね。早く行こう」
レイはマリの方を見て言った。マリアは違う教室だが、マリとは同じ教室だった。
生徒達の謝罪の言葉などどうでも良いという態度のレイに生徒達はもっと怒りを大きくしていた。
(耐えた方、だね)
自分自身を褒めた。母親に、正確にはもう少し対象が広いが、友人は大切にするべきものだと教えられた。一番大切ではないが母親の言葉を守る為にも害にならない限りはそれなりに大切にしようと思っている。
だから、侮辱されればやり返そうと思っている。
あれだけで抑えたのはいい方だ。もう少し2人を侮辱されればもう少しキツく返していただろう。
「レイ、ありがとう。マリアの事守ってくれて」
「・・・守ったつもり無いけど。当たり前の事でしょう?2人は努力して結果を出したんだから。それを疑われたら反論する権利はあると思う。なくても言う人が居るんだから」
当たり前の事の様に言ったレイはそのまま歩いて行った。一緒に行こう、と誘った割にレイはマリと歩調を合わせていない。
後ろから物凄い憎悪の視線を感じた。何気なく振り返ったマリは自分とレイを見つめる先程の生徒達を見た。レイは気付いているのかいないのか、全く気にしている様子は無い。
「言っちゃ悪いかもしれないけどお門違いというか、もっと悪い言い方をすれば、愚かというか・・・。まあ、そんな人達を見てるのは楽しいかもしれないね。近付きたくは無いけど」
不意に言ったレイの言葉にマリは苦笑いを浮かべた。気付いていたらしい。ただ、無視をしていただけで。
「マリアはさ、普段は強気というか、積極的で明るいって言えばいいのかな?って性格なんだけど・・・急に状況が変わったりすると混乱したり弱気になったりするんだ」
「何となく分かってる。旅の時に過呼吸起こしてるしね」
「周りの事、よく見てるね。レイは」
「見てないと、生きて行けない世界に何回か居た事があるからね。周りの人間全ての弱点や性格、動向を把握しておかないといけないって事があったから」
「・・・凄い世界だね」
「まだマシだったよ。精神的にはね」
レイの言葉は淡々としていてレイの生きていた世界を推し量る事は出来なかったが、奥が深そうだった。
「奥が深い、というか、謎が多いよね。レイは」
「そう。秘密にしているというか、言ってない事が多いからね。でも、全てを話さなければならないというわけではないでしょう?」
妖艶な微笑みを一瞬だけ浮かべたレイは一線を引いた。それは、明らかな拒絶であったがマリは特に気にする事はなかった。
(詮索するべき事じゃない、か・・・。確かに、踏み入ってはいけない一線はあるし、全ての事を誰かにいう必要は無い。それは、僕にも言える事で、カナタやセイジ、サラにも言える事だ)
それでも何処か寂しい気持ちがあった。そして、レイの過去を知りたいという気持ちもあった。
「どうして、もっと上手く立ち回れない?」
「すっ、すみません」
誰もいない教室で何人もの生徒が1人の男子生徒に頭を下げている。
冷ややかな目でに自分に対して頭を下げている生徒を見ている男子生徒はケイン・クレバートだった。頭を下げているのはレイにカンニングの疑いがあると言った生徒達だ。
「あの女さえ居なければ!課題のときも、今回も、尽く邪魔をする。元旅人の分際で」
八つ当たりのような言葉に頭を下げている生徒全員が身を縮める。
もしもレイがこの場面を見ていたならば一瞬の躊躇いも無く笑うだろう。そして、相手の神経を逆撫でするような言葉を幾つも投げかけ、もっと怒り狂うケインと怯える生徒達を見て愉快そうに笑うだろう。
「・・・・・・」
沈黙が降りる。その中にケインの底知れない怒りを感じた。
「大変だったのね。でも、レイの言う事が正しい。マリアもマリもすっごい頑張ってたんだから、疑われるなんて!」
因に、カナタは魔術科2位、サラは19位、セイジは31位という結果だったらしい。
「順位もなんだけど、前と比べてテストの点が全部伸びたの。先生にも褒められた。レイの御陰だよ!」
ニコニコと笑ってレイにお礼を言って来るサラに、レイは笑って「自分の努力の結果よ」と返す。嬉しそうな様子のサラを見て、カナタは一瞬微笑んだ。
「レイは、どうしてそんなに博識というか・・・頭が良いの?誰に習ったの?」
セイジがレイに聞いて来た。レイは読み始めた本を閉じて一瞬何かを懐かしむような目を何処かに向けたあと、
「師匠とファラルと本、かな。その他にも色々知識を与えてくれる者はいたけどね」
「師匠って?」
「そこまで言う気は今の所無い、かな。言いたくなれば教えてあげる」
そう言うと、レイはまた本を開き読み始めた。
「そうか、学年トップか」
アル達はレイの結果に喜んだが、全教科満点だったりした事に驚きはしていなかった。
「あの、1つ言っておく事があるんですが」
紅茶を飲んだ後、レイは唐突にそう切り出した。
「出来ればで良いんですが、学園に1〜2人警護という形で軍人の方を配置していただけませんか?1〜2ヶ月程度で終わると思うんですけど・・・。神の依頼の関係です。といえば、納得していただけますか?」
「分かった。上に話を通しておこう」
その言葉に、レイは安心した様に微笑んだ。
ケインは割と陰険で身分を気にするタイプです。頭はいいのですがその事に驕っています。
カンニング疑惑をかけた生徒達はケインの取り巻きです。ケインに脅されたというか、命令されてあんな事をしました。