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血の契約  作者: 吉村巡
71/148

70:初めての選択教科

 全校生徒に顔と名前を覚えられる様になったが、時が経てば噂など直ぐに別のものに変わって行く。

 レイ達の学園生活にはゆっくりと、そして確実に平穏が戻って来ていた。

 

「そう言えば、今日から選択教科が授業に入るよ。確か前期は見学はしたけど出る事は結局無かったよね?」

 マリの言葉にレイは頷く。後2時間後には選択教科の時間で内容は剣術だ。年下、という事と夏休み前で何をするのか分からない事を配慮してレイは授業の見学という形で参加していた。

 レイとしてはサターンという教師の勧めで剣術を選んだのだ。まあ、どちらにしろ剣術を選んでいたかもしれない。

(他人に触れられるのは好きじゃない)

 そう思って剣術を選んでいた可能性もある。

 時間は過ぎて選択教科の時間になった。

「着替えてから、中等第一体育館に集合」

 マリアの言葉に素直に従う。アリアの後をついて行き着替えて行き着いた体育館には既に大勢の生徒が集まっていた。隣にも体育館があり、それは体術を選んだ生徒が使用する。

 剣術も体術も一応男女に分かれてそれぞれの先生の指導のもとで実技訓練を行うらしいと見学の時点で気がついた。

「では、3人1組を作って基本の型を合図があるまで続けなさい」

 先生は女でキッチリとした服を着ている。言うなれば動き易い軍服のような服を着ている。

「サラ!ここ」

 サラも剣術を選んでいるらしくレイとマリアを見つけて駆け寄ってきた。

「丁度3人だし、これでグループ完成。スペースあるしもう始めようか」

 マリアがしきり、3人で向かい合いながら素振りを始める。周りも段々と始める人が多くなってきている。レイがふと男子の方を見ると男子は全員が列を作って一糸乱れぬ様子で素振りをしていた。時折先生の怒鳴り声が響く。

「思った通り、レイって基本がしっかり出来てるし、扱い上手だね」

「うん、昔から刃物には慣れ親しんでるから。首に当てたり当てられたりね」

 さらっと黒い事を言うレイに2人の手が一瞬止まった。直ぐに先生の目に留まり鋭い声が飛ぶ。

「サラ、肩の力抜いてみて。振りがぎこちない。上げる時に息吸って振り下ろす時に息を吐く感じ」

 レイの指摘通りにサラが息を吸って吐きながら振り下ろすと先程までのぎこちなさが多少無くなった。

「マリアはもう少し手首に力いれて。振り下ろして止める時に剣先が少しぶれてる」

 その指摘通りにマリアが直すと剣先がまた多少ぶれなくなった。

 先生が見に来た時に2人を見て「良くなってるわね」と言い、レイの型を見て少し目を見開いた後何も言わずに3人の元を去った。

 暫くして先生の合図があり、全員が型をやめた。

「2人一組で5分間打ち合いをして。終わったら5つのトーナメントを作って対戦をします。くじを引いて表に書き込んでいって」

 先生の言葉に全員が黙々と従い、レイはサラと、マリアは武術クラブで一緒の女生徒と打ち合いを始めた。

(何て、弱々しくて滅茶苦茶な型。基礎体力があるんだから大して変わらなくても体術を選んだ方がまだましなのに)

 力を入れるのを怖がっているのか打ち込んで来る剣には重みが全くなく、ぎこちなく遅い攻撃はそれ故にバランスがとり辛く不自然に剣筋が揺れている。

 レイは攻撃に転ずる事無くただ只管サラの剣を受けるだけだった。先生が時々視線をやるのは分かっていたがサラに対してレイが攻撃に転ずる事は出来ない。言っては悪いが圧倒的な実力差があり、一度でも攻撃すればサラの方が怪我をするだろう。だからといって打ち合いをしているのでは寸止めは出来ない。

 先生の合図で打ち合いが終わり、一列になる様に指示された。くじを引くらしく引いた者からどんどん表に名前を書き込んでいく。

 先生に近付くにつれ少し不自然な事に気がついた。幾人かの生徒のときだけくじを引く箱を変えているのだ。レイとサラよりも前に居たマリアも例外ではなく、レイの前に居たサラはくじを引かせてもらえなかった。そしてレイは、

「貴女はこっち」

 マリア達と同じ別の箱のくじを引いた。共通点はもう1つあった。トーナメントの対戦場所が同じなのだ。

「全員、決められた所に集まって。それぞれに審判は居るわね」

 サラはレイ達のトーナメントの審判をしていた。

「内容は分かっていると思うから始めて」

 先生の指示が終わると審判役の生徒が次々と名前を呼び始めた。マリアは一番最初だったらしく接戦の末に勝利していた。レイは最後から2番目で対戦相手はマリアよりも弱そうだった。顔に少しだけ困惑を浮かべて周りの生徒を欺くとゆっくりと相手に対して恐怖心を植え付けていった。

 これは対峙している者にしか分からない言いようの無い威圧感、恐怖、そして気迫。相手は金縛りに遭ったかの様に動けなくなっていた。

(何、この恐怖感・・・)

 対戦相手はレイを見据えながら動こうとするが全身が拒絶しているかの様に動けない。相手の顔は困っている様に見えるが何処に打ち込んでも一瞬で倒されるような気がして一歩も動けなかった。 

 周りの生徒がざわめき始める。レイはもっと困惑した表情と声音を作り、「え、っと」と小さく呟いた。そしてゆっくりと対峙している生徒に近付く。

 レイに迫って来られる生徒は後ろへ下がろうとしたがどうしても足が動かなかった。恐怖に身が竦み声さえも出ない。それはまるで蛇に睨まれた蛙のようだった。

「す、すみません」

 躊躇うような声とおっかなびっくりという動作でゆっくりと剣を上げると相手の首元へもっていき小さく力を込めずにチョンっと首に当てた。

 その瞬間生徒は糸が切れた様に座り込んだ。レイは慌てたようすでその生徒に声をかけたが逆に怖がられて差し出した手を振り払われた。

(少し、刺激が強すぎた?)

 レイは首に当てた瞬間に解いた威圧感で既に腰を抜かしていた生徒がその場に座り込んだ事に気がついていた。

「勝者、レイ」

 サラの宣言に全員が納得のいかないような顔になる、その光景を見ていた先生までもが不審そうな顔になっていた。

「貴女、飛び級らしいじゃない。魔法でも使ったの?」

 マリアの元に戻ったレイに詰め寄ってきた女生徒が居た。後ろに怯えたような先程のレイの対戦者が居る事から目の前の彼女は先程の生徒の友人なのだろう。

「いえ、私には魔力が全くと言っていい程ありませんよ」

 その質問にレイは答えた。その光景を見ていた先生が仲裁に入ったのでそこで話は終わったが周囲の疑いの目はまだレイに向けられたままだった。

 次の試合にもマリアは勝ち、レイも先程と同じ様に対戦者の方が全く動けなくなってレイは小さく体の急所の部分を軽く小突いて勝利した。レイと対戦した生徒が先程と同じ様にレイを恐れていた。

 3試合目にマリアが負け、レイはまた勝ち進んだ。魔術科の生徒がレイが魔法を使っていないか調べようとしたらしいが使っていない事が分かって、また変な目でレイが注目されている。レイは既に開き直っていて、ことごとくその視線を無視し続けていた。

 4試合目は準決勝に進む生徒を決めた。レイの対戦相手の反応は全く変わらず、準決勝に進んだ。

 次の試合は先程レイを問いつめてきた生徒だった。同じ様に負け、その怯え方は尋常ではなかった。レイが毎試合行っている手を差し出す好意も今までの生徒以上に拒絶を表し、体育館中に響く声で「化け物っ!!」と叫んだ。

 マリアが一番に怒りを露にしてその生徒に掴み掛かろうとしたのを周りの生徒に止められている。レイは無表情に目の前に居る生徒を見つめていた。生徒の方は全身で恐怖を表している。

 先程の叫び声で体育館にいる者の殆どが動きを止め、レイと叫び声を上げた生徒に注目していた。

「好きに呼んで結構ですよ」

 差し出した手を横に戻すと何事も無かったかのようなにこやかな笑みを浮かべてレイは相手にそう言った。レイが周りの生徒数人がかりで体をがっちりとホールドされている姿を見て、

「どうしたの?」

 とさも不思議そうに聞くと、気勢がそがれたのかマリアは抵抗をやめた。

「どうしたの?じゃないわよっ!!あの生徒なんなの!?悔しく無いの!?」

 周りの生徒がマリアの怒りはごもっとも、正論だ、と言う表情を浮かべる。

「いや、別に私は自分の名前の呼ばれ方なんて気にしないから」

「そう言う問題じゃないわよ!!あんな言葉浴びせられてっ、レイは気にしないんだろうけど、私は気にする」

 冷静な、何事も無かったかのようなレイの態度に少し落ち着いたのかマリアの声が必死で冷静になろうとしている。

「別に、どうでも良いから。他人にどう呼ばれようが。殆ど何の接点もない人にどう思われようが私は気にしないし」

 ドライな言葉でレイはマリアにそう告げた。それは本当にそう思っているらしいと何となく分かった。更に、レイから「何とも思ってないから、マリアに騒がれても迷惑なんだよ?」とはっきりと言われて渋々ながらも引き下がる事しか出来なかった。

「それでも、剣術の対戦中に暴言とは・・・感心出来ない。例え当人が気にしていなくても」

 後ろを振り返ると先生が居た。その隣には先程例に対して「化け物」と叫んだ生徒が立っていた。レイに一瞬見つめられただけで怯え、先生の後ろに隠れる。本気で恐れている現れなのか先生の服を掴む手が小刻みに震えていた。

「謝る事は、無理かもしれないな。この様子では」

 先生の諦めともとれる言葉にレイは苦笑を浮かべた。

「私は謝罪を望んでいませんよ。あの試合で強いかどうかは分かりませんが化け物の様に強そうだった、と前向きに受け止めますから」

 レイは先生に対してそつなく対応した。

「取りあえず、この子は今年の剣術大会に参加する資格を1つ失った。他で挽回出来なければ大会には出られないという罰則を与える。たとえ君が気にしていなくても、ね」

 先生はそれだけ伝えると未だにレイに怯え続ける生徒を促して舞台の上に戻った。周りの注目を一身に浴びているにもかかわらず、レイはマリアに、

「マリアがあの生徒に掴み掛かったらマリアまで罰則受けそうだね。あの先生堅そうだし」

 と微笑みながら言った。

「決勝戦です」

 サラがはっとした様子で宣言した。他のトーナメントでは終わった所もあるようだ。周りの見学者が増えている。

 レイが名前を呼ばれて対戦者と対峙した。相手は編入試験の時に武術科を見学した時一戦交えたいと言ってきた女の子だった。

(学年2位)

 そう思って何時もの通り相手にだけ分かる気迫を出した。相手は恐怖心を感じながらもまだ冷静を保っている様子だった。

(流石に学年に2位と言うべきか)

 のんびりとそんな事を考えながらサラの開始の合図を待った。

「始め!」

 その言葉に彼女は踏み込んだ来た。周りから声が漏れる。

(ああ、もう少し強くても良かったんだ)

 レイは相手が恐怖心によって動かなくても闘争心を失わない程度に相手に気迫を出していた。その上周りに気がつかれない様になので上限がある。なのでこの位かな、と判断して個々に合わせるのではなく一定の気迫を出し続けていたのだ。今回の相手は今までとは違いこの程度ではまだ恐怖に体が動かなくなる事は無いらしい。

 踏み込んできた生徒の剣を綺麗に受け流す。相手は型通りに綺麗に打ち込んで来るので受け流しがやり易い。

「打ち込みなさい!!」

 受けるだけのレイに相手からそんな叱責が飛ぶ。彼女からしたら打ち込んで来ないレイにイライラしているのかもしれない。

 真面目で、誠実な人なのだと分かる。何事にも、どんな事にも全力で向かう。本気でかかって来ない相手には怒りを感じる。手を抜かれる事が嫌いなのだろう。だが、レイが本気になる事はない。

 相手の言葉を無視してレイは相手の打ち込んで来る剣を受け流す事しかしなかった。周りを意識するともう既に何処もトーナメントを終わらせているようだ。

 男子の方も終わったらしく2人の試合を見学に来ている。先生も見る所がここだけなのか審判役をサラから奪って、ベストポジションで試合を見ている。

 試合は長く、既に授業時間を超えそうだった。周りの生徒は気がついているのか、いないのか。先生達も周りの生徒やレイと目の前の生徒に何の指示も与えない。

 意識を戻すと目の前の生徒は少々息が上がってきているようだ。このままだと相手は倒れるまで試合を続けかねない上、時間もオーバーしてしまう。そう思うとレイはようやく行動を起こした。

 相手の剣を受け流すと同時に始めて打ち込んだ。それは相手に受けられ弾き返される。そして反撃され剣に衝撃を受けた瞬間、レイは剣を手放した。

「私の負けですね」

 レイはにこやかにそう言うとさっさと一礼してマリアの元へ帰った。

 生徒全員が呆気にとられてレイの行動を見ていた。先生2人は怪訝そうな顔をして、対戦相手の生徒は一瞬訳が分からない、と言う顔をした後。状況に気がつき、

「納得出来ないわっ!!」

 と叫んだ。今日はよく叫ぶ人が居る、と思いながらレイは他人事の様に自分に向かって言われている言葉を聞いていた。

 その先を続けようとした生徒の言葉を遮る様にして鐘が鳴り、先生が授業終了の声をかける。全員がその言葉に従うが1人納得がいかない顔の生徒がレイを睨みつけていた。レイは早々に先生の言葉に従ったので女生徒の不満は発散されないままだった。



「何で負けたの?」

 マリの言葉に意味が分からない、と言う風にレイが質問してきたマリの方へ視線を向ける。

 今日は食堂で6人で固まって昼食をとっている。

「剣術の、試合の事」

 マリが付け加えるとレイはああ、と言う顔になり「実力差じゃない?私の方が弱かったのよ」と全く気にしてない風に言った。

「いや、それは俺も納得出来ない」

 セイジの言葉にレイは苦笑を浮かべ、「買い被り過ぎじゃない?」と言った。そして後ろを振り向いて、

「勝ちは貴女ですよ」

 と困った様に言った。武術科の制服を着たトーナメントの決勝戦でレイと戦い、勝利した生徒だ。

「エクレシア・ミスト。クラスは教えたけど授業の合間に殴り込むのは感心しないよ」

 セイジの言葉に、レイは呆れた目で「教えたのはセイジか」と呟いた。

 選択教科のあと、着替えて教室に戻ると数分も経たないうちに今現在、レイの後ろに殺気立って立っているエクレシアが殴り込んできたのだ。

「納得出来ませんっ!!もう1試合要求します!!」

 レイが机の前に立ち迫って来るエクレシアを動揺する事無く見つめていると先生が入ってきた。

「おい、武術科の生徒が何でここに居る」

 先生がそう注意した数分後、レイはエクレシアを宥めすかし掴み掛かってきそうな勢いの彼女の誘いをキッパリと断っていた最中、先生に言われて探しまわっていたのかセイジともう1人の男子生徒がエクレシアを引き取りにきた。

 暴れだしそうな勢いの彼女を押さえ込み、「ご迷惑をおかけして、すみませんでした」と言って実際に2人の手の中で暴れている彼女を無理矢理連れ戻していた。

 次の休憩時間にも同じ事があり、今度は先程よりも早くにセイジ達が現れ、同じ光景が繰り返された。

 そして昼休み、食事の場にも乱入してきたのだ。

「納得出来る筈ありませんわ!あれは貴女が勝手に負けを宣言しました!!」

「剣が飛んだ時点で、私の負けですよ?」

 同じような会話が何度も繰り返されてその度にセイジ達が止めにきたが今回は授業が無い分、彼女を止める人間が居なかった。

「わざとに決まっていますわ!それに、手も抜いていましたね。貴女に情けをかけられる謂れはありません!」

 食堂中の視線を一身に集めながらエクレシアが叫ぶ。

「私が貴女の剣を弾く前に、貴女は私の手をっ、ふごっ」

 レイは耳障りとでも言う態度で、彼女の口を塞いだ。

「正直に言いますが、迷惑です。ストーカーの様に毎時間毎時間迫ってきて一方的に『納得出来ない』と言われても」

 レイの目は冷ややかだった。その気迫に近くに居た生徒全員が少し後ずさる。

「『手を抜いた』それが何ですか?なんと言えば満足なんですか?はい、と言えば?それともいいえ、と言えば?」

 エクレシアの口を塞いでいた手を離すとレイは言葉を続けた。

「好きな方の言葉を言ってあげますよ。それで貴女が納得し、私に近付かないのであれば」

 身長から見ればレイの方が低い筈なのに、明らかにレイの方が大きく見えた。エクレシアは少し怯んで、

「私がしたいのは、再戦です」

 と小さくなった言葉で言った。レイはすかさず「お断りします」と言った。

 その言葉にエクレシアは、

「ではずっと貴女に付きまとわせていただきます」

 とハッキリと宣言した。その言葉にもレイは「謹んでお断りさせていただきます」と言った。

「ねぇ、レイ怒ってるの?」

 マリアがマリに聞くと、マリは複雑そうな顔をして「怒っては、無いと思う」と囁き返した。

「寧ろ、面倒くさがってる気がする」

 サラの言葉に全員がなるほど、と言う風に頷きあった。

「何故ですか?何故再戦を断るんですか?理由を教えていただけませんか?」

 その言葉にレイは溜息を一つ吐き、「面倒だからに決まっているでしょう?」と5人の予想通りの言葉を返した。

「なっ、そんな理由で私は再戦を断られているんですか!?」

 レイは微笑みながら、「ええ、恐らく」と返した。エクレシアはプライドの高い方なのか顔を真っ赤にしてレイに掴み掛かろうとしたその瞬間、

「教師命令、放課後に君らの再戦を行う」

 その言葉にレイは表情を全く変えずに、エクレシアは嬉しそうに声のした方を振り向いた。そこには選択教科の先生2人が立っていた。

「本当ですか!?」

 掴み掛かろうとした手を合わせて確認するエクレシアに先生は「ああ」と短く返した。

「レイも、いいな?」

 先生の言葉に、

「教師命令なら仕方ありませんね。欲を言えば関係ない人間の立ち入りを禁止して欲しいくらいです」

 とレイは了解の意を示した。男子生徒を担当していた先生は苦笑して「人間。生徒も教師もか」と言い、女子を担当していた先生は、「抜け目の無い」と呟いた。

「まあ、取りあえず。放課後は着替えて選択教科で使った体育館に来て。連れはなしで」

 と言い残すと先生は立ち去ろうとした。

「先生、何故再戦を行う事に決めたんですか?」

 とカナタが質問した。先生2人は足を止めて、

「「武術科の教師から苦情が来た事と、純粋な興味だ」」

 と声をそろえて言った。




 放課後、レイが体育館に着くと、既に先生2人とエレクシアはそこに居た。

「さあ、早く再戦をしましょう!」

 待ちきれない様子のエレクシアにレイは「準備運動してからね〜」と返し軽く素振りを始める。

 軽く準備運動をして体をほぐしたレイはエレクシアの前に立った。先生が開始の合図を出す。レイは一気に殺気を出した。相手は一瞬で腰を抜かした。先生でさえも茫然とレイを見つめている。

 レイは冷ややかな目で腰を抜かしているエレクシアに近付くと剣を振り上げた。その瞬間、誰もがエレクシアは殺されると錯覚した。

 実際には振り上げて軽く首元に当てただけだった。その瞬間、レイの纏っていた殺気は消え失せた。

「な、何ですの。何故ですの!?」

 正気に返ったエレクシアが恐怖を押し殺して叫ぶが、声は完全に震えていた。

「十分理解したでしょう?」

 その言葉に先生達も反応する。

「もういいよね?」

 レイの言葉にエクレシアは頷いたが、まだレイを睨みつけて、

「やっぱり手を抜きましたわね」

 と言った。レイは溜息を吐いて、未だに座り込んでいる彼女に目線を合わせた。

「本気でしてたら殺しちゃうの。大怪我させちゃうの。例え殺傷能力の低いこの剣でもね。私の剣を受け止めた瞬間、両手を骨折したくは無いでしょう?」

 レイは言い聞かせるような態度で目の前の悔しそうな顔をしている少女に言った。

「まだ十分に鍛えられてない上に柔らかい。大人なら大丈夫だけど今の貴女には無理だと思うよ?」

「貴女は私よりも年下でしょう?」

「うん。私の体が異常なんだ。御陰で『化け物』だよ。言ってきた彼女の言葉を否定はしない」

 レイは全く気にする素振りも見せずにさらりと言った。

「前の試合で貴女の剣を弾き返した時、あの一瞬で私の手に剣を軽く当てました。つい反撃してしまいましたが、あれが真剣であれば反撃など出来ていません。それに力を込める前に貴女は剣を離しました。するとさっさと自ら負けを宣言して・・・納得出来るはずがありません!」

 先生達もその言葉にスッキリとした顔になる。

「何か変だな、とは思ってたんだけど。それが真相か・・・分かってスッキリした」

 その後に続く言葉にレイは即答で答えを返した。

「武闘クラブ入らない?」

「お断りします」

 両先生はクラブの顧問なのかレイを勧誘してきた。

「どうして?」

「興味が無いからです」

 2人の先生が残念そうな顔になった。

「他校との試合、楽に勝てるのに!!」

「他を当たって下さい」

 しれっと言うレイに先生が頼み込んできた。

「じゃあ、せめて校内大会位でないか?武闘クラブじゃなくても出る事はできるんだ。上位に入れば交流試合にも出てもらうし」

「・・・断っても、勝手にエントリーさせられそうですから別に出るのは良いですけど。事前に練習なんかする気無いですよ?交流試合に出る事になっても決勝まで残る気も無いですし」

 その言葉に、先生は頷いた。

「高等部の子も居るもの。残れるとは思ってないわ」

 その言葉にレイはニッコリと笑って、「期待されなくて良かったです」と答えた。途端に先生達が残念そうな顔になる。

「闘争心上げようとしても無駄ですよ?」

 それだけ言い残すとレイは剣を返して体育館から出て行った。

 

 

 



 

 

 

 レイは何でもできますね。だからこそ、そこまで何かに熱心に打ち込む、と言う事が少なそうです。

 興味があって調べてみても数日で粗方の知識を吸収してしまいます。勿論、専属教師としてファラルが居るので。ファラルの方がレイより完璧な存在です。

 次は校内大会の模様を書いて行きたいです。

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