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血の契約  作者: 吉村巡
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5:帝国へ

「ね、眠ってる?」

 3人が眠っているレイに近づくとヘルスはそう言った。

「イヤ、起きてる」

 不意にレイが言った。目も開けられていて、幹にもたれかかっていた体もしっかりと伸ばされていた。

「起きているなら、来た時点で何か反応してくれ」

 アルがそう言うと、

「言ったと思うけど。起きてるって」

 はぁ、アルが溜め息を一つ吐くとこの不毛な会話はやめた。

(言い争ってる場合じゃないな)

 そこまで思って気付いたことがあった。

「ファラル殿はどこだ?」

「そういえば、居ないね」

「本当」

 アルの言葉に、ヘルスとロリエも同意した。

 3人がレイの方を見つめると、

「他人の中に居られ無いのがファラルだから。近くに居ると思うけど姿は見せないと思うよ?大丈夫、逃げては無いから」

 笑いながらレイはそう言った。

「結論を出したんだが?」

「大丈夫ですよ。ファラルもどこかで聞いてると思いますから」

「そうか」

 そんな前置きがあった後、3人は座ると

「まず結論から言うと、私達とともに帝国に来てもらう。だが、賊の嫌疑は晴れているのでそのことで尋問されることは無い。ただ、君のこれからのことを考えなければならない」

「これからとは?私は現状に満足していますよ」

 穏やかに言うレイを無視して、

「そして、ファラル殿には自身の魔力について考えてもらわねばならない」

「ファラルが暴走すると怖いからね。私も止めるのに、いつも苦労するもの。怒ったら私の声しか聞こえないって言うし、

私の声も無視するもの」

 3人が絶句していると、

「あぁ、大丈夫よ。あの時に誰かを殺しはまだしていないから」

 笑いながら物騒なことを言うレイに、

「とにかく、結論は伝えた。一応はまだ監視対象なので、ロリエとともに行動してくれ。帝国のことや、国の文化についても教えてもらうように。年齢は13だと言ったな?それを踏まえて、学校で教育を受けることになるかもしれない」

 レイは意味が分からないとでも言うように、首を傾げると長い茶色の髪が遅れて流れてくる。その姿には、13歳には見えない無駄な色気があった。


(アルが、レイの色気に押されてる!!)

 ヘルスが、固まっているアルを見てそう思った。

(色気に負けることなんて無かったアルが!

どんな美女がどんな姿で誘惑して来ても乗ることの無かったアルが!

13歳のレイの色気に!?

実は年下趣味だった?

いや、アルより年下の子も誘惑に来たことはあった。

それに、レイは13には見えない!

レイだからっ!?レイだからなのっ!?アルっ!)

 そんなことを思ってレイの方をまじまじと見ると、見れば見る程惹かれる顔立ちと雰囲気だった。

(一度見たら、忘れられない・・・よね。こんな綺麗な顔)

 見れば見る程そう思った。

(そう言えば、ファラルさんにも凄い色気があったな。男の人なのに・・・羨ましいな)

 ヘルスはそんなことに考えを飛ばしていた。

「ヘルス?どうしたの?」

 ロリエが小声で聞いて来た。

「何でも無いよ」

 ヘルスはそう言って軽くロリエに笑いかけた。


 ヘルスがそんなことを思っている間も、アルはレイに説明を続けていた。

「まぁ、監視対象と言っても私達は君とファラル殿を保護している、という風に扱うつもりだ。たとえ道中トラブルがあったとしても、駆り出すことは無い。君の道中の寝泊まりはロリエとともにしてもらう。ファラル殿は、恐らくベクターになる」

「多分、お世話になるのは私だけだと思います。ファラル、一人で後追って来ると思うし」

 というレイの言葉に、

「それは無理だ。この小隊の馬は、全てベクターが育てている、普通の馬で三日かかる距離を半日で行ける。追いつける訳が無い」

 フフッ、とレイが笑うと、

「ファラルって、あり得ないことを涼しい顔で、何でも無いようにこなすんです。その気になれば半日でこの地の裏側に行けると思ってしまう程ですから、大丈夫です」

 そう言うレイに、

「それでは、監視できないだろう?」

 アルがもっともなことを言うと、

「帝国にはどのくらいの時間がかかるんですか?」

「精々、二日〜三日だ。トラブルがあればもう少しかかると思うが。明日の朝、事後処理係を残し私達は賊を連れ出発する予定だ」

「じゃあ、毎日夜には出て来てもらいます。もしもファラルが居た方が良い時があるなら呼びますし」

 レイが笑ってそう言うと、アルは少し考え込み、

「妥協しよう。しかし、本当に付いて来られるのか?」

 なおも不安があるようなアルに、

「大丈夫ですよ。保証します」(だって今、私の中に居るし)

 と笑いながら言った。

「じゃあ、早速!私のテントに来てっ」

 ロリエが待ってましたとばかりに嬉しそうに声を上げた。

「ロリエ、はしゃぎ過ぎるなよ?レイに色々、ちゃんと教えてやるんだぞ」

 アルがたしなめるように言うと、ロリエは、

「は〜い。ごめんなさい、アル君」

 と、怒られた子供のように返事をした。

「ごめんね、レイさん。ロリエ、年の近い女友達少なくいし年下の子に友達居ないから。多分レイさんと一緒にいられることが嬉しいんだよ」

 ヘルスが庇うように言うと、

「本当に、ヘルスはロリエに甘いな」

「当たり前だよ、年下で、しかも女の子なんだから」

 笑いながら堂々と言うヘルスに、

(イヤ、年上ぶってるから外見のコンプレックスもあると思うけど・・・。あっ、もしかして下心もあり?)

 レイがそんなことを思ていると、

「まぁいい、ロリエ、お前のテントにレイを案内しろ」

 アルがロリエにそう言うと、

「はい。行こうレイちゃん。それと、ヘルスちゃん。ありがとう、かばってくれて」

 にっこりと笑ってレイの手を握りながら、ヘルスにお礼を言うと、レイを引っ張りながらテントに連れて行った。

 


 二人が見えなくなると、

「本当に、ロリエには甘いな。顔赤いぞ?」

「うるさいな、アル。年下のクセして、生意気なんだよ。黙れ」

 顔に似合わない言葉で、ヘルスが言うと、

「イヤ、本当にロリエが好きなんだな〜と思ってね」

 茶化すアルに、

「そろそろ本気でシバクぞ?」

 笑いながら、ドスの聞いた声で言うヘルスに、

「遠慮しておきますよ」

 そう言うアルに言い返すように、ヘルスは、

「そう言えば、アルもレイに見とれてたよな?」

 と、意地悪く返した。

 うっ、と固まるアルに、

「女にうつつはぬかさない、惑わされないって言ってたの誰?」

 言い返せないアルに、

「色々努力してるのは知ってるけど、俺より強くて自分を律せる人だとも思うけど、やっぱりアルも俺らと同じだな」

「女にうつつはぬかさない」

 そう言うアルにヘルスは、

「頑張ってね〜。恋愛初心者」

 と笑いながら返した。

(からかうんじゃなかった)

 ヘルスは自分の顔と、ロリエのことでからかわれるのを嫌う。

 それを知っていて振った話題だが、自分に付け入る隙があると返り討ちに遭う。ということを学んだアルシアだった。

 

 

 

 

 ヘルス君、性格悪いですよね。でも、ロリエちゃんには凄く甘いんですよ?女の子の中でも一番優しく接してるんです。

 アル君は、恋愛未経験の純情少年です。そんな意味で、恋愛面の精神年齢的に大人なのは、

 1・ファラル  2・ベクター  3・ヘルス  4・レイ

 5・アル    6・ロリエ

ですかね。

 皆さんのご意見も聞いてみたいです。

(ちなみに、レイは客観的な方で、ヘルスと同じくらいですが、自分がその立場になったら、最下位でしょうね)

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