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血の契約  作者: 吉村巡
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46:アルへの相談

 一日が終わり【蓮華館】に帰ってきたレイは自分の部屋に荷物を全て置き、制服から着替えると一つ頼みごとをする為にアルに会いたいと考えていた。

 取り敢えず部屋から出てアルが暇かどうか誰かに聞こうと思っていた矢先、階段から足音が聞こえた。上にあがって来ているらしく足音は近づいている。レイは取り敢えず階段に近づいた。

「レイさん、お帰りなさい。学校は楽しかったですか?」

 上がって来ていたのはお盆に飲み物を容れたカップを手にしているマーシャルだった。

「ええ、御陰様で友達と言う者も出来ました。でも、中途半端な時期に編入したみたいで休暇がそろそろあるらしくて・・・課題があるみたいなんですけど、どうなるか。マーシャルさんは誰かに頼まれたんですか?」

 レイがカップを指差して問う。

「アルシアさんに。仕事が漸く一段落したみたいで」

 マーシャルの言葉にレイは微笑んで、

「丁度いいです。少しアルに聞きたい事があったし、私が持って行きます」

 とマーシャルに言ってお盆をサッと受け取った。いつの間にかレイの手にあるお盆にマーシャルは呆気にとられていた。見事な早技だった。

「でっ、でも」

 慌てて断ろうとするマーシャルにレイは既に上に向かう為に歩き出しながら、顔だけで振り返って、

「手間が省けるし、何も持たずに行くより口実が出来ますから」

 と言って譲る事は無かった。




 アルの部屋の扉をノックすると、直ぐにアルの入室許可の声が聞こえた。

「代わりに持ってきました」

 レイの姿を見て吃驚しているアルにレイは簡潔に状況を説明する。

 アルの机の上にカップを置きながら、レイは本題を切り出した。

「迷惑でなければ、私の相談に乗って頂けませんか?」

 突然のレイの言葉にもアルは動じる事無く、笑って「勿論」と頷いた。

 アルの仕事用の大きな机の前でレイはこれまでの経緯と学校での近況を掻い摘まんでアルに説明した。

「それで、課題はどんな事をするの?」

 アルの疑問にレイは悪戯っ子のような笑みを浮かべて「それは終わってからのお楽しみです。今は絶対に言いません」と答えた。

「そっか、残念。興味があるのにな。レイがどんな事調べるのか」

 アルは笑ってそう答えた。それでもレイがいまだ相談をしていない事に気付いているらしくアルの方からレイに言いたい事を言うように促して来た。

「それで、私にどんな相談があるんだ?」

 レイが切り出しやすいようにとの配慮だろう。レイは遠慮なく切り出した。

「ファラルを来週一週間程仕事を休ませる事は可能ですか?課題の為に必要な薬草の採集の為に旅に出たいと思っていて。確か、課題には新人の兵士や騎士等を旅の際には同行させる、と課題の規則に記載されていたので」

 アルは少しだけ考え込んでレイの言葉を吟味し、

「確かに、課題の同行人に魔術師がなる事もある。国外への任務も無いし、暫くは書類仕事だろうな。手続きやら顔合わせは済んだし・・・」

 とブツブツと呟く。レイは神妙な顔でアルの出す結論を待つ。

「良いだろう。ファラル殿には仕事が行かないようにしておこう。手続きもしておかないとな」

 結論はレイが望んでいた事だ。

「ありがとうございます」

 レイはしおらしく感謝の言葉を述べる。ついでに疑問に思っていた事も聞く。

「それと、何故ファラルの事を『殿』付きで呼ぶの?立場的にはアルの部下でしょう?」

 “殿”の意味・・・氏名、役職のあとに付ける。身分の高い者に対して敬意を表す為に用いる。

 アルは困ったように苦笑して、

「そうだな。彼の実力を認めているから、かな。公の場では使わないが、内輪の者の前では使いたくなるんだ。彼が17と言うのは嘘だろう?だが、もしそうならば、君を助けた時に彼は君と同じ13という事になる。その歳から君を守り続けていたという事になる。それは年齢に関係なく、凄い偉業だと、私は思う。だからこそ私は彼に敬意を払いたいと思うんだ」

 と言った。レイは照れるでも無く、

(やっぱり、ファラルが17歳というのには無理があるか・・・)

 と思っていた。それでも、

「ええ、私は彼に育てて貰ったも同然です。彼の事を認めて下さってありがとうございます」

 と無難に答えておいた。

 ファラルとレイは契約を交わした関係であり、ファラルがレイを守る事は当然の事で、レイも対価である血を与えていることで守ってもらっている。つまり、守る事が当然なのにそれを褒める必要は無い。

(感謝はするけど、褒める必要は無いんだよね)

 レイは冷静な頭でそんな事を考える。

「相談はもう無いのか?」

 アルは笑顔で聞いてくる。レイは、

「はい。無理を言って済みませんでした」

 と言って頭を下げた。アルは、

「いや、お易い御用だ。相談があれば何時でも言ってくれ。あと、二度旅に出るつもりなのだろう?二度ともファラルが付いて行けるように取りはかろう」

 レイは顔を輝かせ、

「ありがとうございます!」

 とお礼を言った。

「それでは、失礼します」

 レイは数回アルと言葉を交わした後、また頭を下げてアルの部屋を退出して行った。

 


 

 

 アルは基本的に認めた者には敬意を払います。例え、立場がどうであれ・・・。認める程の実力を持つ人は少ないですが、一応部下には全員敬意を払うし、学園の教師にも敬意を払います。反面どうしても嫌悪する者も居るのでそういう者には我慢しながらも嫌悪感は溢れ出してきます。

 レイの事は可愛がっています。年下だという事と、まだレイが本性を見せていないから、が理由になります。なのでレイの頼みは可能な限り聞く人です。

 ちなみにファラルは何よりもレイを優先する人。

 

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