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血の契約  作者: 吉村巡
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39:結果通知

                  チュン チュン チュン

 

 鳥の鳴き声が聞こえる。その鳴き声でレイは目覚めた。

 ボーッとする頭で思考を巡らし固まった体をほぐす為に伸びをすると、傍らに居るファラルの方へ視線を向けた。

 ファラルは本を読んでいたらしく手には読みかけの本が置いてあった。だが、視線はレイに向けられている。穏やかな表情をしていると思うのはレイだけではないだろう。

「おはよう、レイ」

 ファラルが朝の挨拶をすると、

「おはよう、ファラル」

 とレイも挨拶を返した。

「朝の5時丁度だ。よく眠れたらしいな」

 今日のファラルは人が変わってしまったかのようだ。夜のうちに何かあったのか?と思ってしまう台詞だ。

(いつもいつも、恥ずかし気も無く色んな台詞を言うけど今日は一段と・・・まともな台詞を言うと言う事は)

「ファラル、力を制御するのは良いけど、発散しても良いんだよ?少し位大丈夫だから。そこまで忠実に制御しなくても良かったのに・・・」

 レイが呆れたようにそう呟く。

 ファラルの瞳を覗き込んで、ファラル。と問いかけると、心得ているのかファラルもレイの目を真っ直ぐに見る。

『溢れ出る力を この世界の器であり 契約者と契約主の関係である 私に移したまえ』

 繋いだ手から魔力がレイの方へと移る。魔力は苦もなく定着して行く。

 レイがゆっくりと瞳を閉じると呪文の効力は消えた。

「元に戻った」

 レイが疑問系などつけずに言った。

「あぁ、すまない」

 素っ気なく、何時ものファラルの口調と表情に戻った。

 あのままでも暫くすれば戻っていただろうが、先程のファラルの言動には違和感がある。時々、ファラルは制御に集中し過ぎて人格が変わる。

 人格が変わるのには込み入った事情が色々とあるがあの姿で、あの人の言動は止めて欲しいと切実に願う。

 ファラルの記憶だけであんな顔を見せられるのはたまったものじゃない。

「そろそろアル達が起きる時間よね?」

 レイが着替えながらそう言う。

 結局魔力の移し替えに一時間かかったのだ。

 今は、朝の6時。朝日は昇りきり窓の外から日の光が入ってくる。

「結果発表ねぇ〜」

 レイが呟くとファラルは、

「知りたく無いのか。自信はあるのだろう?」

 と聞いて来た。

「はっきり言うと、どうでもいい。ファラルといれる時間が短くなる。何するか分らない」

「私も、レイもな。歯止めが利かないからな」

 ファラルが無感動に物騒なことを言う。                      (ャ)

「結局、そうなっちゃった場合はそのまま行こう。なんかどうでも良くなった。確実に何人か殺るだろうから止めても意味ないや。ファラルが来るまで全力で暴れちゃおうかな〜」

 レイが笑顔でそんなことを言った。

「好きにしろ」

 ファラルはどうでも良さそうに答える。結局ファラルはレイが無事であればそれで良いと思う人だ。





 顔を洗って食堂へ行くと既にベクター以外の全員が朝食を摂っていた。

「おはようございます」

 レイが笑って皆に挨拶する。

「おはよう」

「おっはよ〜レイ」

 アルとロリエが返してくる。

 ヘルスは低血圧なのかボーッとしている。

 ベクターがいない理由は動物の世話だろう。

「今日が結果発表か・・・何時頃届くんだろう?」

 ロリエがそう呟く。

「午前中には届くだろうな。後数時間だろう」

 アルがロリエの疑問に答える。

 レイはファラルの持って来てくれた朝食に手を付ける。

「あんまり緊張しないんだね〜。知り合いの話では物が喉を通らなかったって言ってたのに・・・」

 レイは朝食を食べている途中でロリエに顔を覗き込まれしみじみとそう言われた。

 アルはヘルスがボーッとしていて皿を落としそうになるのでヘルスを起こしに掛かっているし、ファラルは黙々と朝食に手を付けて行く。

 噛んでいた物を飲み込んで、レイはロリエの言葉に、

「試験に落ちたからと言って私の人生に何の影響も無いから、かな。元々試験を受ける事なんて無いと思ってたから」

 と笑って返した。

 ロリエは目を見開いた後、そっか。と言って笑った。

 


 


 朝食から数時間が経った。アルの指示で全員がアルの部屋の仕事部屋に居る。

「学園からの通知が先程届いた。これから開封を行なう。レイが開けるんだ」

 そう言って、レイに一通の厚い手紙とペーパーナイフを差し出した。

 2つを受け取ると、レイは素早く手紙の口の所にナイフの刃を当てると躊躇い無く切った。

 取り出しやすいように手紙の口を開けると、中にあった他の紙とは微妙に色の違う紙を取り出す。

 結果は、

「特別編入試験合格、レイ殿の本学園入学を許可する。

 帝国立ティラマウス学園学園長 ランド・バーアス・スターレット・ティラマウス」

 レイが手紙の内容を読み上げる。

「ヤッター。おめでとう、レイ!」

 ロリエがレイに向かって歓喜の声を上げる。

「やっと肩の荷が下りた。これから制服や教科書の準備に忙しくなる」

 アルも笑ってそう言う。

「おめでとう」

「良かったな」

 ヘルスとベクターも賛辞を述べた。

 ファラルは何も言わず、何時もと同じようにレイの近くに経っている。

「ありがとうございます」

 レイは笑っておめでとう、と言われた言葉に感謝の言葉を返す。

「学園の中でも一番可愛い作りなのが普通科でね、12学年は中等機関だから制服の色は青で、特別編入試験での合格だからリボンじゃ無くてネクタイで色は紺色!誰にでも一目置かれるようになるんだよ?」

 ロリエがさも自分の事のように誇らしげに言う。

 レイは笑ってロリエの言葉を聞いていたが、内心ではこの合格通知を喜んではいなかった。

(繰り返す、悲劇。人とは本当に愚かな生き物だ・・・)

 そう思うと、笑えて来た。

 その笑いをどう取ったのか、アル達も嬉しそうに笑う。

 ファラルだけがレイの笑いの意味が分かるだろう。

 

 その日、その瞬間、レイの未来が決まった。

 その手を血に染める事が決まったのだ。

 本能のままに、血に塗れると言う運命からレイはもう逃れられない。

(その時、私の側にいるのは一人の私にだけ優しい悪魔だけ)

 レイはそんな事をぼんやりと考えた。

 心の奥にある泣き叫ぶような感情を頑丈な箱の中に閉じ込めて何重にも鍵をして、目を背けた。

 気付いたら、戻れない。




 

 次は色々学校に入学する為の準備です。

 因に、レイの制服になる予定の紺色のネクタイは今の所学園に数人しかおらず、紺色のネクタイは実力を認められているとも言われています。

 紺色のネクタイの色は全学年を通して同じで、皆と同じになるのは学年の機関が変わる時だけです。(例ー初等機関から中等機関に変わる時)

 

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