3:昔話
《私の住んでいる所では、何年かに一度、女を悪魔に捧げるのです。
私はそれに選ばれました。
覚悟は、していたつもりです。親も、兄弟も、身寄りもいなかったから。
捕らえられ、悪魔の生け贄の印を付けられ、つながれて、もう諦めていたんです。
それに、それで皆が満足なら、それで皆が幸せなら、と。
そして私は儀式の場へ連れて行かれ、暗闇の中、ずっと悪魔を待っていました。
悪魔は、いつの間にか目の前にいました。
赤く、飢えているような目で、私を見ていました。
悪魔は、私に近づくと、首筋に牙を立て、私を食べ始めました。
抵抗も、何も出来ず、私の意識はそこで途切れました。
次に目を覚ました時に、生きていると知って驚きました。ずっと、死んだと思っていたのに。
ファラルが助けてくれていたんです。
悪魔を倒すことは出来なかったけど、追い払うことは出来たと言って、生死の境を彷徨っていた私の面倒を見て、私が
目を覚ました時教えてくれたんです。
私は取り敢えず、ファラルに頼んで村へ行きました。
悪魔に捧げた子が帰って来たことは無いから私は儀式から逃げたんだ、と叫ばれました。
これからやって来るかもしれない恐怖に、皆、狂いました。
呆然とする私を連れて逃げてくれたのがファラルでした。
住んでいた所から遠く離れた所へ、逃げました。
住んでいた所は、風の噂でほとんどの者が逃げ、消滅したと聞きました。
ファラルは私を連れて旅に出てくれました。置いていくことも出来ましたが、私がそれを望みませんでした。
四年程前の話です》