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血の契約  作者: 吉村巡
35/148

34:校内見学(剣術)

「色々あったな〜。なんて言うか、色んな意味でさっきのは疲れた」

 ロリエが不意にそんなことを言う。

「まあ、ね。暴走なんて早々ないし、当然だよ。あの生徒の今後はどうなるかな?」

 ヘルスがロリエの意見に同意し、さもどうでもいいという感情を上手く隠しながら同情した。

「良くて停学、悪くて留年じゃないのか?」

 アルが投げやりに答える。緊張感を削がれたせいかもしれない。

「いや、元々の素行が悪ければ退学だよ。良くて学科変更」

 ヘルマン先生の言葉に全員がギョっと目をむいた。

「そんなに酷い処罰を?」

「ああ、最悪の場合だよ。何も対処をしていなかっただろう?あれじゃ、実践で使い物になりはしない。そんな者の為に割く人員は居ない。若い内から自分の力に溺れてしまった生徒の末路は、君が一番良く知っているだろう?アルシア君。自分の実力を測れない者は危険でしかない」

 レイには処罰の恐ろしさが分らない。

 学科が変わろうと別段何を学びたいとも思っていないので学科が変わろうと何も思わないだろう。

「学科変更って何?」

 レイがロリエに質問する。取り敢えず、興味を持ったは知っている人に聞くのが一番だ。

「そうよね、レイは入学してないから知らないのよね。学科変更って言うのはね、言葉通り学科の変更の事。処罰の場合、正式には強制学科変更、って言われるの。普通科や剣術科なんかに行かされる事が多いらしいけど、成績を見て判断されるらしいわ。毎年何人か居るのよ、そんな人が」

 レイには関係ないだろうけど、と思っていそうなロリエの口調と表情にレイは内心苦笑していた。

「どうして強制学科変更が処罰なの?」

 レイは再度質問をした。それにはヘルスが答えた。

「それは、《適性無し》って判断されて他の学科に飛ばされるんだ。その道を夢見ていた生徒にとっては最悪、夢見てた未来が断たれるってことを意味する。だから、その生徒にとっては罰でしょう?しかも、強制学科変更になった場合、前の学科の学年より下の学年で勉強する事になるから、精神的にも辛いだろうね〜」

「でも、一年に一度。学科変更試験って言うのがあるからそこでテストをクリアすれば適性と判断された学年からになるけどその学科に戻れるの」

 ロリエがヘルスの言った言葉に簡単に補足する。

「じゃあ、普通の学科変更って学科変更試験を受ける事?」

 レイの疑問にアルが、

「ああ、そう言う事だ。武道科の者の怪我などの理由で一旦普通科に転科して完治後また戻る等の特例を除いて、殆どは最初入りたい学科に入れなかった者が先生の教科を取って実技と筆記と面接を受けて合格した者がだけが晴れて転科出来る。先生に勧められて形だけ受けただけだが受かった、という場合にも学科変更取り消しに出来る。というのも強制学科変更との違いだな。因に、罰以外で強制的に学科変更せれる事は無い。あくまでも、個人の意思で他人に勧められて受けて受かったとしても最後には自分の意思が通せる」

 と説明してくれた。

「確かに、学園史でも強制学科変更以外に強制的に学科を変更させられた生徒は居ないわ。全て個人の意志よ」

 レイは一つの矛盾に気が付いた。

“それでは、変更したくても変更出来ない者が出てくる。許可が必要だから”

「個人の意思なのなら、何故許可が必要なんですか?」

 レイが皆にそう質問する。

 ヘルマン先生が一瞬目を細めた。何かを探るような鋭さがあった。

 レイもファラルもそれに気付いたが気付かない振りをした。

「それは、恐らくどう足掻いても無理な者に試験を受けさせるのは無駄だからだ。才能・魔力がないのに魔術科に入ろうとしても入れる筈が無い。そんな者が試験を受けようとして他の勉学を疎かにしては元も子もない、そう言う理由があるんだと思うが?」

 アルが答えてくれる。

 確かにそれもあるだろう。だが、それだけでもないだろう。

(魔術で有り余る才能がある者が、普通科など特別な才能が必要ない学科に行くのを防ぐため。一種の鎖だ、そんな者には自主退学の道さえ無い。残す方法は問題を起こし、退学させられて監視される茨の道。どれも、悪夢だ・・・気付かなければ幸せな・・・。ここは、鳥籠か。扉は開いているが首には首輪がつく、気付いた者だけが苦しむ。・・・・・・・幸せそうに何故過ごせるんだろう?この鳥籠は私の憎悪の一つなのに)

 レイは笑いながら、冷めた心の中でそんな事を考えていた。

「そうなんだ、校則って凄くよく考えられてるモノなんだ。通った事無いからよく分らなかったけど、どんな校則にも意味があるんだ〜」

 レイは感心したようにそう言う。ヘルマン先生の顔は先程と同じように飄々とした悪戯っ子のような表情を浮かべていた。

(校則は、拘束か・・・)

 レイは思考の連想の中でそんな言葉遊びを思いつき、気付かれないように笑みを漏らした。

(私には関係ない。首輪につながれるのなら鎖ごと引き千切る。鳥籠の鍵が開かないのなら自分かファラルが壊す。そしてまた旅に出るの、全てを終わらせて・・・)

 先は決まった。また旅に出よう、全てを終わらせた後は。

「ところで、次の見学は何処にするの?皆」

 ヘルマン先生が話題を元に戻す。

「ああ、その問題があったな」

 アルが呟く。皆がまたどこに行くのか悩み始めた。

「それで、思ったんだけどね。剣術でも見に行かない?アルシア君と勝負したいな〜」

 ヘルマン先生が皆が悩み始めた頃にそう言った。

「皆どうする?」 

 アルが全員に問う。

「別に私は良いわよ?どうせ行く所が思いつかないんだもの」

 ロリエの意見。

「僕も良いよ」

 ヘルスの意見。

「私は先程と同じ意見です」

 レイの意見。

「レイが行く所について行く」

 ファラルの意見。

「決まりだな」

 アルが皆に向かって言った。

「剣技場に行こう」

 意見は決まった。



 キンッ カンッ

 

 剣技場の中は刃先と刃先のぶつかり合う鋭い音が聞こえてくる。

 危険なので刃先は潰してあるんだろうが、生徒は丈夫そうな専用の服に身を包んでいる。

「久しぶりだね、アルシア君。また手合わせ願いたいものだ」

「お久しぶりです、サターン先生。今回はヘルマン先生と手合わせをする予定なので、その後でよければ是非」

 アルと握手を交わしているサターン先生と呼ばれた三十代半ば程の男の先生は動きやすそうなで丈夫そうな生徒よりも格段にグレードの高そうな服に身を包んでいる。

「あの先生は剣術の先生の中では一番剣術の対戦の時に手加減してくれるの。でも、悪い事した生徒には容赦ないらしいから。あの先生に本気で怒られた生徒の中に学園で一番の問題児が居たらしいんだけど、その生徒が一番評判がいい生徒に変わったらしいっていう噂が流れたぐらいだから、一応気をつけた方が良いわよ」

 ロリエがレイに耳打ちしてくる。

「よし、皆!今から休憩をかねて模擬試合を見てもらう。試合が終わればまた練習の再開だ」

 サターン先生の言葉に全員静かになって、言葉を聞き終えると同時に剣を鞘に収めて剣技場の端に寄って真ん中を開け始めた。

 レイ達は元から端に居るので関係ない。

「では、アルシア君、ヘルマン先生どうぞ。後半からは生徒に指導をお願いします」

 サターン先生が大人の笑みを浮かべる。

 アルもヘルマン先生も苦笑して頷いた。こうなる事は見越していたのだろう。

「君は特別編入試験受験者の・・・」

 アル達が準備している間、サターン先生がレイに話しかけて来た。

「レイ、と申します。帝国へ来る前は旅人をしていたので名字はありません」

 何度目かになる答えをまた返した。

「では、そちらの方は?」

 サターン先生はファラルの方を見てそう質問した。

 面倒くさくなったのか、ファラルはレイに視線を向けただけで何も答えなかった。

「彼は私の保護者でファラルと言います。彼と一緒に旅をしていました」

 レイはファラルの意図を汲み取ってファラルの代わりにファラルの紹介をした。

「そうですか、見た所、御二人とも腕が立ちそうですね」

 サターン先生は立ち振る舞いでそんな事が分るらしい。レイは漸く実力を見切るものと出会えた、と思っていた。隠してはいたが少しは小出ししていたのだ。

「そんなことを言って下さったのは先生が初めてです。光栄ですね。・・・剣術は少々齧っていますよ?丸腰で旅に出るなど自殺行為ですから」

 レイは笑って建前を口にした。

 だが、実際にそうだろう。まだ十年も習っていない。

 それでも、強さに時間は関係ない。否、レイとファラルにとって時間とはもう意味のないものだと思える。

「そうですか、では、生徒の誰かと一戦交えてみませんか?」

 サターン先生は唐突にそんなことを言った。

「良いですが・・・何故ですか?」

 レイにはそこが疑問だ。

 サターン先生は、何か裏がありそうな笑みを漏らして、

「貴女の実力を知りたいからですよ」

 と言った。

「「お願いします」」

 アルとヘルマン先生の声が重なった。レイとサターン先生の会話はそこで打ち切られた。

 今から二人の試合が始まる。



 二人はリラックスしているように見えた。間は必要最低限の広さで取られており、一歩踏み出せば刃先が相手に届くだろう。

 最初に動いたのはアルだった。


 キンッ

 

 ヘルマン先生はそれを横にして受け止めた。

 また間が取られる。

「また一段と、強くなったな・・・」

 隣に居るサターン先生の呟きがレイの耳にも届いた。

 レイからしてみればアルもヘルマン先生も本気を出しているようには思えない。だが、アルの太刀筋が良かった事も力の入れ方も完璧だった事も認める。

 次に動いたのはヘルマン先生だった。不意に体制を低くしアルに切り掛かった。

 

 カンッ


 アルはその剣を軽く受け流す。その瞬間、相手の剣を左に流しアルは少し足を右に動かして位置を移動し受け流した時に左に向けていた剣を一気に右に引いた。

 当てる事はなかった。それは、当たる直前に二人の動きが止まったからだ。

「勝負あり、勝者アルシア」

 ヘルマン先生は溜め息を一つ吐き、

「一段と強くなったね、もう勝てないか・・・」

 そう言うと、ヘルマン先生は体勢を立て直した。アルも剣を鞘に収める。

「前よりも動きに無駄がなくなったな、対処の判断も早くなった。恐らく、私よりも強くなったんだろうな」

 サターン先生がアルに近づいてそんなことを言う。

「お褒めに預かり、光栄です。これからも精進していきます」

 アルは形式的な口上でそんなことを言った。

「そうか、日々精進。皆も努力を怠るな!休憩は終了だ。練習を再開する。アルシアとヘルマン先生には特別講師をしてもらうので手合わせ願え。・・・それと、セイジ!剣を持って来い、彼女の相手をしろ」

 セイジと呼ばれた生徒は少し戸惑いを見せながらも、剣を携えてレイの元へやって来た。

 剣技場の中には女生徒も居るが呼ばれたセイジは男子生徒だった。濃い金髪にエメラルドの瞳。まだ成長途中なのか体格はさほど大きくはなく、青年というよりも青年に入りかけの少年だ。つまり、やや童顔。でも筋肉のつき方のバランスはいいし、顔の造作は典型的な王子顔、と言っても良い。

「レイ、セイジと相手をしてみろ。レイ、セイジはこのクラスの中では3番手ぐらいの実力だ」

 サターン先生は鞘に入ったままの剣を受け取ってレイに渡し、事も無げに言う。

 そんな相手と実力が未知数の元旅人のレイを安易に戦わせていいのかは甚だ疑問だが、戦う事になってしまった。

 レイは冷静に淡々とその事実を受け入れ、差し出された剣を受け取った。

 相手となるセイジと言う男子生徒はまだ戸惑っていた。

 周りがスペースを空けてくれる。練習しているものが殆どだが、アル達は指導の手を止めてレイの方を注目していた。自然と指導をお願いしていた生徒の注目も集める。

「セイジさんと御呼びしても?」

 レイは戸惑い続けているセイジにそう呼び掛ける。セイジは少し驚いたような顔をして、

「君は何て名前なの?同い年だろうから、さん付けいらないよ」

 と言って微笑んだ。

「私の名前はレイです。セイジさんは15、6歳くらいでしょう?私の歳は13歳ですから私の方が年下だと思ったんですけど・・・」

 レイが微笑み返してそう言った。

 周りの生徒はレイの微笑みに魅了されていた。そして、相手のセイジは微笑みに頬を染めながら、レイが言った13歳という言葉に驚いていた。

「じゅ、13?」

 セイジが繰り返して言った。

「ええ、スカートで動きにくいですし、手加減をお願いします」

 レイが笑ってセイジにそう言った。

 セイジはレイの言葉に軽く笑って、

「ごめん、出来ない注文だ。どんな相手にも全力で真剣に、が僕のモットーだから」

 と言った。レイはこの言葉が気に入った。相手の実力も測れない弱い人間が手加減などと馬鹿な事を言い出すのなら叩き潰そうと思っていたからだ。

「そうですか、残念です。それでは、私も奮闘しましょう!」

 その言葉が引き金となった。

「「一戦、よろしくお願いします」」

 二人は同時にそう言うと、刃を潰した剣を抜き間合いを取った。

 セイジの構えは型にはまっていた。

 

 セイジがまず踏み込んでくる。

 

 ガキンッ

 

 刃と刃がぶつかる音がした。セイジの振りは一つ一つが重い、と言われていた。この学校の同年代でも初手をしっかり受け止められる者は三人に一人、と先生にも言われている。

 だがレイは表情も変えず、立ち位置も変えず、ただ剣を持つ腕を上げてもう片方の腕を添えてその剣を受け止めた。

 見ていた先生と生徒の表情が驚きに満ちたものに変わる。

 レイは口元の笑みを崩さずに、セイジの剣を軽々と返した。

 一瞬セイジは驚いたような表情になるが、思考を切り替えたのか鋭い突きが何度も繰り出される。

(見た目以上の相手だと今頃気が付いたのか・・・)

 

 キンッ キンッ キンッ


 レイは全く焦りも慌てもせずに淡々と口元には涼しい笑みを浮かべて繰り出される剣を全て受け止める。

(この子、強い!)

 セイジはレイとは違い焦り始めていた。

 剣の太刀筋は変わらなかったが勢いに焦りが生まれている。

 レイは漸く一歩動いた。セイジの剣を跳ね返して軽く剣を振り下ろした。

 それだけでセイジの剣が床へ叩き付けられた。

 恐らく剣を強く握るようになり、焦りから手に汗をかいて滑りやすくなったんだろう。

 そして、もう一つの理由は剣を振り下ろす際に刃先だけでなく鍔の部分でセイジの手を小突いていたからだ。

 だが、その痛みは振り下ろした際の衝撃で気にならない。

「・・・私の勝ちですか?」

 レイがセイジに呟いた。セイジは目を丸くして呆然としていたが、すぐに正気に戻った。

「そうだよ、僕の負け・・・君、強いんだね。こっちが手加減して欲しい位」

 セイジは剣を拾い上げ、レイに握手を求めた。

 レイはそれに応じて差し出された手を握り返して、

「自分でも吃驚です。実践で何度か人攫いの方と戦う事がありましたから、自然と実力がついたんでしょうか?」

 と笑って返した。

 手加減して欲しい、とセイジは言ったが、十分手加減したつもりだ。

 周りの音が消えているのに今気が付いたのかセイジが周りを見回す。

 生徒も先生も少し離れた所で二人の対戦を見ていたのだ。

 近くに居たアルに何か話しかけたサターン先生がアルに幾つか質問した後、レイの元へやってくる。

「セイジ、学年3位のお前が負けるとはな・・・想像以上だ、互角かと思っていた。惜しいなぁ、どうして希望先が普通科なんだ?剣術科でも遜色無いのに・・・」

 本当に残念そうにそう言う。

 セイジはその言葉に驚いていた。

「君が噂の受験生!?今の時期には試験が無いから特別試験受験者だろ、試験どうしたの?」

「いえ、午前のテストが早くに終わったので見学に・・・」

 レイのその言葉には驚くべき所がある。

 見学する余裕がある、という事とテストが早く終わったという事だ。

 セイジはレイの言動に言葉もない様子だった。

「普通科か。でも、剣術は必修選択科目の一つだから入学したら是非選んでくれ」

 サターン先生がそう言うので、

「分りました、無事入学できれば剣術を取りたいと思います」

 と答えておいた。

 周りの生徒は未だに展開について行けていないようだ。

 練習もせずにポカンとレイとセイジとサターン先生の三人を見つめている。

「ほらほら、全員手が止まってるぞ!練習と言っただろう!?」

 先生が急に叫んだ。

 生徒達の練習が再開され、アル達の周りには教えを請う生徒が大勢居た。

 レイは先生に剣を返そうとしたが、その前に二人の生徒が先生に駆け寄って来て、

「先生、彼女に相手をしてもらっても良いですか?」

「彼女と一戦交えたいのですが、許可して下さい」

 と言った。最初に言ったのは男子生徒、次が女生徒だった。

 この場合の“彼女”とはレイの事だ。

「どうしますか?レイ」

 サターン先生がレイに聞いてくる。

「セイジさんと対戦して精神的に疲れました。申し訳ありませんが御断りさせて頂きます。このまま対戦してしまったら怪我をしそうなので、それに、午後からもテストがあるので体力は残しておかないと」

 レイは理由をしっかりと付けて断った。

 二人はがっかりしていたがレイの言い分に納得してくれた。

 代わりにセイジが誘われ、見送った後先生に剣を返す際に、

「あの二人はこの学年の一位と二位だ。全校の中でも強い。特に男の方は全校でも一桁に入ってる程だ」

 と言われた。

「そうなんですか、断って正解ですね。大怪我して負けてしまいます」

 レイは冗談を含んだ真剣な口調で取ってつけたような真面目な顔でそう言ったが、先生は、

「だが、君は彼に勝てるだろう?」

 鋭い指摘をされた。確かに、実力も分らずに対戦を申し込むような真似、レイはしない。

「買い被り過ぎです。私より強い人を私は知っています。その人の実力を見れば私なんて脆弱に見えますよ」

 レイはファラルの事を考えながらそんなことを言った。

 尚も何か言おうとした先生の言葉を遮るように鐘の音が鳴った。


 カーン カーン カーン

 

 昼時を告げる合図だ。

「レイ、そろそろ移動するぞ」

 アル達が近づいてくる。

「はい。サターン先生、すみません。話の途中ですが失礼します」

 レイは強引に会話を打ち切り、アル達の元へ駆け寄って行き、ファラルの隣に立って先生に挨拶に行ったアルを待つ間、ヘルマン先生の食堂の説明を聞いた。

 アルが戻ってくると、早速全員で出発した。






『ファラル、考えたんだんだけどね。予定だけど目的を果たしたら、それでも終わらなければ、逃亡もかねてまた旅に出たい』 

 レイの唐突な言葉には慣れているのか、

『もう次の事を考えているのか、今回は変わるのか、変わらないのか・・・どちらにしろ、私はレイに従う』

 と冷静に答えを返した。

 環境は変わったが、レイとファラルの会話など、変わらない事も多かった。

 変わらない事を変えるのは、時間ときっかけ。

 その内の時間は厄介だ。変わっている事に誰も気付けない。

 ゆっくりと、変わって行くのだ。

『ねぇ、本当に目立ってないね、私!』

 少し嬉しさを隠しきれないようにレイが言う。

『レイが望んだんだろう?存在の希薄を。私には関係ないがな』

 ファラルの答えは相変らず淡々としている。

 そう、ファラルはレイに魔法をかけていたのだ。

 存在感を薄くする魔法を、帝国に行く事になった日から掛けて貰っている。なのでアル達にはレイの美しさに慣れた、と思われているかもしれないが、気付かないようになったのは慣れではなく意図的に気付かれないようにしているのだ。

 一日ずつ徐々に徐々にレイの存在感は薄くなる。

 美しさに気付かれないように、目的の為に目立たないように。

 その変化に、人はきっと気が付かないだろう。

 レイにはそれが嬉しかった。人間にだけ有効な魔法。他人が苦手なレイにとって、存在感が薄いというのは嬉しい事だったし、人間関係が煩わしいので友人など要らない、と思っているレイにとっては最高の魔法でもある。

『この学園の食堂って料理美味しいと思う?』

『さあな、食べた事が無いから分らん』

 そんな取り留めのないファラルとの会話がレイは好きだった。

 その会話方法が少々特殊であったとしても・・・。


 


 


 セイジ君が出てきました。彼は強いです、学年で三番目に。一番と二番さんは彼よりも強いですが、これから登場するのはセイジ君の方が多いでしょう。

 一番二番さん達はその内名前が出せたら良いな、と思っています。

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