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血の契約  作者: 吉村巡
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24:本当の稽古

 アルの部屋でひとしきり会話をした後、早い夕食を食べ、お風呂に入り、レイは自分の部屋に戻って来た。

 まだ、他の小隊の人と会話をしていないな。と思ったのは部屋に帰ってからの事だった。

 部屋に入ってすぐ窓の外を見やると、月は雲に隠れ見る事が出来なかった。

 魔法で灯る外灯の周辺だけが不自然に明るい。

 それを意識したのも一瞬で、レイの思考は深い闇へと落ちて行った。

 

 外の景色が変化していく。

 厚く空を覆い隠していた雲は徐々に流れ、月と星が瞬いている。

 レイの思考が一気に晴れていく。

(夜中の、三時くらい?)

 時計を見なければ分らないが恐らく、その位の時間だろう。

 人の活動している気配が無い。

 耳を澄ますと、聞こえてくるのは穏やかな寝息ばかり。

 窓から外を見るのを止め、鏡の中にある道を通りファラルの部屋へと向かう。

 ファラルも起きていた。

 レイが無言で手を差し出す。ファラルはその手を取る。

 手を取り合った瞬間二人の身体はゆっくりと薄くなり、数分も経たぬ間に完全に消えた。



「国への移動の間は、稽古が出来なかったからな。勘を取り戻せ」

「分ってる」

 ファラルが置いてある剣を取り、レイに渡す。

 二人の服装は動きやすい物に変わっている。

 周りは白い世界。地面は無い、レイもファラルも浮いている。

「草地」

 ファラルがそう言った瞬間、世界は一瞬で草地へと変貌した。

 生き物の気配がない、作り物の世界であり、本物の世界でもある。 

 世界が変わった瞬間、ファラルはレイに剣を繰り出した。レイはまだ鞘から出していない。


 ギィン


 レイは早業で鞘から刀身を抜き出すと、ファラルの剣を軽々と防いだ。

「獣」

 ファラルがまた、呟いた。

 レイの後ろから、狼が襲いかかって来る。

 

 ザシュッ 


 レイは狼を躊躇無く斬った。返り血を浴びるが目には何の感情も浮かんでいない。

 ファラルに向かいレイが攻撃を始める。

 昼間の稽古よりも速く、重く、正確な剣をファラルは動きながら返していく。

 真剣な打ち合いの中、時折襲いかかって来る獣。

 ファラルと獣。両方の相手をしながらレイは戦っている。

 その打ち合いが暫く続く。

 レイは獣の返り血で全身血塗れの身体を気にする風も無くファラルと打ち合う。

 周りには足の踏み場が無い程に大量の獣の死骸が転がっている。

 二人の打ち合いはどちらも疲れた様子は無く、激しさを増していく。

 ファラルの剣が急に速くなった。

 目にも留まらぬ速さで繰り出される剣を必死にレイが防ぐ。

 

 ギィィィンッ


 ファラルの最後の一撃でレイの手から剣が離れた。

 空高く舞い、弧を描き遠くの方に落ちていく。

 レイの首元にはファラルの剣が突き立てられている。

 二人の目には何の感情も見えない。

「降参です」

 レイがそう呟くとファラルは剣を納めた。

 レイの息は少々乱れているが、ファラルの方は涼しい顔をして汗一つ、呼吸一つ乱れてはいない。

「勘は失われていないが、していなかった分のツケはしっかり廻って来ている。分っているな?」

 ファラルの言葉にレイは素直に頷く。

 疲れるのが早かった。

「体は正直だ。反応出来ていてもすぐに動かない所が幾つかあっただろう?」

「はい」

 素直に認める。

 ここでのファラルは師匠だ。自分よりも上の立場、ここでのファラルの言う事は絶対だ。

 レイは稽古を始めてまだ数年だ、ファラルはレイよりも長く剣を使い練習と稽古と実践を積んで来た。数日でどうこうなるものでは無い。

「帰るか」

 ファラルの言葉に従い、レイは来た時と同じように手を差し出した。二人の手が重なると、来た時よりも早く二人はファラルの部屋へ戻れた。

 服は来る前と同じ物だ。

「普段からしっかりと努力しろ」

 ファラルの言葉に返事をすると、血の跡など無い服で鏡を通りレイは自分の部屋へと戻っていった。

 

 外は朝日が昇り始めている。

 もう夜明けだ。

 レイは服を着替えると下へ降りた。

 今日が、また始まる。



 レイはこの日、寝ていません。

 思考が深い・・・。は、考え事をしている、という意味で、その時レイは全く外の事に気がつきません。(周りの気配なら読んでいます)

 ファラルとレイの稽古は危険で実践形式です。ファラルは手加減していますが、レイは本気で真剣にしています。(でないと本当に大怪我する)

 レイも弱くはありません。むしろ強いです。力では敵わない部分をスピードで補います。

 帝国の精鋭部隊全員と一人で戦えるくらいに強いです。

 ファラルは異常です。何人かかって来たとしても、必ずファラルは勝ちます。

 アルが何人いようが本気を出せば一瞬で全員を殺せる程に。

 でも、レイに止められるので本気は極力出しません。

 ちなみに12魔法小隊の人はロリエを除き、全員剣も武術も優秀です。

アルはそんな中でも特に優れています。

 

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