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血の契約  作者: 吉村巡
16/148

15:到着

 昨日の事件が嘘だったかのように、レイ達が事件を掘り返す事も無く馬車は進んだ。

 相変らず、ファラルは居ない。

 会話も極端に少ない。

 ロリエは、初日に動いている馬車の中で本を読んだため、本を取り上げられただボーっとしているし、アルはロリエから本を取り上げたくせに本を読んだり、報告書らしきものを書いている。ヘルスはする事が無くて眠っているし、起きていればアルの手伝いをしている。 

 レイは、乗った時から変わらず黙って窓から外を眺めている。

 見ていても見ていないのに、飽きもせず、意識もせず、ずっと外の景色を見ている。

「レイ」

 アルに名前を呼ばれ、レイは振り向いた。

「何?」

 レイがアルに話を促すと、

「そろそろ帝国に着くはずなんだ。窓から城壁が見えないか?」

 レイがその言葉に窓から進路方向の遠くの方を見ると、

「見える。あれが帝国なんだ」

 意識していなかったので分からなかったが、存在だけは確認していたのですぐに見つかった。意識していないと、見ているものが何なのか?という事を考えなくなったしまう。

「見えるという事は、あと本当に少しで着くな。昨日、思いのほか手間取ったので飛ばしたからな、予定よりも早く着く」

 アルの言葉に、

「でも、レイとファラルさんはこれからが大変だよね。帝国での生活に早く慣れるように私も協力するからね?」

 ロリエの言葉に、レイは緊張も不安も無く、これからもしかしたら長く住む事になるかもしれない帝国に対して何の感慨も無かった。

「まぁ、これからが大変だろうな。学校への入学にしては少し時期が遅いし、でも僕も分からない所があったら教えるから何でも聞いてね?」

 ヘルスもレイの学校の事について、前向きで積極的だ。

 レイは別に学校に対して何の思い入れも無い。興味も無い。

「取り敢えず、レイとファラル殿は帝国に着いたら身体検査、能力検査を経て市民登録という手順になる。早めに終わらせるよう市民課の者に圧力をかけておく。終わった頃には迎えを行かせ、レイもファラル殿も魔法庁に来てもらう」

 アルの説明は簡単なもので、細部は分からないが流れは大体掴めた。

 レイが帝国の学校に入るのにも、ファラルが隊に入るのにも市民権がいるらしい。生憎レイもファラルもそんな物を持っていない。それを理解して市民登録出来るよう手配しているのだろう。

 本当にこの国の一員になる。

 それは嫌な事ではないが、嬉しい事でもない。



 帝国に着いた。馬車は城壁の所で言ったん止まった。恐らく身分証明をしているのだろう。レイ達が旅して来た所は関所など無い森や小さな町と村だけだったからだ。

 関所を避けていたのかと聞かれれば頷くだろう、そこまでして入りたい国も町も村も無かったからだ。

 ただ、旅が出来れば良かった。

 目的が果たされればそれで良かった。そう考えれば、これはチャンスとも言えるかもしれない。

(運命は、止められない。私の運命は誰にも操れず誰にも止められない・・・か、私は運命に従い人を殺そう。この衝動を抑えはしない。誰であろうと私を止める者は殺す、そして目的を果たす。今度こそ殺す。迷いはしない、私の運命が誰にも分からないのならば、私が全て作ってやる。【他人の血に塗れた運命】を・・・)

 レイは知らず知らずのうちに腕に力を込めていたらしい。他の者は気付いていないが手のひらには爪が食い込んで、痕を作っていた。

 そして、考え事をしている最中には、何度も何度も笑い出しそうになった。狂ったように笑いそうになった。

 アル達は、知らず知らずの間に国をも揺るがす大きな出来事のきっかけを作った。その事にもレイは笑いそうになった。

(この国で一番力の強い者を、殺す)

 笑いはそれを思った時に消えた。頭はただ冷静で、心には何の感情も浮かばない。

 ずっとそれを願っていた。彼らを殺したい。

 きっと、これは生まれ持った性質なのだろう。それが、レイにとっての当然なのだ。

 きっとファラルはレイ側に付く。万人に認められずとも、ファラルはレイ側に付く。

 レイ側に付く者はこの世界では彼だけとも言える。誰もがレイの味方になる事は無い。それはきっと、ここにいる者達も同じ事。

(彼は正しいのだろう。皆が彼を正しいと思っている。そして私は間違っているのだろう。皆も私が間違っていると思うだろう)

 



 レイは、この国にとって悪、ある意味厄災なのだろう。


 悪を排除しようとするのは当然の事、それを間違っているという資格がレイには無い。


 間違っているのはレイだ。


 それは分かりきっている事で、自覚もしている事だ。


 だが、分かっていてもレイは理性でその衝動を抑えようとはしないだろう。


 レイは自分が正しいと思っているし、皆は彼を正しいと思っている。


 それをレイは否定する。だが、皆に意見を押し付ける事はしない。


 ただ、レイは壊したいと思っている。万人が認めたく無ければ認めなくていい。

 

 レイにとっての真実を主張するだけ、ただそれだけ。

 

 殺したい、と思う衝動はそれに付属するもの。


 認められたい、とは思わない。


 謝罪が欲しいわけでも、同情が欲しいだけでもない。


 ただの自己満足。それが得られれば良い。


 それだけでレイは満たされる。

 

 “彼を殺したい”


 レイの目的はそれ一つだ。

 



 帝国の運命と歴史を左右する存在を乗せた馬車は動きだし、帝国へと進んで行く。

 後戻りをする気はない。

 ファラルがいればレイは孤独ではない。

 城壁の門をくぐり、レイはその直前馬車の窓を閉めていた。

「レイ、ファラル殿はちゃんと付いて来ているのか?言っておくが、帝国には身分がハッキリとしていないと入れないんだが・・・」

 レイは思考を中断した。

 話しかけてくれて、良かったと思った。そうでなければレイは自分の人格を失ってしまう程、自分の思考に飲まれていただろう。

 レイは内心を隠しながら微笑んで、

「大丈夫です。窓からファラルが既に馬車に乗っているのを確認しましたから。ファラルだって身分証明が無ければ入れない事ぐらい分かっていますから」

 と答えた。

「「「乗ってる!?」」」

 三人の驚きは同じようなもので、言葉も綺麗にハモった。

 レイは当然のように、

「ええ」

 と答えた。




 レイ達の乗る馬車は、他の兵士を乗せている馬車とは違う方向に進路を変えた。変えるのはレイ達だけらしく、他の馬車は、真っ直ぐに帝国の中心へと向かっている。

「これから市民課の建物に行く前の検査がある。そこで検査を受ける事になる、と説明したな」

 アルの言葉に、レイは頷いた。

「話は私が直接通す。すぐに検査を受けられると思うが、注意が一つある。私達以外の者が君達二人に会いに来るかもしれないが、黙り通してくれ。そして、絶対にその者達に付いて行かないでくれ」

 アルの言葉は真剣だった。

 レイは微笑んで、

「分かりました」

 と素直に答えた。

 

 

 

 相変らず読みにくい文章だと思います。分かりにくい書き方をしています。

 皆さんにはレイの気持ちがわかりますか?私は分からないように書いているつもりです。

 レイはいったい何者なのか?本当の目的は何なのか?

 それは、続きを呼んで頂ければ分かるかもしれません。(ただし、更新は不定期です)

 もしも、 

「この部分が分からない」「あの時の前振りは何だったのか?」

 という事がありましたら御一報下さい。書いて行けるように努力して行きます。

 



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