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血の契約  作者: 吉村巡
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11:片付け

 清々しく澄み切った青空の朝。

 レイ達は朝食をとっていた。

「本当に、ファラル殿は付いて来られるのか?行っておくがベクターの育てた馬は普通の馬ではないぞ?止めようと思っていたのに、肝心のファラル殿が出てこないとは・・・」

 清々しい朝に似合わない重々しい口調でアルがレイに言った。

「すみません、ファラルの心配をしてもらっているのに。決めたら絶対に変えなくて・・・。隊には入るからいいだろう。と、団体行動をする気はないみたいです。大丈夫ですよ!ファラルですから」

 意味の分からない根拠を述べるレイに、

「団体行動は隊の基本だ!列が乱れれば、他への影響も出て来る。隊に入るのなら集団に慣れてもらわないといけないんだが、ファラル殿はそういう事ができるのか?」

「どうでしょう?今はしていなくても、出来ると思いますよ?決まりは守りますから。でも、彼にも優先順位がありますから。速く終わらせたいと思えば、規則を無視するかもしれませんし、勝手に居無くなってしまう可能性も少なからずありますね。基本的に自由人なので。でも、与えられた仕事はこなすと思いますよ?自発的にしようとはしないでしょうけど」

 レイの返事は、何となくアルを不安にさせるものだったが、与えられた仕事をきちんとこなしてくれるのなら、大丈夫だろう。アルは、そう思っていた。

「アル!出発って何時?そろそろテント畳まないといけない?」

 ヘルスがアルに質問した。

「ああ、賊を運ぶ者の用意ができたら出発する。今からテントを片付けて確認が終わり次第、出発するだろう。早く終わらせろ。ロリエの手伝いに回りたいならな」

 最後の方は、ヘルスにだけ囁くように言った。ベクターには聞こえたらしく口元が一瞬笑ったように歪んだ。

「レイ、私達もテントの片付けに行きましょう。私片付けるの遅いから何時も皆に手伝って貰っちゃうの」

 ロリエとレイの言葉が聞こえる。ヘルスは、

「じゃあ、僕もそろそろ片付けに行くよ。ロリエ達の皿も持って行くね」

 と言うと、自分とロリエ、レイの食べ終えた皿を持って行った。

「レイ今日はちゃんと朝ご飯食べられたね」

 ロリエが今更な事を言う。その言葉に、そう言えば、とアルとベクターもレイの方を見る。

「うん、まあ。寝たら何とかなった。多分整理が付いたんだろうね〜」

 あっさりとレイが言う。

 まあ、吹っ切れたのは良い事だ。

「そうか、昨日は少し心配していたんだが・・・。そんな酷い物じゃなくて良かったよ」

「ご心配おかけしました。それよりも、昨日食べられなかった方もいますが、そちらの方のご心配は?」

 レイの急な言葉にアルは、言葉の意味をちょっと考えてから、

「心配ない。言っただろう、騒動を起こしたのはあの二人だ。それ相応の罰はあってしかるべきだ。それに、周りの者に差し入れをするなとは言っていないからな。オーエン辺りには差し入れをする者がいるだろう」

 アルの言葉に、そうだと思いました。と、レイが言った。

 それからレイはテントを片付けるためにロリエとともに、テントへと向かった。



「さて、片付けを始めましょう。まずは中を綺麗にしてから、外の方を畳むの。中の方は私の物がほとんどなんだけど、レイも手伝ってくれる?」

 ロリエが申し訳なさそうに言う。レイは笑って、

「遅れないように頑張らなきゃね!」

 と言うと、早速中の片付けを始めた。

「ねえ、服はどうすれば良い?」

 レイの言葉にロリエは、

「あっ、それはそこにある箱の中に入れて」

 ロリエが手を動かしながら、レイの方を見るて答える。

「こっちは終わったよ?」

 レイの言葉に驚いてロリエが振り返ると、レイの方はもう全て終わっていた。

「は、速いね。終わるの・・・」

 ポカンとしているロリエは、自分の所まで手伝ってくれるレイに気付いた。

「いっ、良いよ!やらなくて!」

 止めようとするロリエの言葉に、

「早く終わらせた方が良いでしょう?どうせ、私にはする事が無いんだもの」

 レイは、ロリエの言葉を無視して淡々と片付けを続ける。何もしていない自分に気付きロリエは慌てて止めていた手を再開させた。

 レイがロリエを手伝うと片付けはどんどんと進んだ。レイは手際がいい。ほんの僅かの間に、テントの中はすっかりと片付いてしまった。

「スゴイね、レイ。何でも出来るのね、料理も片付けも・・・。何か、同じ女として私自信無くすよー?」

「そんな事無いですよ。ロリエさんは普通なんでしょう?むしろ何にもして来なかった貴族の方としては出来る方だと思いますよ?私はその上を行っているだけです」

「・・・・・・何で分ったの?しかも、嫌み?」

 ロリエが目を丸くしてレイを見る。

「何故分ったと言うか・・・ロリエとへルスさんとアルシアさんは貴族、もしくは良い所の出でしょう?仕草や言動、言葉の響きで何となく分ります。だからといって、私は接し方を変えはしませんけど?」

 レイの言葉に、嫌み言ってるからね。とロリエが呟くと、気付いたかのように、

「貴族の言葉の響きとか、仕草とか知ってるの?」

「ファラルが教えてくれたの。実際に聞いた事もあるし、貴族の人は響きは、言い方悪いけど上から目線っぽい気がする。人に物を頼むのに慣れていると言うか・・・。まあ、私の持論だけどね。あと、アルシアさんの場合、あの態度は人の上に立っていないと若い時からあんな風にはならない」

 レイの言葉にロリエが苦笑すると、

「でも、アルも大変なんだ。跡取り息子らしくって、それはヘルスもなんだけど、私は兄も姉もいるしのびのび育って来たんだけど、特にアルはね、その内わかると思うけど小さい頃から絶大な力を持っていて自由なんてどこにも無かったんじゃないかな?」

 ロリエの方が寂しそうに笑いながら、そう言った。

「そうなんだ、実を言うと余り興味はない、だって気にしたって今のアルシアさんは変わらないでしょう?」

 レイの正論に何も言えず、ロリエが目を丸くしてレイを見ていると、

「ロリエー!手伝いに来たよ。どこまで済んでるの?」

 ヘリスの声が聞こえた。どうやら彼は終わったらしい。

「ヘルス。ちょっと待って、直ぐに出るから!」

 ロリエはそう言うと、荷物を詰めた箱を持って外に出した。レイももう一つの箱を持ちテントの外に出た。

「荷物なら、言ってくれれば僕が運んだのに」

「ヘルスにばっかり甘える訳にはいかないもの。どこに運べば良いの?」

 ロリエの言葉にヘルスは、

「荷物は、施設の中央玄関の所。ベクターがいるから預ければ良いよ」

「分った」

「じゃあ、僕はテントの解体しておくから」

 ロリエがヘルスにお礼を言うとレイと一緒に言われた所へ行った。



「ヘルスは?」

「私達のテントの解体してくれてる。そういえば、ベクターやアルのテントはどうしたの?」

 ヘルスが言っていたように、馬車の所にはベクターが居た。

「俺のは朝起きた時に解体した。アルもその時に解体していたぞ」

 ロリエはベクターの言葉に、せっかちだね〜。と言いながら荷物を渡した。

「この馬がベクターの育てた馬か・・・。うん、いい馬だね」

 ロリエはレイがベクターを呼び捨てしたのにビックリしていた。

(いつの間にそんなに仲良くなったの?この二人。昨日のご飯の後?)

 ロリエがそんな事を考えていても、二人の会話はロリエの疑問に答える事なく続く。

「分るのか?馬の状態が」

「ファラルに色々仕込まれました。旅の内容も濃かったですし色んな仕事と体験をしました」

「敬語もいい。呼び捨てするならば敬語は変だ」

 ベクターの言葉に、分りました。とレイが言うと、ロリエに使う言葉遣いのような砕けた言葉遣いになった。

「その体験の中に馬の世話とかあったから、乗ったりも出来るしどんな状態なのかも何となく分る」

 レイの言葉に、そうか・・・。とベクターが呟いた。

「レイ!そろそろテントに戻らない?ヘルスにばかり任せるのは悪いから」

「そうだね」

 レイは返事をするとロリエの後を付いて行った。

 ベクターは、二人が見えなくなると先程までと表情を変えた。

 ベクターは何も言わなかった。ただ険しい顔をして二人の去って行った方を見ていた。



「ごめんヘルス!全部やって貰っちゃって・・・」

「気にしないでよ?僕が好きでやってるんだから」

 本当に申し訳なさそうにしょんぼりと謝っていたロリエにヘルスが笑顔で宥めていた。

「そんな事より、そろそろ出発時間も迫ってるし解体したの運んじゃおうよ?ロリエもレイちゃんも、そっちに縛ってるの

持って。僕がこっちの運ぶから」

 そう言ってヘルスは一番重い物を持っていた。ロリエとレイのは、小さく軽い物だった。

「ヘルス!悪いよ。重いもの持ってもらうなんて・・・。テントの解体も任せっきりだったのに」

「いいんだよ。女の子は優遇されて当たり前!優しくされて当たり前!分った?二人とも」

 ヘルスの迫力に圧倒され、つい頷いたロリエと、ヘルスの剣幕に薄く笑ったレイは、それぞれ荷物を持ってベクターの元へ行った。



「ヘルス、やはり一緒に来たな」

 ベクターがヘルスが荷物を持ってベクターの前に止まった時、開口一番に言われた言葉。

(それ程までに知られているのか・・・。何故ロリエは気付かないんだろう)

 それ程まで鈍いのか、知っていて知らないふりをしているのか、レイの思考はそんな所に飛んでいた。

「レイ、どうしたの?」

「何でもない。少し考え事を・・・」

 ロリエがボーッとしていたレイに心配そうに聞いて来た。

「レイ殿?気分でも悪いのか?」

「えっ!?そうなのレイちゃん」

 ヘルスとベクターも驚いたように聞いて来た。

「違う。考え事」

「何についての?帝国に着いてからの事が不安だったりするの?」

「否、大して関係ない事。強いて言えば、皆の事」

「皆?」

「皆。」

 ロリエの質問にちゃんと答えはするものの、レイの返答は、よく分らない答えだった。

「深く考え、悩んだとしても分らない答え方をしたんだから分るわけないから、考えない方がいいよ?」

 レイの言葉に、本気で悩んでいた三人は溜め息をついた。

「そんな事よりもベクター、何時出発なんだ?」

「そうだな、あと半時もしたら出発だろう」

 ヘルスが驚いたように、

「いつの間にレイちゃんとベクターそんなに仲良くなったの?」

 と聞いて来た。それはロリエもずっと気になっていた事だ。

「「昨日の食事の途中抜け出したとき(だ)」」

 レイとベクターが綺麗にハモった。

「「そうだったんだ」」

 ロリエとヘルスもハモった。

「それならさ、レイちゃん。僕の事も呼び捨てしてよ。僕もそうする事があると思うし」

 笑いながら言ったヘルスに、

(そう言えば、昨日鍋が飛んで来た時に呼び捨てされてたな)

 それを考えてレイは、

「そうですね。分りました、断っても駄目と言われそうなので受け入れます」

 と答えた。昨日のベクターで十分わかっている。この隊の魔法使いさん達は、自分の意見をしっかり主張し押し通す人達なんだ。だから、受け入れた方が良いと昨日悟った。

「敬語も必要ないよ。きっとアルもそう言うと思うな〜」

 最後は呟くように言ったヘルスの言葉に、それでも言われない限り自分から言い方を変えようとはしないだろう。とレイは思った。






 ヘルスへのレイの言葉遣いと、呼び方が変わります。後はアルだけですね。

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