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血の契約  作者: 吉村巡
108/148

107:残虐な遊戯

 流血・暴力表現があります。

 苦手な方はご注意下さい。

 頬に襲って来た衝撃でマリアは目を開けた。

 見覚えのない薄暗い天井。

 手足に違和感があり楽な体勢に戻そうとして気付く。

 体が動かない。

「無駄だ。動けないよう特別な魔法をかけている」

「っな・・・・なん・・で?」

 声を出すことも難しい。

「早く始めましょうよ」

「そうだ。どれだけこの会の開催を待っていたか」

「もう待てませんわ」

 目元を隠す仮面をつけた人々をようやくのことで首を動かして視覚に捉えた瞬間、

「ァ、ァアアッ」

 右手の甲に鋭い痛みが走り、マリアは声を振り絞って呻いた。

 悶えることも声を出すこともままならず痛みを軽減させる方法をとることも出来ない。

 目だけを動かすと右手の甲は皮膚が抉れて骨が見えている。直視することが出来ず視線を外すと青いドレスを着た女が楽しそうに血に濡れたナイフを持って痛みに顔を歪ませるマリアを口元に笑みを浮かべて見ていた。

 その表情がこの異常な状況を全て物語っているように思えて痛みに熱くなった体がスッと冷えるような気がした。痛みしか考えられなかった朦朧とした頭が恐怖に支配される。

 

 私はこれから何をされるのだろう?


 私はこれからどうなるのだろう?

 

 思考はそんな恐怖に彩られ、恐怖に言葉も出なかった。

 女の手が動くのが見えた。スローモーションのように見える一連の動作。女がナイフを振り上げマリアの体に振り下ろす。単純な動きだがマリアは避けることも出来ずその刃先はお腹に吸い込まれるように刺さった。

 予想していた筈なのに一瞬何が起こったのか理解できなかった。それは夢の中の出来事のようで現実感の伴わない光景だった。

「・・っあ」

 理解の遅れた頭がうってかわって痛みを自覚するように命令を出し、全身に痛みが駆け巡る。

「ぁああああっ!!」

 言葉を忘れ出ない声を振り絞って痛みに喚く。何度か咳き込むと口の中に血の味が広がった。

「簡単に殺してしまったらつまらないよ」

「次は私にやらせてくれ」

「あら、では私も御一緒して宜しいかしら」

 そんな声もマリアの耳には届かない。

 男は右手、女は左手を見ながら先のとがった鋏を取り出す。ほぼ同時にそれを振り上げるとマリアの手のひらに向かって勢いよく振り下ろす。

「・・っ!!」

 右手は貫通し、左手は骨に当たって止まった。

「この骨、邪魔ですわね」

「おや、それではやり易いように」

 頭が働かない。聞えているのに何をされるのか頭が考えることを放棄している。

「グッ、ゥ、ゥァアアッ」

 近付いて来た男によってナイフを抜かれ、重い金属の塊がマリアの手に振り下ろされる。骨が粉々に砕け散る音がした。

 二度と、手が使えなくなるかもしれない。そう思うと怖くなって、マリアは恥も外聞もなく呻き、啜り泣いた。

「ねぇ、そろそろこれを使わない?」

「ああ、良いね」

 マリアの右手を貫通させたナイフが抜かれ右手が何かに嵌められる。何をされるのかと焦点の合わない視線を右手に向けるとギロチンのような形状の物が目に入った。

 頭の中に警鐘が鳴り響く。しかし、抵抗は出来ない。

 その光景を見た瞬間、マリアは絶叫を上げて気を失った。



「ケホッ、グッ・・・ゴホッ」

 せり上がって来た物を素直に出した。ビシャビシャッと口元から液体が床に落ちる。口の中に広がる不快な味に顔を顰める。

 右手を見るともう血塗れだ。左手は骨が砕けている上に神経がズタズタなのでもう使い物にならないだろう。

 ぼんやりとそう思っていると骨を断つ音と共にまず右手が床に落ちた。次いで、左の親指が中途半端に切られる。薄皮一枚でブラブラと切り落されることなく揺れている。

 無感動な目で、凪いだ心で、レイは自分の体に起きた変化を見ているだけだった。

 


 サブタイトルからして痛そうな名前を付けてしまいました。

 なんだか物騒ですね。

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