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血の契約  作者: 吉村巡
107/148

106:秘密の夜会の始まり

 流血・暴力表現があります。

 苦手な方はご注意下さい。

(今の所、計画通りか)

 気を失った振りを続けながら冷静な頭でレイは考える。

 どうやって移動するのかと考えていたが暫く連れ回されたあと転移魔法を使っていた。言葉を使わなかったことから恐らく陣を使ったのだろう。しかし、転移の陣は許可がなければ使えない上に転移の際に発生する魔力ですぐに誰かに悟られる筈だ。見つかっていないということは陣の周りには結界が張ってあるのだろう。

(転移の為の魔力は見つかりやすい。余程の結界の使い手でなければ隠せない筈)

 ガチャッ ガチャッ とレイの両手は冷たい金属の鎖で拘束される。足がつくかつかないかの位置でほぼ宙づり状態の体を支える両腕にかかる負担は常人であれば相当のものだ。さらに足には重りがつけられていて動かすことが出来ないようにしている。

 それから長い間その体勢のままで放って置かれた。頃合いを見計らって目を開けると何かを準備している男達にバレないように様子を窺った。周囲の情報を集めるとレイはまた暫く気を失った振りを続ける。

 程なくして何人もの人間がやってきた。

「さあ、こちらは先に楽しみを始めましょう」

 さも愉快で嬉しそうな声で開始を宣言した男の声が聞えた直後、ヒュッ という何かが風を切る音した。レイの腕にその何かが当たり鋭い痛みをもたらす。そこで漸くレイは目を開けた。

 まずレイが見たのは仮面を付けた鞭を持った男だ。恐らくレイが感じた痛みはその男の持っている鞭によるものだろう。

 様子見の為にぼんやりと集団に目をやっていると反応のなさに苛立ったのか男が何度もレイに向かって鞭を振るって来た。連続で襲って来る鋭い痛みに、それでもレイは悲鳴一つ上げなかったし、痛みに呻くこともなかった。

「やり方が甘いのではありませんか?私にもやらせて下さいな」

 そう言って今度は仮面をつけた妙齢の女がレイに近付いて来る。

「まだあまり傷つけるな。楽しみはこれからなんだ」

「皆さんの楽しみを奪うような真似は致しませんわ」

 女は手に火の灯った蝋燭を燭台にさして持っていた。ポタ、ポタ、と溶けた蝋が床に落ちる音が聞える。レイの目の前で止まった女は燭台を持った手をレイの首に持っていく。先程まで床に落ちていた蝋がレイの首元にポタ、ポタ、と落ちる。しかし、レイは何の反応も返さずただ女の顔を見つめ返していた。

「貴女でも贄の反応は得られないようですね」

 という男の声の後にクスクスと笑う女達の声が混じる。目の前の女は頬を赤くして、八つ当たりのようにレイの体で蝋燭の火を消し燭台で顔を数度殴った。

 それでもレイは平然としていて、それに更に苛立った女は蝋燭をさしていた燭台の尖った部分でレイの固定された手のひらを刺した。それは手の骨を砕き貫通した。滅多刺し、という言葉が似合う勢いでレイの手のひらには幾つもの穴が空く。

 流れる大量の血は腕を通って服にも血の染みを作る。

(借り物なのに・・・)

 レイには手の痛みよりもそちらの方が重要だった。

「それくらいにして置いた方が良い。夜はまだまだ長いのですから」

 聞き覚えのある男の声が聞えた後、レイ以外のその場にいた全ての者が頭を垂れた。

「ああ、頭を上げて。私は様子を見に来ただけです。お楽しみいただけているかな?」

「勿論です」

「刺激的で素晴らしい会ですもの」

 次々に述べられる賛辞に男は満足したように頷く。

「では、私は次の会場へも顔を出さなければならないので失礼しますよ。皆さんまだまだお楽しみ下さい」

 そう言って男、バランドロ国の宰相であるヴァンス・ヒュースターは一度レイをちらりと見てから部屋を出て行った。

「ほら、泣き叫べ」

 まだ若い男がレイに近付き楽しそうに刃先を簡単に切れないように潰している装飾過多な短剣を振り上げるとレイの肩に突き刺した。

 切れ味をワザと潰していることもありブチッと嫌な音が聞こえ、貫通したらしく背中からも流れる血が不快感を煽る。

 それでも、レイは全く表情を変えなかった。

(皆はまだか・・・)

 肩が主張する痛みを無視してそんなことを考える。

「この子、何の反応も返さなくてつまらないなぁ」

「本当に。見苦しく叫ぶ姿を見る方が愉快なのに」

「まぁまぁ、今反応がない方がこれからいたぶって啼かせる楽しみが増えるでしょう?」

「それでしたら少しゲームをしませんこと?誰が最初にこの子の顔を歪ませることが出来るのか」

「それは良い考えですね」

 短気ではない人達の言葉に、レイの反応のなさに苛立っていた者達が少し溜飲を下げた。

(一気に熱くなってくれた方が、私としてはやり易いんだけどね)

 誰にも気付かれないような小さな小さな溜息を吐くとレイはまた襲って来た痛みに少しだけうんざりした。

 ふと思う、この痛み、

『消えろ』

 レイの呟きを聞いたものは誰もいなかった。

 




 首謀者登場です。

 予想されていた方はいらっしゃったでしょうか?

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