表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世もふ SS   作者: NAGI
6/12

ピアレットの言い分

わたくしの名前はピアレットと申します。云わずと知れた、神殿長であるヒルダ様の側仕えでございます。

毎日お忙しいヒルダ様のために少しでもお役に立てるよう、粉骨砕身する日々を嫌だと思ったことはございませんが、最近時々、そうほんの少しばかりイヤだなと思ってしまい、そんな風に思う自分が嫌になります。

神殿の神官は、ほとんどの場合、養護院で幼い頃から育てられた子供達が見習いを経て神官となりますが、たまに違う方法で神官となる者もいます。

それがわたくしのような親族出身者です。即ち、レーヴェナータを祖とする一族のことを指します。

わたくしはヒルダ様の異母兄弟を父に持ち、蝶よ花よと育てられてきました。

何事もなければ、どこかの領地の身分が釣り合った相手に嫁ぐ予定のはずでしたが、運命の神は時として悪戯心を起こされるのでしょうか。

わたくしを神殿の神官として召し上げるよう、一族の総意により決定づけられてしまったのです。

そもそもヒルダ様付きとして、初めから侍っていたのは、わたくしの叔母に当たる女性でした。

不幸にも、この方が病を得て亡くなってしまったために急遽選ばれたのが、わたくしでした。

殿方に想いを寄せられたこともなければ(箱入りでしたので)、恋がなんであるかも知らない、無垢と言えば無垢。てんでお子さまだった、わたくしはさして抵抗を覚えることもなく、そのお役目を承諾いたしました。

わたくしは一族の娘とは言え、ヒルダ様のような力はございません。平民よりもほんの少しばかり強い魔力を持つ程度で、選ばれたお方との違いに、ただただ、驚愕の思いをもってひれ伏し、心の底から心酔し、心を込めてお仕えしようと思ったものです。

それがここ最近ばかり、どこかしらおかしくなってきたような気がするのは勘違いではないと思われます。

その最たる理由が、異世界から転移してきた、新しい巫女様と関わるようになってから、ヒルダ様が悪い意味で下世話になってきたことによるのです。

巫女であるナツキ様は、決して下品でも学識のないお方でもありません。こちらの世界の知識に貪欲で、立ち居振舞いといった教養面にも力をいれておられます。

けれど、なにかこう変な部分がちらほらと見受けられるのです。

獣人の子供に会った時、萌え?何とか叫んでいらっしゃいますし、神殿の騎士が鍛練する姿を眺めて、何かしら悦に入っておられるのも、どうかと思います。

細かく言えば、切りがありませんが、そんなナツキ様にわたくし達のヒルダ様がどうやら影響を受けているようなのです。

レーヴェンハルトの始祖である姉娘を祖に持つ、ヒルダ様は品行方正にして才色兼備。

まさしく女神のごとき、気高いお方であったのに、最近はよくお笑いになるようになり、ナツキ様と一緒に何やら画策している風なのも気になります。

同僚達は、「昔と比べて心安くなった」と、得てして好評なのですが、わたくしは昔の張りつめた雰囲気を纏っておられた頃の方が神の末裔に相応しいと存じます。

けれどねえ。当のヒルダ様が楽しそうにしておられるので、嫌とは言えないのです。

あ、また!そんな風に一口で食べ物を頬張るものではありません!

「お堅いこと言いっこなしよ」と言うのも、どうかと思うのですが…。

身内だけだからとは嬉しいお申し出ですが、身内以外にも同じようにお振るまいになる、お姿が想像出来るだけにガックリしてしまいます。

「本来のわたくしはこんなものよ」

とは、本心でしょうか?

再び、ナツキ様が旅に出ておられる間に、わたくし、心を鬼にしてヒルダ様の再教育を行いたいと思います。

だってやっぱり、ヒルダ様にはいつまでも光輝く存在でいて欲しいのですもの。

ナツキ様と一緒では、少々、いえ大分品が下がってしまいます。

不敬に当たる?

でも、本当のことですから、しょうがないですわよね?







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ