表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世もふ SS   作者: NAGI
2/12

カナンの主様

あたしの名前はカナン。大空を誰よりも速く駆ける、鷹の騎獣よ。

騎士が持つ騎獣には二通りある。調教も終え、成長しきった状態で騎士と番う場合と、卵から育てる場合だ。

あたしは後者、あたしの主はヴァンという最高の騎士だ。

とにかく格好いいんだから!

番としての欲目なんがじゃないわよ?事実だからね!

「カナン」

主であるヴァンに名前を呼ばれ、あたしは小さく羽ばたいて見せる。ここは神殿の敷地内にある獣舎だ。

あたしは普段、ここで生活している。

ヴァンはよほどのことがない限り、毎日顔を出してくれる。優しいでしょ?

「こっちへおいで」

ちょこちょことヴァンの元へと歩いていく。鳥の騎獣である、あたしの地上の歩みは遅い。

間仕切りされた獣舎の一角で、あたしはヴァンから丁寧なブラッシングを受ける。

うーん、気持ちいい〜。

本来、騎士長という職責にあるヴァンが騎獣の世話をする必要はない。騎士見習い達か、獣舎の専属調教師などの仕事だ。

だけど、ヴァンはあたしの面倒をこまめに見てくれる。

あたし達の絆をより深めるために。きゃっ!

「近々、東領に行くことになった」

ふーん。

「悪いが、今回はお前は留守番だ」

えええええー!

「ピイエエエエエー!」

(やだー!絶対に嫌だ!)

あたしは置いていかれたくなくて、獣舎内で暴れまくる。

バッサバッサと人よりも長くて大きな翼で、土煙を上げる。

獣舎内にいた、鹿や馬などの草食系騎獣や狼や虎などの肉食系騎獣なんかが、

(やーん!埃っぽい!)

(カナン。てめー、人?の迷惑を考えろや!)

最大に文句を言ってきたが、そんなの知るもんか!

あたしは絶対にヴァンから離れないもん!

「何の騒ぎ?」

そんな時にひょっこり現れたのが、ナツキだ。

巫女様だから敬うようにとヴァンからは言われているが、あたしは認めてない。

これのどこが、ヒルダ様と同様に尊いのかが、さっぱり分からないからだ。

「ナツキ様、汚れますから」

ヴァンが慌てたように言う。

「平気、平気。普段着だよー」

確かに普段着だ。いわゆる、調教師達も着ているツナギ(作業着)だ。それでも巫女か?

「どうしたの?カナンが暴れているみたいだけど」

不思議そうに問う。

あんたなんかお呼びじゃないっての!

レロレロレー!

「こら!」

ヴァンに叱られた。しょんぼり。

「ふんふん。なるほどねー。東領に付いて行きたいって?」

暴れてる理由を聞いたナツキが、

「連れていってあげれば?」

と、言った。

「いや、しかし…」

馬車を使っての移動となるから、必要はないと説明する。

「上空から偵察するものがいたら便利じゃない?困るものでもないし、連れていってあげなよ」

ナツキ、あんたっていいヤツ!

あたしはナツキに擦り寄った。

「ちょっ、強いって!」

あたしを押し返す。

ぷんだ。折角、擦り擦りしてあげたのに。

感じ悪うー。

結局、ナツキの一声であたしは旅に同行することとなった。ヴァンには乗ってもらえないが、離れ離れになるよりマシだ。

「おおー。羽毛はふかふかだねえ」

旅の途中、ちょくちょくナツキがあたしに触ってくるのがアレだけど、じっと我慢する。

こいつはあたしにもそうだけど、暇を見つけては騎獣に触りたがる。

(ナツキ様って騎獣、好きだよね〜)

馬系騎獣のソーイなんかは、撫で回されてもあまり気にした様子はない。

(だねー)

馬の奴らは総じてのんびりだ。おおらかとも言う。

ただの馬は臆病で神経質だけど、こいつらは力も強いし、飛んで逃げることも出来るので、とにかく鈍い。

ナツキの触り方はとにかくゾクゾクするのだ。

邪な何かを感じる。

そう思っているのはあたしだけ?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ