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5 おおバカ三号はこの国の第二王子です

「お、お嬢さん。ラキア・クラルスの言葉を聞く必要はありません。こいつは少しくらい優秀なのと宰相の息子ということで思い上がっているのです。こんな人を見下すことしかできない奴の言葉に、傷つけられることはないのですよ。ああ、美しい方。どうかお名前を教えてください」

「私はクーニクル・アジャンといいます。今度一緒にお食事に行きませんか」

「こんなやつらと出掛けることはありませんよ。美しいその手が穢れます。わ、私とこそ一緒にお出かけしましょう」

「何をいう。お嬢さん、私と一緒でしたら、何でも買って差し上げますぞ」

「それなら私が一番お嬢さんにふさわしい。この中で一番位が高いのだからな」


 それぞれあほらしい言葉を言うと跪いて手を指し伸ばして来た。……こいつらは確か高位貴族だったか。本当に、こいつらのバカさ加減は重傷だな。金に飽かせるか、高位貴族なのを持ち出さないと、女一人誘えないのか。


 ため息を吐きながら口を開こうとしたら、空気が動くのがわかった。


 パサリ


 男達の髪が一房ずつ左耳の下に合わせるように切られて落ちた。


「「えっ?」」


 男達は足元を見て、それから他のやつらの顔を見た。


「「ひっ!」」


 顔色を青ざめさせて立ち上がり、他のやつの後ろに隠れようと押し合いへし合いをし始めた。


「そんな汚い手で~、カミーラに~、触れようとしないで~、くれないかな~」


 腰に手を当てて男達を脅すミポルに、私は冷たい視線を向けた。それに気がついたのか、ミポルが心外だという顔をした。


「カミーラ~、なんでそんな顔を~、するのかな~。こいつらを~、撃退してあげたのに~」


 プンと頬を膨らませて可愛い顔をするけど、私は騙される気はなかった。


「ミポル、いろいろ言いたいことはあるけど、それは後で。今はさっさと研究棟に行くからな」


 私の冷たい声の響きに、ミポルはブルッと体を震わせた。その様子を横目に見ながら歩きだした。


 角を曲がり追ってくる気配がない事に私はホッとしたけど、気を緩めずに早足で歩いて行く。この後は特に問題は起きずに食堂が入っている建物をでることが出来た。


 さて、ここでどうしようかと考えた。普通に研究棟に行くには廊下を通って、建物を渡り歩きかなり大回りになる。建物の造りが簡単に真直ぐ進めないようになっているのだから仕方がない。魔法を使って転移でもしてしまえば簡単だけど、王宮ではそういった大掛かりな魔法は封印や防御印に悪影響を及ぼすから、禁止されているのだ。それなら飛翔の魔法で移動をするのも手だけど、これを使えることをここのやつらに知られたくはない。


 結局一番の近道と、中庭を突っ切ることを決めた。中庭なら少し加速を加えて歩く分には、他に迷惑はかからないだろう。そう決めて私は中庭を極力真直ぐに突っ切ることにした。


 だけど、少し歩いて後悔することになった。私の身長より高い生け垣を曲がったら、見たくもない顔と鉢合わせしたのだ。……というか、本日の不運続きに今日の私は呪われているのではないかと、本気で思いたくなってきた。


「誰かと思えば、研究バカの眼鏡ブスか。お前のような者がなんでここを歩いているんだ」


 尊大な態度で言ってきたのは、馬鹿一号、莫迦二号の(あるじ)である、おおバカ三号の第二王子だった。無駄にキラキラの金髪に手をやってかきあげるけど、ナルシスト丸出しの行動に、私は内心ドン引いていた。


 ◇-◇


 本当にこんなナルでキザで不誠実な奴の婚約者をなされている、ミルキア・クレメンス公爵令嬢が可哀そすぎるわ。このおおバカはミルキア様のことを鬱陶しがって、遠ざけるような行動をとっているし。


 たしか学院にいる間に何回か婚約破棄しようとしていなかったか? 


 真実の愛を見つけたと言って、婚約破棄しようとしたのは、私が学院に入ってしばらくしてだったよな。可憐な妖精のような女生徒に一目ぼれしたとかで、生徒総会の場でいきなり生徒会長を押しのけて話し始めたんだよ。それどころか、その場で言ったことは「僕の妖精。恥ずかしがらずに出てきてくれたまえ」だぞ。そんな女生徒が名乗り出るわけもなく、そのあと全校生徒の首実検ときたからね。最悪以外の何物でもないさ。それでおおバカの妖精が見つかったのだったら文句はないさ(いや、あるか)。そう、探し人は見つからなかったんだ。


 おかげで生徒総会は一週間後にやり直しになったし、ミルキア様は父親から「王子のお気持ちを引き付けられないとは」と、お叱りを受けたそうだ。


 腹立たしいことにこの三バカは、一応学院ではできる人だったんだ。学年順位も五位以内を保っていたしな。不動の三位、四位、五位だったことが、尚更腹立たしいんだけどね。……おっと、これは私が入ってからのことだった。私が入る前の一年の時には一位、二位、三位だったんだっけ。……まあ、どうでもいいんだけどさ。


 そんなやつらだから、学院での評判は最初はよかったんだ。だけどだんだん……えーと選民思想、だったか? そんな風になっていって、卒業間近の最近では全生徒から呆れた視線を向けられているんだ。……いや、いるらしい。


 不確かな言葉になるのは、最近は忙しすぎて学院には友人共々、行けてないからなんだ。まだ学生の私達なのに、王宮の研究室に閉じ込め……えーと、出られない……いや、私達が抜けると、捌ききれない発注ってなんなんだよ!


 ……いや、だからさ、学生の本分はどこ行った? 状態にするなー!


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