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私を抱きしめてくれたのは  作者: ぴのすげ
巡り巡った果てに
19/24

019 立ち向かうべくは

 リュウと目が合った瞬間、今まで感じたこともない恐怖に襲われる。同じ人の形をしておきながら、人ではないと本能的に感じ取った。

 それでもここにきた以上、立ち向かわなければいけない。ここまできたのだ、今さら逃げ出せるはずもなかった。

 震える両手で剣を握りしめ、リュウを睨みつける。


 魔物が村を潰したと報告がきたとき、アレクサンダーは好機だと思った。

 これを条約が破綻したとでっち上げれば、メアリーをすぐに連れ戻せる。これは妙案だと確信した。

 そして真っ先にカーラへ伝えた、愛しい彼女に褒めてもらいたい一心で。

 しかしカーラの口から出てきた言葉は、アレクサンダーが望んでいたものとは違っていた。


『彼女を生きて連れ戻すより、眠った状態で連れ戻すほうが後々楽になりますわよ』


 その言葉の意味を理解するまで、聡明なアレクサンダーでもどれ程時間が掛かっただろう。

 気づけば赤い液体の入った瓶が手元にあった。

 カーラがいつものように微笑みかけてくれている。アレクサンダーは考えるのをやめ、愛する彼女のために必ず成し遂げようと心に誓った。


 が、今はどうだろう。メアリーを連れ戻す前に、アレクサンダーがこの世とおさらばしてしまいそうだ。

 彼はただ、メアリーを連れ戻したいだけに過ぎない。その過程の中に、どんなに非道なことが含まれていたとしてもだ。


「ちゃちな存在のわりに勇ましい姿だな。……摘み取りたくて堪らなくなる」


 次々に兵士が倒れていくなか、アレクサンダーを前にしたリュウは恍惚な表情を浮かべる。うちに眠る加虐心が芽吹いた気がして、メアリーの頼みをつい忘れそうになった。

 摘み取りたい、小さな花をもぎ取るように。そんな欲望が不意に芽生え、殺意がより一層高まった。


「悪しき者はこの私が葬ってやる」


 恐怖に臆しないよう自分を鼓舞し、深く息を吸い込む。そして目の前で余裕を見せるリュウに向かっていった。


「まじかよ。真っ向から来るとは面白いな」


 一直線に向かってくるアレクサンダーを見て、リュウは楽しそうに呟く。蛇が目前に迫る敵を認識し、主人を守ろうと盾になろうとした。

 が、蛇はでかい図体なだけあって動きも遅い。軽い身のこなしで胴体を飛び越え、アレクサンダーは蛇の懐に潜り込んだ。

 そして剣の刃先をリュウに向けて振りかざす。


「おいおい、危ないじゃないか」

「ははっ、どの口がそれを言いますか」


 正直に言ってしまえば、アレクサンダーは斬ったと確信した。

 しかし、リュウ自身も蛇に守られているだけじゃないらしい。アレクサンダーに一切の隙を見せることなく、臨機応変に守りの姿勢に入った。


 ふたりの男が初めて対峙する、ひとりの少女を巡って。リュウから放たれるオーラは恐ろしく膨大で、アレクサンダーは心が折れそうになった。

 しかし自分が有利な立場にあると信じ、振り下ろした剣に力をさらにこめる。


「お前は本当に騎士なのか? まあ、ランスロットもグィネヴィアも不倫するんだからやる奴はやるよな」

「そんな例えを出されても、私たちは結婚すらしていません。少しはその口を閉じたらどうでしょうか」

「ははは。俺と似て減らず口は達者らしいな」


 態勢的にはアレクサンダーのほうが有利だ。腕力だけでリュウを圧していると断言してもいい。

 ──が、守りの術が厄介なほどに硬かった。ゆえに斬れるものも斬れずにいる。

 アレクサンダー自身も守りの術を甘く見ていた為、腕の力も限界に近づいていた。


「お前は頑張ってるよ、本当に。ただ立ち向かう相手が悪かったな」


 不意にリュウが不敵な笑みを浮かべる。その瞬間、アレクサンダーは背筋に悪寒がはしるのを感じた。

 それと同時に異変が起き始める。

 蛇がどろどろに溶け始め、地面に広がった液体がアレクサンダーに纏わりつき始めた。


「蛇が全く襲ってこなかったこと、少しは不思議に思わなかったのか?」

「なんだこれは!? いったいなにをっ離せっ!」

「はは、もう足掻くのはよせよ。元気にはしゃいでるのはお前くらいなもんだぞ」


 リュウに言われてふと気づく。いつの間にやら、ともに戦っていた兵士たちは全員が倒れていた。

 そのなかにぽつんと佇む魔物は、じっとこちらの様子をうかがっている。次は自分の番であることを、アレクサンダーはすぐに悟った。


「やめろ、嫌だ。僕はこんな為に来たんじゃない」

「それは誰もが思ってることだよ」

「やめてくれ」


 まるで沼の上にいるようで、脚がどんどん沈んでいく。どんなに足掻いても、体に纏わりついた液体は決して放してくれなかった。

 脳裏に愛おしいカーラの姿が過ぎ、次々に彼女との楽しかった思い出が蘇る。

 これが走馬灯なのだと遅れて気づいたときには、アレクサンダーは既に液体の中に飲み込まれていた。

ここ数日はマイクラで地道に家を建ててる

あと新作も練ってる

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