4章 お守りの魔法
えっ⁉︎
私の姿が、春花さんに、見えてる?
さっきまで、見えてなかったのに?
一体、どういうこと?
驚いて立ち尽くす私に、春花さんは恐る恐る言った。
「本当に……死んじゃったの?」
どう反応すべきか分からず、私は曖昧に頷いた。
「私は、確かに死にました……」
「……そっか……」
しばらくの間。
その後、急に春花さんは目を伏せて、言い出した。
「うちのこと……恨んでる?」
「……えっ⁉︎」
「うちのせいで……死んだから」
「そんな……そんなこと、思ってません!」
「本当に?」
春花さんは悲しそうな目をしていた。何と返せば分からなくなってしまった、その時だった。
「本当です!」
するり、と言葉が出てきた。自分でも驚いたが、そのまま言葉は滑り出てくる。
「だってあの時、私が助けたのが春花先輩だなんて、気づくわけないじゃないですか」
春花さんは、ハッとして顔を上げた。
私もハッとした。
そうだ。春花さんは、当時5歳。私が気付くわけがないのだ。私が知っていたのは中学3年生以降の春花さんだけ……のはずだ。
全て、推測に過ぎないが。
私は笑顔で、続けた。
「もし分かってても、決して恨んだりしません。だって、先輩は私にとって、とても大切な人なんですから……」
……もし、私が記憶を失っていなかったら。
失っていなかったなら……きっと私はこう答えたんだろう、と思われる答えを返した。
せめて、私が記憶がないことを、この人が知って悲しまないように。きっとこの人は……春花さんは、そのことを知ったら悲しむだろう。
……なぜだろうか。
私は春花さんが悲しむところを見たくなかった。
「咲希……」
春花さんは、涙を拭いた。
「ありがとう。そう言ってもらえて、何だか安心した。……そろそろ、帰るね。3人とも、ありがとう。またね」
「さようなら!」
そのまま春花さんは去っていった。
「あっ!春花さん、お守りを忘れていった!追いかけなきゃ」
私は慌てて駆け出した。
「春花先輩!忘れ物です!」
春花さんは、4階の踊り場で止まった。
「ん?うち、なんか忘れていったっけ?」
「お守り、忘れてますよ」
「それ?……返すよ。咲希のなんだから」
「でも……」
「……咲希、何も覚えてないんでしょ」