表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/33

2章 1日目〜ミーティング

髙橋さんは二回、手を鳴らした。

それと同時に、ぴたり、と会話がやんだ。

「ミーティングします!」

「はい!」

気をつけ、礼!

お願いします!

「出欠とります」

フルート……あっこが病院で遅刻です。

オーボエファゴット……います。

クラ……宮下が体調不良で欠席です。

「サックス」

……しーん

「あっ、サックス?全員いるんだけど……1人いません」

えっ?

……全員いるけど1人いないって、どういうこと?

そのまま出欠確認は続いた。

「えっとまず、昨日のことについてお話ししようと思います。もしかしたら、もう知っている人もいるかと思いますが……昨日、さきが……内川咲希さんが、人身事故で……亡くなりました」

その場の空気が凍りついた。

さっきの女の人……千尋さんが叫んだ。

「……嘘、嘘でしょ⁉︎絶対嘘!だって」

「千尋、落ち着いてよ……。僕は、さきが亡くなった時、その場にいたんだ。間違い、ないんだ。みんな、信じたくないよ、そんなこと……」

髙橋さんがそれを遮る。

「でも……」

「言いたいことはわかるよ。ものすごく。でも、事実なんだ」

「凛……」

沈黙を破ったのは、髙橋さんだった。

「えっと、今日の予定は……」

それ以降の話は、何故か全く頭に入らなかった。

「……あと、ミーティング終わったら千尋はこっちに来てください」

「はい」

「ミーティング終わります。気をつけ、礼」

「ありがとうございました」

その部屋から誰もいなくなると、髙橋さんは、私を見て、手招きした。そして髙橋さんが、「おいで」と小声で言ったような、そんな気がした。私はおずおずと近づいていった。髙橋さんと千尋さんが、私を待っていた。いや、千尋さんは待っていたというよりかは、何を言っているのか分からないぐらい、半ば叫ぶようにして話していたというか……。

私が近くに行くと、髙橋さんはそんな千尋さんの言葉を静かに遮って言った。

「千尋の言いたいことは分かるよ。だから、3人で話そう」

「……凛にも見えるんでしょ、さきのこと……」

「見えるよ。さっき、さきと話していたんだ」

「そうだったんだ。暗くてさきのことはよく見えなかったよ」

全く話が読めないのだが、どういうことなのだろうか?

「あの……一体、何があったのですか?」

「そうだね、さっきの話の続きから話そうか。僕は髙橋凛。ファゴット担当なんだ。そして、彼女は中野千尋。トロンボーン担当なんだ」

「待って、なんでそんな話からしなきゃいけないわけ?」

「……さきは、記憶を、失ってるんだよ。だから、全部説明してた」

「……嘘」

「君の名前は、内川咲希。バリトンサックス担当だったよ」

「そうだったんですか……」

中野さんは、私のことをじっと見て、聞き取れるかどうか、ぎりぎりの声で呟いた。

「本当に……覚えてないんだね。……うちらのことも、何もかも……死んでしまって、何も覚えてないなんて……」

「千尋……」

「凛!」

そこに急に、メガネをかけていて髪が短く、背が低めの女の人が入って来た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ