17章 遥か彼方の思い出
部活の時間になった。なぜか今日はサックスパートの人は楽器を出さなかった。
制服の内ポケットが揺れた。
「みこ(琴音先輩):今日は4人でいろんなことを話したいなって思って」
「みこ(琴音先輩):だから昨日と同じ部屋、2年2組で待っててほしいんだ」
ラインだった。読んで、なぜ今日サックスパートの人が楽器を出さなかったのかを理解した。そこで、私は昨日の部屋に向かった。そこにはすでに浅沼さんがいた。そこに西野さんがやってきて、「まだ琴音先輩が来てませんね」と言った。
「咲希はいるの?」
浅沼さんの問いに、私はお守りを持って答えた。
「はい、います」
「じゃあ本当に琴音だけだね、来てないのは。まだかなぁ」
「掃除で遅れるってラインで言われましたけど……もうすぐじゃないですか?」
「そうだね」
西野さんと浅沼さんがそんなことを言っていた、その時。
そこに野上さんがやって来た。
「お待たせ。遅くなってごめんね」
「琴音遅いよー!」
「ごめんって。じゃあ、4人でなんか思い出話でもしようよ!」
そう言われて話し始めたのは、西野さんだった。
「うーん……あっ、咲希はよくコーヒーを飲んでましたよね。コーヒーの匂いがしなくなると、なんか、咲希はもういないんだなぁって思って……」
「あと、咲希はよくピアノを弾いていたよね。曲は大概好きなアーティストの曲で、レパートリーは……たしか、2曲ぐらいだったと思ったけど」
「そうそう。部活が終わるといつも弾いてたから、ピアノを聞くと今日も部活が終わるんだなぁって思ったんだっけ」
「それから……」
3人は私のことを色々話してくださった。全て私が覚えていないことだったけど、遥か彼方の記憶だったけど、聞いていてとても楽しかった。
聞きながら色々なことをしている私を思い浮かべた。
コーヒーを飲む私、ピアノを弾く私。ほかにも……。
生前の私がどんな人だったかが少しだけ見えたような気さえした。
「咲希はよく絵を描いていたような覚えがあるよ。クラスに遊びに行くと、大概絵を描いていたっけなぁ」
野上さんがそう話したところで、時間が来てしまった。
「あ、もう音楽室に戻る時間だ。今日はもう戻ろうか」
「そうだね、戻ろう」
そして、私達は歩き出した。もちろん、私はお守りをしまっている。
音楽室で私は待った。
『うちがもう帰れるようになったら、咲希を呼ぶからね』
今日の朝、中村さんはそう言った。
『咲希、一緒に帰ろう!』
中村さんに、私にしか聞こえない声で呼ばれるまで。
ちなみに、琴音のラインの名前が「みこ」になっていますが、これは琴音のあだ名です。
彼女のフルネームは「のがみ ことね」です。苗字の最後の「み」と名前の最初の「こ」を組み合わせて「みこ」になっています。でも、このあだ名はあまり周りの人には使われてない(設定)です。




