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16章 音楽室の楽譜

私は音楽室に入った。鍵は必要なかった。

音楽室を見渡すと、昨日とは全く違う場所に見えた。

2人用の机が縦に5個、横に4列。それぞれの机にはイスがある。つまり、ここには40人分の席がある。授業用の配置らしかった。

が、片付け忘れたのだろうか。メトロノームというものが1つ、机の上に放置されていた。

実は、昨日の合奏中に中村さんがこのメトロノームを使っていた。このカチカチという音を立てて一定のリズムを刻むものがメトロノームというのも、その時に知った。


『みんな、出だしが揃ってないよ!リズム練習しようか』

そう言って、中村さんはアンプという音を大きくする機械(これも名前は合奏中に知った)の上にメトロノームを置いた。

『このメトロノームの音に合わせてみんなで足踏みして!……そうそう!』

足踏みの音が揃ってくると中村さんははしゃいだような嬉しそうな声でそう言った。


これ、横のネジを回して、この重りを動かして鳴らすんだっけ。

試しにやってみると、昨日のようにカチカチと音が鳴り出した。

「あ、鳴った!」

それだけで、ちょっと心が踊った。

私はメトロノームの音を止め、音楽室の中を歩いた。

音楽室には2つのピアノがあった。グランドピアノとアップライトピアノだった。あと、3つの小部屋があった。そのうち1つにアップライトピアノが置いてある。残りの2つは昨日、吹奏楽部の人が出入りしていた部屋だ。1つはパーカッションが入っていて、もう1つはいろんな人の楽譜や楽器が置いてあった。さらに、音楽室の隣には「音楽準備室」という部屋があり、そこに1つグランドピアノが置いてあることが分かった。

この計4つのピアノを弾き比べて(と言っても適当に鍵盤を押しただけだ)1番のお気に入りのピアノを見つけた。それは音楽室にあるグランドピアノだ。音が柔らかい感じが気に入った。

私は、最初は適当に鍵盤を押して遊んでいたが、それにも飽きてきてしまった。

「つまんないなぁ」

私は思わずそう言っていた。

そこで、気分転換の意味も含めて、もう一度音楽室を歩いていた。すると、今まで使っていたピアノの上に何やら紙が置いてあることに気がついた。

「なんだろ、これ」

見てみると、それはピアノの弾き語りのための楽譜だった。

「……弾いてみようかな」

弾けるかどうかは分からないが、ずっと暇しているよりかはましなような気がした。

そこで、私はその楽譜を広げてみた。

メトロノームを持ってきて、ネジを巻いて速さを合わせて鳴らしてみる。静かな部屋にカチカチという音が響いた。

この曲の最初の音はだいぶ低そうだ。でも、だんだん音は高くなっていくようだった。そして、また低くなって終わる、という曲のようだ。最初の音はどの音だろうかと思って手を鍵盤の上に乗せた時、手が自然に動いた。そして、ある場所で止まった。その手は今にも曲を弾き始めそうな感じすらしていた。早く弾きたいよ、という声すら聞こえてきそうな気がした。

弾いてみよう。

きっと、これなら弾ける。

私はメトロノームの音に合わせて、鍵盤を押した。

すると、自然と手が動き鍵盤の上を滑り、足が動いて足のペダルのようなものを押した。

何も考えずに弾けた。頭は覚えてないけど、体が覚えているみたいだった。

ということは、この曲を弾いたことがあるのかな、と思う。私はこの曲を知っている気さえしていた。なんだか懐かしいような感じがしていた。

そして、弾き終わった時に、気付いた。

『内川咲希』と、私の名前であろう名が、楽譜の最後に書いてあったことに。

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