14章 2日目〜登校
私はどこかで聞いたようなアラームを聞いて目が覚めた。
このアラーム……昨日の合奏の時の!
そう、これは、チューニングの時間が分かるように鳴らしていたアラームの音と同じだ。
「おはよう、咲希!よく眠れた?」
「あ、中村さん。おはようございます。よく眠れました!ありがとうございます」
「いえいえ!時間もないし、一緒に身支度しよ!」
「はい!」
私と中村さんは制服に着替えた。そして、着替え終わると中村さんは部屋を出たので、私は中村さんについて行き、洗面台で顔を洗ったり、歯を磨いたりした。中村さんのお母さんが「これ、使ってね」と歯ブラシを用意してくださったのだ。私はお礼を言い、ありがたく使わせていただくことにした。
そして、朝食を取った。
「ごめんね、昨日の余り物しかなくて……」
「いえ、頂けるだけで本当に嬉しいです。ありがとうございます」
「いいのよ。いくら魂でも、たとえ食事が要らない身でも、たまには食べないとね?」
食べるのと食べないのとではだいぶ違うのよ……と中村さんのお母さんは言った。
「いただきます」
中村さんと声が被った。
お互い、ちょっとだけくすくすと笑ってからご飯を食べ始めた。やはり、とても美味しかった。
「ごちそうさまでした」
食べ終わるのは、私の方が早かった。やはり目が見えないと、食べるのも大変なのだろうか。ただ単に私の方がご飯の量が少なかったのだろうか。真相は分からないが、聞く気にはなれなかった。
「ごちそうさま!」
中村さんがご飯を食べ終わったのは、ちょうど私がご飯を食べ終わってから5分後だった。あれ、ご飯を食べるのにかかった時間、もしかして、大して変わってない……?
ま、いっか。
「咲希!ぼうっとしないで!さ、学校に行くよ!」
「あ、はい!」
中村さんは優しく大人びた声で言った。
「みんな、行ってきます!」
「いってらっしゃい!気をつけてね!」
「うん!」
私も、声をかけた。
「あの……ご飯、ありがとうございました」
「そんなに気にしくなくてもいいのよ、咲希ちゃん。もし今日も居場所がないなら、またうちに帰っていらっしゃい」
本当に、素敵な方たちが集まった家庭だなぁ、と思った。
「ありがとうございます……行ってきます!」
ちょっぴり恥ずかしかったけど、3人とも、「行ってらっしゃい!」と笑顔で返してくださった。なので、私も笑って家を出た。




