13章 必要ないけど必要なもの
今回は少し長めかもしれません
「ごめんね、内川さん。椅子がないから、あっこと一緒にその長椅子に座ってね」
「分かりました。わざわざすみません」
「いいのよ!私も急だったから何も用意してなくて。少し多めに作った大学いもぐらいしかないのよ。でも、食べないよりかはいいわよ。さ、召し上がれ!」
「ありがとうございます!いただきます」
そう言うと、ちょうど椅子に座った陸斗くんが「いただきまーす」といい、中村さんも「いただきます」と手を合わせた。そして、中村さんのお母さんも「それじゃあ、私も」とつぶやき、いただきます、と言った。
大学いもを口に入れた私は、あまりにも大学いもが美味しいので驚いて言った。
「……美味しい!」
「でしょ⁉︎ 」
と陸斗くんが言い、中村さんも笑って
「どの料理も、本当に美味しいんだよ」
と言った。
みんなで談笑しながら食べていると、中村さんのお父さんが帰ってきた。
「ただいま」
「おかえり」
「おかえりなさい」
「こんばんは」
中村さんのお父さんは、私の方を向いて言った。
「おや、珍しいお客さんだね」
「初めまして。内川咲希です」
「うちの部活の後輩なの。詳しい事は後で言うけど、行く場所が分からなくなっちゃったみたいだから、連れてきたの」
「そうか。内川さん、ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます」
中村さんのお父さんも加わって、楽しいひと時を過ごした。
やがて夕食を食べ終わると、私はリビングで中村さんのお父さんと一緒にテレビを見た。そのころ、中村さんはお風呂に入りに行っていた。
「あっこはね、母親似で霊感が強いんだよ。優しくて思いやりのあるところは父親似だと言われるけどね。でも陸斗は俺に似て、霊感も普通ぐらいだなぁ。性格は母親似だと言われるよ。好奇心旺盛、活発に動く元気な子だ」
「そうなんですか?」
「親が言ってるんだ、間違いないだろう」
中村さんのお父さんはそう言って笑った。
「そうですね。中村さんはとても優しい方ですもん。そうでなければ、私をここに連れて来ることはなかったのではないかと思いますから」
そう言って、私も微笑んだ。
「咲希、お待たせ!お風呂空いたよ」
中村さんはそう言った。その後、風呂に入るように促された私は、お言葉に甘えて風呂に入ることにした。
しかし、浴室に入ってから疑問に思った。
あれ、髪の毛とか体とか、洗えるのかな?
結論から言うと、そんな心配は無用だった。
髪も体も普通に洗えて、流すことができた。
なぜだろう、とも思うけど、そんなことを言っていては始まらない。できる事はできる、できない事はできない、と受け入れていくしかないのだ。
そんなこんなで髪や体を洗い終えた私は、お湯に浸かった。すると、相当身体が冷えていたのだろうか、じーんと芯から温まっていくような感覚になった。
……というか、魂も、寒いと冷えるんだ。
今日は新しい発見ばかりだ。
お風呂から上がると、中村さんのお母さんがタオルを私に渡して、「これ、たまたま新品があったから」と下着を貸してくださった。中村さんも「これ、使ってないから使って」とパジャマを貸してくださった。私はお礼を言い、着替えた。
不思議なことに、あれだけ濡れていたはずの髪の毛は、すでに乾いていた。風呂から上がって5分から10分ぐらいしか経っていないのに。
その後、中村さんの家族と一緒にテレビを見て楽しく過ごした。中村さんだけはテレビに手を触れていた。
きっと、テレビが見えるようにそうしているのだと思った。
「咲希、そろそろ寝ようか」
「はい」
中村さんに連れられて、ピアノがある部屋に戻ってきた。中村さんがてきぱきと布団を敷く。私も枕を置いたり、布団を敷くお手伝いをした。
と、そこに中村さんのお母さんが現れた。
「あっこ、私はもう寝るからね」
「はーい、おやすみなさい」
「おやすみ。あと、内川さん、」
「はい」
「あなたにとって必要のないことが、実はあなたに必要なものだったりするのよ。よーく覚えておいてね」
「……はい」
必要のないことが、必要だったりする?
どういうことだろう。
聞いてみたかったけど、その時にはもう中村さんのお母さんはいなくなっていた。
「……どういうことでしょうか?」
中村さんに聞いてみた。
「きっと、そのうち分かるよ。さ、寝よっか」
答えを教えてはくれなかった。なんだか、はぐらかされた気分だ。
でも、布団に横になって、寝ることにした。
目を閉じた瞬間、どっと疲れが押し寄せてきた。
ああ、私、疲れてたんだ。
知らない人ばかりの場所に放り込まれて、私は何にも覚えてなくて。知らないことだらけで。
……そりゃ、疲れるわ。
そんなことを考えているうちに、私はすとんと眠りに落ちていった。




