君を知らないと
自分の書く物語はなんだか展開が早いというか急というか自分で書いていても思います。そんな欠点に気を付けながら書いたつもりですが、やっぱりなんだか早い気がします(笑)
まぁ、長い目で見てやってください。
こんにちは、皆さん。NRSニュースの時間です。
今回のニュース内容は『鳴瀬裕人、屋上に呼び出されるラブコメ展開について』です。
生まれて十六年間、彼女もろくに出来たことのない僕にこんなイベントが訪れるとは思ってもいませんでした。
そしてなんと、僕を屋上に呼び出したのは青葉学園三大美少女と呼ばれているうちの一人、天ヶ瀬有希葉さんだったのです!
最近はハプニングからの新しい出会いが多いと俺は自分で思うね。
会長だって俺のパソコン(一号機)が逝ったおかげで話すようになったようなもんだしな。
そこに関してはナイスだ一号機。逝ってくれてありがとう。
だが、そんな会長には今は俺が仕上げたネームを元にして漫画の原画をやってもらっている。だからか、最近は会長の出番が少ない。あ、出番って言っちゃった。
けれどそれも今の俺には好都合。とりあえず天ヶ瀬とのことをどうにかせねば。
そういうわけで屋上にいきます。以上、NRSニュースでした。
◆
天ヶ瀬に呼び出され、屋上に来た。
こういうイベントは漫画などでは告白などが多い。ていうか定番だ。
だけど、俺らに限ってそれはない。なぜなら出会ってまだ三十分も経っていないのだから。なのになぜ呼び出されたか?答えは簡単、天ヶ瀬は俺の名前を知りたいのだろう。ぶつかってしまったお礼がしたいと朝言っていた。
——律儀な奴だよな、ホントに。
そう考えながら、夕日を眺めている天ヶ瀬に声をかける。
「よっ、天ヶ瀬。お前が夕日見てると絵になるな」
「あっ、来てくれたのか。わざわざ呼び出して済まないな。それと、私なんかでは夕日を見ていても絵にならないと思うぞ?」
天ヶ瀬は自分の魅力に気づいていないのだろうか?その謙虚さがなんだか育ちの良さというもの感じさせるというか、やっぱ大和撫子って感じがする。
ああ、そんなことよりも本題本題っと。
「天ヶ瀬、俺に話したいことってなんだ?」
大体予想はついている。名前だ。マイネームだろ?君の名は、ってか?はは、ワロス。
「キミの名前を聞き忘れたから、聞きたいと思ってたんだ」
はいビンゴ。予想通りだ。でも、予想通りだからこそちょっぴり悲しいな......俺はラブコメ漫画の主人公にはなれないんだな。
まぁいい。とりあえず名乗ろう。
「俺は鳴瀬裕人。改めてよろしくな」
「鳴瀬......鳴瀬か。ああ、こちらこそよろしく頼む」
これでイベントは終わりだ。こんな大和撫子系美少女と話せる機会なんて一生に一度あるかわからないくらいなのに、悲しきかな、ネームを考え始めないと担当の笹塚さん(鬼神)に圧をかけられるんだ。
そういうことで俺は帰らなければいけない。
だから天ヶ瀬には悪いが帰らせてもらおう。
「天ヶ瀬の用事は終わりだろ?じゃあ俺は帰らせてもらうけど......」
「ま、待ってくれ!まだ、用事はあるんだ......」
え!まだあったの!?なんだなんだ、他に何の用事があるんだ?
「残りの用事ってなんだ?」
俺がそう尋ねると、天ヶ瀬の頬が少し紅くなったように見えた。
——なんで頬を紅くする!?そんな反応されたら嫌でも意識してしまうっていうか......本当に告白くるんじゃね?って思ってしまうだろうが!
ありえない、俺が告白されるなんてありえないと思っていた。
だって、図書室でパンツって一人でに言ってるやつなんだぞ?それにモテた例もない。
そう思い、この状況を精一杯否定してみせる。だけど、天ヶ瀬の口から放たれた言葉によって、俺の考えが『当たり』だったということが証明されてしまう。
「出会ってすぐにこんな気持ちになるなんて、私自身でもおかしいとは思っているんだ。でも、朝のキミは、カッコよかったんだ」
待て待て。
「だから私はっ」
やめろ、ハヤマルナ!
「き、キミが......裕人が、す、好きかもしれないんだ!」
これは......さすがに急すぎるだろ!
だけど天ヶ瀬からは本気......というのが伝わってくる。
——こんな状況、中々、というか見たことがない。
登校時にぶつかり、イケメンに助けてもらう少女。そこから二人は知り合い、様々なことがあり結ばれる。それが王道であり鉄板だろう。
朝の俺がカッコよかった?冗談だろ?ありえんありえん。笑えない冗談だ。
ん?あれ?
なんで俺、こんなに天ヶ瀬が言ったことに対して否定的なんだ?
こんな可愛い子に告白されるのは正直嬉しいなんてものではない。死んでもいいレベルだ。なのに、俺はこの告白を受け入れようとはしていない。
——そっか、そうだよな。
思えば、誰だって考える簡単なこと。
——好きでもない子とは、付き合えない。
「天ヶ瀬」
「な、なんだ?」
俺が彼女を呼ぶと、彼女はびくっと身体を震わせた。
——天ヶ瀬、ごめん。
「悪いけど、天ヶ瀬とは付き合えない」
言ってしまった。言っちゃったよ、おい!こんな可愛い子からの告白を断るなんて、どこのモテメンだ!
だけど、顔が可愛いからって告白を承諾するわけにはいかない。容姿だけを見て付き合うと、いつか必ず合わない時が来る。それに、
——上辺だけで付き合う関係なんて、寂しいしな。
天ヶ瀬は俺の内面を見てくれたんだ。それなのに俺は、天ヶ瀬の内面を見ずに付き合うなんて嫌だ。
そして天ヶ瀬だって、俺の内面なんか完全には知らない。だから俺たちに必要なのは時間なのだと思う。
お互いのことをちゃんと知り、そこから告白などの方が絶対いい。
——なるほどな。こういうことを考えていないから一目惚れで付き合った人たちは長くは続かないんだな。
これをちゃんと言うべきだ。
よしっ!
「天ヶ瀬が嫌いなわけじゃないんだ。でも、俺たちはまだお互いのことをちゃんと知らないだろ?もし、俺が天ヶ瀬と付き合うんだったら、その前に天ヶ瀬という女の子のことをよく知っておきたいんだ」
なるべく傷つけないように、優しく説得を試みる。
「そう、だよな......私も、少し急ぎすぎたのかもしれない」
なんとか天ヶ瀬は納得?してくれたみたいだった。
「キミの言う通りだ裕人、私ももっとキミのことを知りたい、だから——」
◆
天ヶ瀬と別れて、なんだかぼーっとしているうちに家に到着。
「ただいまー」
「おかえり、お兄ちゃん」
家に入ると、我が妹であるグータラ姫がおかえりと言ってくれた。いつものことだが。
「はぁー、家は落ち着くよなぁ、オアシスだよオアシス」
「今日帰りいつもより遅かったけど、なんかあったの?」
さすが我が妹、鋭い。
——話していいのか?天ヶ瀬に悪い気がしないでもないが......美亜になら大丈夫か。
「実はさ......」
かくかくしかじか かくかくうまうま。
「ってことなんだよ」
一通り美亜に説明し終えたあと、ずっと黙っていた美亜が口を開く。
「お兄ちゃんヘタレでしょ」
はい頂きました。今日も今日とて美亜の毒舌は炸裂するんだな。
「だってそうでしょ。何が『お互いのことちゃんと知らないから』なのさ。そんなセリフ吐くなんて、さすがヘタレ童貞のお兄ちゃんだね」
「ヘタレ童貞言うな!」
いや、童貞だけども。
「断るなんてもったいないことしたね」
「もったいないっていうか......だってそうだろ?人は見た目が全てじゃないんだ。見た目が全てだったら俺は死ぬまでずっと負け組じゃないか」
後半は自分で言ってて泣きそうになった。悪かったな、イケメンじゃなくて!
「じゃあ要するにおっぱいに大きさは関係ないってこと?」
「待て、なんで胸に行った?さっきので十分わかりやすかったよな?」
まぁ、胸も例外ではなく、大きさという見た目なんて関係、関係......ない、と思う。
「お兄ちゃん、やっぱ大きいおっぱい好きなんだろー、この変態ー」
「待て待て!落ち着け美亜!俺は美亜のような発展途上の胸だって好きだぞ?」
精一杯フォローしたつもりだが、
「お兄ちゃん、それセクハラだからね?」
「だ、だよな」
そんなので美亜が喜ぶなんてありえないもんな。うん、ゲームのやりすぎ。
「ま、まぁでも、お兄ちゃんがわたしの胸好きなら仕方ないね、それは」
「? 美亜、顔が赤いけど......どうした?」
「う、うるさいよお兄ちゃん。さっさとご飯の準備してよね」
「? わ、わかったよ」
なんなんだろう?美亜は実は風邪をひいているとか?さっきまではそんな感じ全くしなかったんだが......。
てか、なんで胸の話になったんだっけ?そうだ、美亜がいきなり言い出して......。いきなり?
そっか。天ヶ瀬とのことで、俺がちょっと後ろめたそうにしてたから美亜はわざとあんな話をしてくれたのか。
これはお礼を言わないとな。
「美亜」
ソファに寝っ転がっている美亜に声をかける。
「なにさ」
「さっきはありがとうな、おかげで少し元気になったよ」
そう言うと美亜の顔が紅く染まる。
「はぁ......そこに気づいてさっきのわたしの反応には気づかないんだね」
美亜は俺に聞こえない声で何かブツブツと言っているがどうしたのだろうか?
まぁ、いいや。晩飯には美亜の好きなプチトマトをたくさん盛ってやるとしよう。
一段落着いたか、と思っていたのもつかの間、俺とあの天ヶ瀬有希葉が親しげに学校で話していたら周りはどう思うか?そして会長は?
一難去ってまた一難。俺はこれから今以上に苦労することをこの時はまだ知らなかった。
はい、四話でした。書いている側ですが美亜推しです(笑)
裕人と美亜の会話などを書いているときが一番楽しいです!
美亜の出番をもっと増やしていきたいさらだいもでした('ω')ノ